11年間の留学を終えて(2)

たくさんの方に(1)の記事を読んでいただき大変光栄に思います。幼少期から現在までを改めて振り返ると親に甘え我が儘を言いながらここまで私を育ててくれた両親には感謝しきれません。

どう親孝行をすべきか、何をすれば親に恩を返せるのか迷うことが多いです。今までかかった教育費を計算したところ私の生涯年収の半分以上になるみたいなので、本当にどう恩返ししたほうがいいのか分かりません。自分にそんな大金である教育費を掛けた価値があるのか、私が「幸せ」で元気でいることが本当に親孝行なのかな。

親を含め、親戚や親友・知人が全員留学経験があるので、我が家では留学が当たり前でした。でもX(旧Twitter)を初めて、いかに多くの家庭が留学に必要な教育費に頭を悩ませ留学という貴重さを目の当たりにしました。


自分のアイデンティティ

私は留学歴が長いものの、日本人だと自認しています。家庭内では日本語を話し、七五三、お正月やお盆などのお祝い事や風習を大切にしていました。とは言え、教育はアメリカのカリキュラムで学んだので、日本の歴史や文化の詳しいことは分かりません。

もっと小学生の頃の授業を真面目に受けるべきだったと今になって後悔しています。自分のことを日本人であると思っていても、基礎的な歴史を知らず文化に詳しくないのは日本人としてマズイのではないかと最近思い始めています。

また仕方ないことではありますが、漢字の知識という母語の知識が不足しています。特に書く能力が低く、小学生低学年レベルです。あまり日本語を書く時はありませんが、いざ書こうとした時に意味はわかるけど漢字は書けない悔しさがあります。

小説を読んでいる際も読めない漢字が多く出てくるので毎度スマホで辞書を引かないといけない自分の日本語能力のなさを痛感します。ニュースに出てくる漢字は読めるのに。

日本人とは何か、自分とは何か、は哲学的な問いなのでしょう。厳密な定義はあるかは分かりませんが、価値観で言えば日本の物や自然を大切にし、礼儀を重んじ、思いやりを大切にすることは強く共感しています。上下関係があるのも、古くからのしきたりや文化を守ろうとする考え方も私はダメなこととは思いません。日米共に大きな価値観や考え方、文化の違いがありますが、今のところは日本の方が心地よく感じています。

留学はしたほうがいいか?

私自身は留学できてよかったと思っています。確かに辛いことも多かったです。小学校や中学ではいじめを受けたり、内気な性格のせいで友達作りに苦労し孤独な学校生活を過ごしてました。ですが、高校からは優秀な同級生から刺激を受け、勉強の大変さや楽しさを学び、高校の先生方を見て同じく先生を目指そうと思いました。

ですが、留学「していなかった」選択肢はなかったですし、親が日本の受験制度を好んでいないため親の意向で通える一般的な学校も限られたでしょう。きっと留学生や帰国生が多い学校で、英語で学ぶカリキュラムが設けられている学校に進学する可能性が高いです。留学せず、あのまま日本にいても東京都内のインターに通っていたことは確実かと思います。

なので、留学を「した方がいい」とは思いません。自分の経験はあまりにも特殊で特権階級独自のそれです。あまりに私のスタート時点は日本の一般的な中流家庭とは違っていました。日本にいた頃から受けてきた教育も、住んでいる場所や関わっている人たち全てが規格外です。自分の経験が結果的に良かったからといって、他者に勧めたり強要することはできません。また、アメリカに関しては特に州・地域によって留学の経験が大きく異なるかと思います。

私がアメリカで経験してきたのは、公教育が破綻したアメリカではなく高額な学費で教育を買う私立がメインです(大学以外)。比較的環境の良い地域でリベラルな州で教育を受けてきました。

留学して世界が広がった、とよく耳にしますが私はそれ以外の世界を知らなかった。小学生の頃の自分の世界はあまりに限られたいため、本当に世界が広がったかは分かりません。

留学してからは自分の性格的に友達を作ったり学校生活に慣れるのが大変でした。どう話を続けばいいか頭の中でたくさん悩んだ結果、口数が必然的に少なくなり内気な子供でした。小学校の最終学年・最終学期を過ごす最初の現地校では同級生数人から軽いいじめを受け、人の友達作りはやめて校庭の木々や花、芋虫と時間を過ごしてました。

中学は転校し、新しい学校では友達と呼ばれる人が1人できました。1学年20人という少人数クラスの中で他のクラスメートとも仲良くなれましたが友達ほど親睦を深めることはありませんでした。

中学3年生(Grade 8)は新しい学校に移り友達は1人。高校の最初に一年目は気がある中国のルームメイトと同室になったものの、食事の際はその子の友達グループと一緒に食べ全て中国語の会話でした。5ー8人と一緒に座り私は座っている一人一人とは仲がいいものの、会話にはついていけませんでした。とは言え、中国圏の友達と仲が良く卒業するまで沢山の友達、後輩・先輩たちと親しくなりました。また高校生活の詳細は別の記事で書きます。

高校は特に優秀な同級生、友達に囲まれて結果として自分の競争心とプライドに火がつき全体的な学力も上がりました。HonorsやAPクラスも取り、自分は頑張ればやれるかも、と思えるようになりました。高校では良い先生に恵まれたおかげで高校の教師になりたいと思い学ぶ楽しさや苦労を知りった。

その一方であまりに周りが優秀なため、自分の平凡さに絶望し最後の2年間は軽度〜中度のうつ病と戦いながら高校生活を終えました。自分に使われた教育費と学力や実績を目安とした自己価値を比較し、もっと優秀にならなければ申し訳ないという気持ちで勉学に励んでいました。

また、高校では毎年10数人ほど薬物、お酒、タバコ、窃盗などで退学になった人もいました。寮に住むと年7万ドル弱、通学生では年5万程かかる学校なのにこういう退学者がいるのは本当に驚きました。

中学3年生(Grade 8)の時に雇っていた同校の家庭教師がお酒の売買で退学となったのにDuke University に進学しました。寮でリーダー立場のPrefectでありながら優秀な同級生が1年生の時にアルコール中毒で搬送し生死を彷徨い、数年後に自室でVape(電子タバコ)を隠したことで退学となったものの転校し UC Berkeleyに進学できたのも何か闇を感じました。他にも私が知らないだけで色々なことがあったと思います。

あと、薬物LSDの摂取によりハイになった生徒が真夜中、校長の自宅前で裸で徘徊していたというメールが届いた時は驚きました。男子寮からは大麻や薬物の匂いがするとかしないとか……日本だと多分あまり効かない噂などあってある意味見る世界が変わりましたね。

私としては、大学側がこのような退学者を受け入れていることは結構ネガティブに感じています。学校の校則を破り違法なことに手を染めるの方を入学させるというのはあまりいい気持ちではありません。でもこのような過去の過ちがあってもなおセカンドチャンスという形で入学を許可するのがアメリカらしいです。

自分の経験はただの幸運の重なり

私は港区で生まれ、育ちました。世帯年収は多分5000万程で一人っ子です。環境面で言えば、英語を2−3歳から学べる環境に身を置き、衣食住が確保され、居場所と思えるような家があります。

特に苦労はなくインターと私立現地校、そして4年制の大学を卒業できるほど経済的に恵まれました。特に母親が教育投資としてPlan 529やらアメリカの銀行などで投資して教育費を賄っていました。また、米国籍を持っているので米大受験では有利になり、卒業後のビザの心配もありません。留学後は人間関係面では苦労したものの、意思疎通でき授業を理解できる英語力がありました。

家庭環境や友人関係は中学生あたりまでは特に問題ありませんでした。中学生からは父との親子関係及び夫婦関係が悪くなりましたが、両親はもともと恋愛ではなく同僚みたいな関係です。また、中学から親は別居中ですが特に気にしていません。

生きてきた21年間の留学経験のほとんどは私が幸運だったからです。家がお金があったから英語を学び、親は留学経験・アメリカ就職があったから留学を反対されることなくすることができました。留学で苦労しメンタルをやられ大変な思いは沢山しましたが、なんと高校を退学することなく卒業できました。比較的学費の安い州立大学に受かったのも中高で学力が身につき経験を得られたからです。進学した後も優秀な成績を残し卒業ができたのは、良い教授・TA・同級生と友達に恵まれたおかげです。

全ては私が一言で言うと、運がよかっただけであり、自分が残した結果や実績、自分のしてきた努力などは幸運が重なった結果をうまく利用しただけに思います。





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