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国内のどんな生物が絶滅危惧種なの? 哺乳類編②

前回は、国内の絶滅危惧種の中でも特に、絶滅危機が高い「絶滅危惧種IA類の哺乳類」ついて、書かせていただきました。

今回は、前回の続きになります。

ご一読いただけたら嬉しいです。


前回の記事 ↓

絶滅危惧種 段階

絶滅危惧種は、野生生物により、どのくらい絶滅の危機に陥っているのか異なります。
その中で、最も絶滅の危険性が高いのが、絶滅危惧種IA類に分類されている野生生物です。

絶滅危惧種IA類に選定されているのは、哺乳類12種類・鳥類24種・爬虫類5種・両生類5種の合計46種です。

前回、絶滅危惧種IA類の哺乳類12種類のうち7種類を紹介させていただきました。

今回は、残りの5種類をお伝えできればと思います。

⑧ツシマヤマネコ

対馬市にのみ生息する野生の猫です。大陸が地続きだった約10万年前に日本に渡ってきたと考えられています。

額に縞模様、太い尻尾が特徴的です。

過去には「ヤマネコといえばツシマヤマネコ」といわれるほど繁栄していました。

ヤマネコと言われるほど、山にいないこともあり、よく目にしていたみたいです。

ですが、間伐の行われていない針葉樹植林が増加し、餌となるネズミ類の小動物の生息密度が低下したことで絶滅危機に陥りました。

また、河川改修や道路建設などによる生息地の減少も要因として考えられています。

ツシマヤマネコ
対馬市

⑨イリオモテヤマネコ

聞いたことがある人も多いのではないでしょうか。

イリオモテヤマネコは沖縄県西表島(イリオモテジマ)にのみ生息しており、特別天然記念物に指定されている生き物です。

特徴は、「ツシマヤマネコ」に似ていて、額に縞模様、太い尻尾、体はヒョウ柄です。「ツシマヤマネコ」より、全体的に黒っぽく、尻尾は太いです。

夜行性であることや、水が大得意で、川に飛び込んだり潜水したりすることでも有名です。

現在の個体は100頭前後といわれて言われています。

絶滅危機の理由は、宿泊施設・商業施設の開設や観光客による交通事故です。

西表島は、街灯がなく暗い場所が多いことから、交通事故を起こしてしまうことも少なくないようです。

また、オオヒキガエルなどの毒を持っている外来種を(人間が連れてきた)食べたイリオモテヤマネコが、死んでしまった例もあります。

イリオモテヤマネコ
西表島

⑩ラッコ

ラッコの生息地は、北アメリカ西海岸から北海道の北東に位置する千島列島南部にかけての沿岸海域です。

肉食で、ウニや貝類、タコ、カニ、ナマコ、ヒトデなど動きの遅い魚介類を食べています。

二酸化炭素を吸収する海藻をウニから守ることから、気候変動の抑制に貢献できる生物としても知られています。

実は、水族館で人気のイメージが強いラッコですが、国内で飼育されているラッコは2023年3月時点で3頭のみです。

※ 鳥羽水族館(三重県)に2匹、マリンワールド海の中道福岡県)に1匹

この3頭のラッコも高齢や血縁関係のため、繁殖は不可能な状況といわれています。

世界規模でラッコの個体数が減少していることから捕獲・輸入が禁止になり、水族館育ちの国内のラッコは繁殖能力が低下しています。

ピーク時には120頭以上が飼育されていましたが、個体数減少を受けて飼育展示を継続することが困難になっています。

ラッコが減った理由としては、まず毛皮を目的とした「乱獲」です。

ラッコの毛皮は毛の密度が高くて厚いため、断熱性に優れる特徴があります。

その毛皮を目的として、18世紀以降多くのラッコが殺され、19世紀末には絶滅寸前まで減少してしまったのです。

二つ目に、「石油の流出」です。

1989年、アラスカ沖で発生したエクソン・バルディーズ号原油流出事故では、推定3000匹のラッコが死んでしまったといいます。

最後に「シャチによる捕食」です。

アラスカに生息するシャチは、もともとアシカやクジラを食べていましたが、人間の乱獲によって減少しました。

ラッコ
ラッコの生息地

⑪ニホンアシカ

ニホンアシカは、現在では絶滅したともいわれているアシカです。

1950年代以降、捕獲、目撃の記録がない状態です。

分類は絶滅危惧種ですが、生存している個体数は推定でも10頭以下と考えられています。

水族館で私たちが見るアシカは「カリフォルニアアシカ」であることが多いです。

絶滅(危機)の背景ですが、ニホンアシカの油や皮を採集するために乱獲が進んだことが関連しています。

1900年初め、ニホンアシカの猟が本格化し、年に1300頭以上のニホンアシカが捕らえられていました。

ニホンアシカの猟の目的は、サーカスや動物園へ売ることです。

第二次世界大戦の前に、一度ニホンアシカの猟は停止されますが、その理由はニホンアシカの絶滅を懸念したらかではなく、採算が取れなくなったからです。

1958年には竹島の周辺でニホンアシカの目撃が報告されていましたが、その後は確実な記録もなく、絶滅したと考えられています。

人間が大いに関係している悲しい出来事です。

ニホンアシカ 剥製標本
最後の目撃情報があった竹島(1958年)


⑫ジュゴン

クジラ類に似た胴体と小さな頭を持つ大型草食獣で、「人魚」のモデルになったといわれる哺乳類です。

日本の沖縄の海もジュゴンが生息していますが、その数はわずかに50頭以下といわれており、まさに絶滅寸前の状況です。

ジュゴンが飼育されている水族館は、鳥羽水族館(三重県)が日本で唯一です。

うるま市の津堅島などでは、昔に、女神を思わせる海の神とし、豊漁を願う儀礼のためにジュゴンを捕獲していたこともあるそうです。

また、1930年代には戦後の食糧難を防ぐため、ダイナマイト漁により乱獲しています。

また、漁業の網に誤ってかかってしまうことや、餌場の藻場の減少なども個体数減少の要因です。

世界で2ヵ所の施設だけが飼育展示しており、そのうちの1つが日本の鳥羽水族館です。


ジュゴン
ジュゴンの生息地

以上、前回と合わせて絶滅危惧種IA類の哺乳類12種類でした。

人間が絶滅危機に追いやっていることがわかっていただけたでしょうか。

少しずつ絶滅危惧種についても知っていただけたらと思います。

次回からは、「鳥編」にいきます。来週もよろしくお願いします。

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