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外堀は自分で埋める

今でも鮮明に覚えている12歳の時の記憶がある。
30年も前だ。

中学校1年生、初めての三者面談。小学校にはそんなシステムはかなったから、かなり緊張していたと思う。

担任の先生は、どこか自分のお父さんに似ている、線の細いメガネをかけた七三分けの先生。

そこで母ちゃんが、担任の先生に、「この子、𓏸𓏸高専に行きたいらしいんです」って、言った。

かなり驚いた。まさか、そんなことをこんな場所で言われると思ってなかった。

ブワッで怒りにも似た感情が湧き出て、「お母さんはなんでそんな思いつきで、たまたま言ったことを先生に言ったんだろう」と、困惑した。私はまだ何も知らない。中一で、どこに行くかなんて考えた事ない。

 その時は、高専がどんな学校なのか、何を勉強するところなのかすら知らなかった。ただ、5年間勉強し、卒業した時には20歳になっていること、短大卒と同じ扱いになる事くらいしか知らなかった。

 家庭の経済状況的に、高校までしか行けないだろうというのが暗黙の了解だったこともあり、一度入ったら5年間勉強できる高専は魅力的だった。大学受験もしなくていい。それってめちゃ楽じゃない?!って思った。

 そんな知識レベルだったから、入ることがそれなりに狭き門の学校だとは知らなかった。

担任の先生が次の日には高専のパンフレットをくれた。いくつか学部があって、校舎もなんか大きくて、寮や研究室もあって、大学みたいだと思った。

きっと行くことはない大学生になれると思った。

知らず知らずに、高専に行きたいとインプットされた。結果的に高専に潜り込めた。ラッキーだった。私はあの時に、かなりの運を使い切ったと思う。

 今、振り返ってみると、あの時、外堀を母ちゃんに埋められたのだ。母ちゃんだけじゃなくて、学校の先生にも知られてしまった。あの発言を反故にするなんて、中一の私には考えもつかなかった。

30年が経って、あの時の「外堀を埋める」を何度か自らで発動させて生きてきたと思う。

ちょっと背伸びした目標や、口にするには余りにも恥ずかしい夢や将来の自分について、「言いたきゃないけど思わず言っちゃった!」みたいな既成事実をつくる。

職場での1on1で上司に証人になってもらい、誰も読んでないだろうブログで全世界に公開する。

 上手くいくときもあれば、全くダメな時もあるけど、言わないよりはマシな結果になったと思う。

ほんと弱いよな、と思う。
やるって決めても、出来ないことだらけ。

背水の陣なんてどこを探してもない。いつでも出来ない理由と、やれなかった言い訳はたっぷりと用意されている。

それでもなんとか自分で外堀を埋めてでも、ちょっと違う未来を迎えに行きたい。

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