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アナタニ、モウ、ちぇるしー、アゲラレナイ…

遠足のおやつにバナナを持っていかなくても、これ一箱持っていればオシャレに感じられた、あの時代の代表格。ただ〝キャンディー〟ではない。「チェルシー」という銘柄があっての存在感だった。'70sのサイケデリック感が漂うパッケージの色合いやデザインと相まって、背伸びした子供心の憧れを輝かせていたのである。CMソングとともに決めゼリフ「アナタニモ、ちぇるしー、アゲタイ」––––– このカタコト日本語の口調を真似ながら一粒、友達の手に渡したりしたものだ。

そんな「チェルシー」が販売終了するとのニュース。
今日は啓蟄、春の始まりを感じてウズウズする時期。
しかし同時に訪れた〝ある懐かしい時代の終焉〟に、薄々(ウスウス)と鬱々(ウツウツ)な寂しさも、少し。
おまけにシトシト雨模様。

それにしても、あの昭和40年代半ば–––1970年代の意匠のまま、半世紀余りよくぞ続いたものと感動もしている。「販売規模の低迷により収益性が悪化」したとはいえ、開発・発売の当初に企業と消費者双方が見つめていた〝キャンデーの新しい分野〟の輝きが続いていたという事でもあるのだろう。

販売終了決定の現時点でも、まだ商品を紹介するページが公開されている(いつまで見られるのかはわからないが)。ここで見られるその一粒一粒に、過ぎし日の憧れを想い、それぞれの味わいを反芻してみるのだった。

せっかちな私は、飴を口に入れるとつい噛み砕いてしまおうとする。
しかしドロップやらキャンディーやらは、そんなセカセカとした時短(今時の言葉での〝タイパ〟か)など意識せず、ゆっくりと口内で溶かしながら味わうのが本筋だろう。現在駄菓子市場を席巻しているグミとは違うのだ。

余談ながら、私の所属する聖歌隊で、いつもミサ奉仕の終わりに「お疲れ様」と〝飴ちゃん〟をくださるご婦人がいらっしゃる。その配るキャンディーの中に、嗚呼懐かしの「パイン飴」が常駐しているのが嬉しい。
いつも有難うございます。


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