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イリュージョニスト ★★★★☆

とても期待して、ずっと観たかったけれどご縁がなかった作品。
やっと観られました。
もうこの絵とあらすじだけで泣けるんですよ。
ショメの映像は、どうしてこうも染みるのだろう。

1950 年代のパリ。時代遅れのマジックを披露する老手品師タチシェフは、かつての人気をすっかり失い、場末のバーでドサまわりの日々。ある日、スコットランドの離島に流れ着いた彼は、やっと電気が開通したばかりの片田舎のバーで、貧しい少女アリスと出会う。手品師のことを何でも願いを叶えてくれる“魔法使い”と信じ、島を離れるタチシェフを追うアリス。そして、彼女に生き別れた娘の面影を探すタチシェフ。やがて2 人は言葉が通じないながらも、エジンバラの片隅で一緒に暮らし始めるが…。<公式のあらすじより>

原作がタチで、それをショメがアニメ化したんですね。
ショメの作風だと何があっても可笑しくないので、突然の悲劇を想定してビクビクしてましたが、それはなかったです。そっか。原作付きだったのね。

ウォン・カーウァイ監督の「ブエノスアイレス」がしんどいけれど大好きなのですが、同じくらいしんどいけれど素敵でした。
映像、音楽、演出は完璧です。ああ、ショメ大好き!

ただ問題は、ストーリーなんです。
何にしても、いわゆる文字と文字の間だらけ。
説明がほぼありません。
そして、会話もありません。
で、手品師はフランス語を話していて、アリスとは言葉が通じません。
問題はすべてアリス。
付いてきてしまったのは、まあよしとして(酒場で働けるような年齢でいいのか??)老人にタカるのはちょっと。世間知らずの田舎娘にしても、ちょっとどうなの?というまま、最後まで。
大人ならネックレスが小銭で買えない事くらいわかるし、生活するには金がいるってわかるでしょうに。
赤い靴はいいとして、コートやドレスやハイヒール、多分イヤリングと手袋と化粧品も。働いていない彼女に買える訳もなく、全部手品師の「魔法」でもらったものでしょう。
アリスがもっと普通にしっかりした女の子だったら、この映画は満点でした。
そして、倍以上悲しかったかも。
貧乏な手品師、社会に置いていかれる腹話術師にピエロ、軽業師のトリオは転職。
明るい事が何一つありません。
アリスに恋人ができた事を知り手品師は彼女の元から去りますが、その前にアリスは下に恋人を待たせて手品師を捨てるつもりだったかと思うと、何かもう!やりきれないなあ!(立腹)

泣いてしまったのは、腹話術師の人形とうさぎの最後。
うさぎは、仲間がいたから幸せになれるかなあ。
でも、うさぎくらい連れて行ってあげても良かったのに。(手品をやめたという意味だとは思いますが)

この後、皆どうなったかはわかりません。
アリスも幸せになったとは思えないし、手品師も何処へ行く気なのでしょうか。

何一つ幸せなことがない、でも多分また観てしまう映画だと思います。
これだけの話を台詞がほとんどなく描けるって素晴らしいですよね。

ストーリー以外は、★10個でお願いします。


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