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【子ども】昔話②昔話を音楽にしてみる~ねことねずみ~

もう一つ、どうしてもやってみたかったことがあった。数学的でもなく、国語的でもなく、音楽的な内容。参加メンバーが少し変わったことをきっかけに、自然と歌が口ずさまれる場面が増えていたので、今度は昔話を音楽にしてみることにした(基になった遊びは次回→ 昔話①昔話で遊んでみる)。


日本昔話より「ねことねずみ」

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ねことねずみが一緒に遊ぶなんて不思議でしたね(「ねことねずみ」の遊びの後なので)。実は、それにはこんなお話があったのです。

むかしむかし、あるところにおじいさんとおばあさんが仲良く暮らしておったと。
ある日のこと、おじいさんが山の畑で草取りをしていると、草むらに1匹の子ねこを見つけた。
「おお、腹が空いているようじゃな。どれ、うちに帰ろうな」
山でひろった子ねこを、おじいさんとおばあさんはまるで自分の子どもみたいに、大事に大事にかわいがってそだてたと。
ある日のこと、納屋の中で何やら変な音がするので、ねこは納屋へ入っていった。すると、納屋の床にある小さな穴から歌が聞こえてきた。

みがけや みがけや おたから
つゆの しっけを ふきとばせ
みがけや みがけや おたから
みがいて みがいて ぴっかぴか

次の日も、ねこは納屋に入ってみた。すると、きょろきょろと周りを見回しているねずみを見つけた。ねずみが袋からこぼれた豆を拾おうとした途端、ねこはねずみに飛び掛かった。
驚いたのはねずみ。ねずみは今にも泣きだしそうな声で言った。
「お願いです。どうか見逃してください。わたしたちねずみは、お宝を磨かなくてはなりません。これは大変な仕事なのです。疲れがたまったのか、お母さんは病気で倒れてしまいました。そこで、栄養をつけてさせようと、豆を探しに出てきたのです。お母さんが元気になったら、わたしはあなたに食べられに出てきます。それまで、どうか待ってください」ねこはねずみを離してやった。逃がしてもらった子ねずみが穴に帰ってしばらくすると、ねずみたちの前に、豆がぱらぱらと落ちてきた。

1つぶ 2つぶ お豆さん
ねずみの 母さん 元気に なあれ

「ねこさん、ありがとう。きっとお母さんは元気になるでしょう。約束通りわたしを食べてください」
ねこはくるりと背を向けると、納屋から出て行ってしまった。ねずみの目からは涙がぽろり。

それから何日かたったある日のこと。納屋の方からチャリンチャリンと音がする。戸を開けてみたおじいさんとおばあさんは目を丸くした。床の穴からチャリンチャリンと小判が出てきたのだ。

1枚・2枚・3枚・・・

小判のあとに、子ねずみ、母ねずみ、そしてほかのねずみたちもぞろぞろ出てきた。子ねずみが言った。
「おかげさまで、お母さんの病気もすっかりよくなりました」
そして、ねずみの長老も笑顔でこう言った。
「おかげさまで、宝をみがき終えることができました。お礼に、少しではございますが、このお宝をお受け取りください」
おじいさんとおばあさんはへなへなと座り込んでもうた。それは、2人が暮らしていくのに十分すぎるほどのお宝で、何不自由なく元気に暮らすことができたのだそうな。そして、ねことねずみを一緒にとてもかわいがったそうな。


お話を一緒に動くー1曲目

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1曲目は、お話の途中で子どもたちと一緒に歌うことにして、レミソラシの五音で作った。

A みがけや みがけや おたから
  つゆの しっけを ふきとばせ
B みがけや みがけや おたから
  みがいて みがいて ぴっかぴか

例えば、2グループに分かれてAとBをコール&レスポンス形式で歌う。
輪唱にもできる。輪唱は相手のメロディにつられずに自分のパートを歌わなければならないので、3年生以上の方が良いだろう。1・2年生の間は、模倣をする力が強く、何をどうしても必ずつられてしまう子がいるから。


お手玉を手放す・受け取るー2曲目

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2曲目は、お手玉を手のひらに落とし、ねこが床の穴に豆を落とすシーンを表してみた。

1つぶ 2つぶ お豆さん
ねずみの 母さん 元気に なあれ

左手は受け皿にし、おへその前で構える。右手でお手玉を持ち、額の前から落とす。
今度は、右手を受け皿にして、左手でお手玉を落とす。
欲張って受け皿側から受け取りにいったり、勢いをつけて投げてしまう子がとても多く、意外と難しい。

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このワークで肝になるのは、”手放す”ということ。生活に結び付けてとらえなおしてみると、不要な物を手放して身軽になる、こだわりを手放して柔軟に行動するということになる。物質的にとらえれば単純でしかないワークでも、精神的なことに意識を向けてみれば、自由な生き方へとつながるワークであることがわかる。

・・・と、そんなことを思いつつ、このワークは数年経った今でも継続中。「本当に生き方につながるのか?」の実感は、正直なところまだわからない。でも、心身の調子の良し悪しはとてもよく見える。調子が悪いときは、なんだか身体がくにゃくにゃしていたり、お手玉のスピードが速すぎたりする。思春期に入って自分のことをあまり話してくれなくなったけれど、様子を見て、声を多めにかけて関わりを増やしたり、保護者の方と情報共有できたりする点は大きな成果だ。


お手玉を渡す・受け取るー3曲目

3曲目は小判が次から次へと出てくるシーン。

1枚・2枚・3枚・・・

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数えながら、お手玉を右隣の人の左手に渡す。同時に、自分の手には左隣の人からお手玉が渡される。そのお手玉をまた、右隣の人の左手に渡す。
全員でタイミングをそろえ、テンポを速くしたり遅くしたり変化をつける。

集めた小判(=お手玉)をかごに入れて、おしまい。


参考図書

このまま素話にするのはちょっと難しいけど、あらすじを簡単に調べたいときにはおすすめ。


本に書かれたまま素話にするなら、私はこれが好き。擬音語が秀逸で、耳に心地よい。


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えりか先生。神戸シュタイナーハウスでは、子どもクラスを担当。
小学校教員を経て、現在は放課後等デイサービスの指導員として働くかたわら、神戸・京都において日曜クラスの先生としても活躍中。
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