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クラウドファンディングサイトMakuake公開後3日で100万円のご支援が集まるまでにやった事全公開

はじめに
こんにちは。Steelstyle(スチールスタイル)株式会社、代表の林幸一郎と申します。

僕は今、自身が育った故郷でもあり、実父が営んでいる林金物有限会社と共同プロジェクトという形で、クラウドファンディングにチャレンジしています。
この記事を書いている2020年7月20日現在、終了まで41日を残し、約225万円のご支援・102名のサポーターの皆さまに支えられ、目標としていた金額を大幅に上回る進捗となっています。https://www.makuake.com/project/steelstyle/

ご支援頂きました皆さま、この場をお借りして改めて御礼申し上げます、誠にありがとうございます。

今回この記事を書こうと思ったのは、これからクラウドファンディングへのチャレンジを予定されている方や、これからプロダクトブランドを作ろうとされる方に少しでも実務に近い内容をお伝えできればと思い、筆を取りました。少しでもそのような方々のご参考になれば幸いです。

なにものなのか

林の経歴を、自己紹介を含めて書きました。このnoteを読む前にご一読頂けますと、本記事がより分かりやすい内容になるかもしれません。

林金物とSteelstyleの関係性

そもそも林金物有限会社とSteelstyle株式会社の関係性ってどんな関係?とちょこちょこ聞かれるのですが、相互に資本関係もなければ役員関係もありません。Steelstyle株式会社から見た林金物有限会社は、実父が営んでいる全く独立した別会社です。

林金物有限会社のストアフロントにあるショーケース

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単に、僕が育った実家の包丁屋が、街の再開発対象地域に選定されなくなるかもしれない(実際にはその再開発プロジェクトは市長が変わったことで頓挫し係争真っ最中です...笑)という状況に直面し、長年育った場所がなくなる事、そして実は家業が148年も続く歴史あるお店だったことを知り、その場所を失いたくない一心だけで加担している、という関係性です。

そこがスタートではあるものの、何もない状態で一方的にリソースはかけられないので、実務的なところでは水面下で進めているSteelstyle株式会社のEC事業の倉庫業務や包丁関連の実務を林金物にお願いしつつ、Steelstyleとしては林金物のBS/PL管理、DX推進を支援したり、本プロジェクトのような事業開発を行ったりしています。

Makuakeでクラウドファンディングを始める前の状況
当時の林金物としての事業は、各地の包丁メーカーから商品を買い付け、自店の棚に置いて来店者に販売する、典型的な店舗主体の仕入れ販売モデルが売上の大半でした。あとはまちの金物屋らしく、持参したお客さんの合鍵を作ったり、包丁を研いだり、といった商売です。

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ここで感じたのは、このオンラインショップ全盛期の現代に、他社と同じものを売っていては最終的に価格競争となり、1店舗しかなく面も取れない地方の中小企業が他社商品の仕入れ販売モデルで生き残るのは到底無理で、大胆なビジネスモデル転換が必須である、という点でした。

まず売るものを作った
他社には真似されず価格競争に巻き込まれることもない、自社商品の開発を目指しました。

そこで、まず林金物が持っているものから活かせそうなアセットを探しました。148年もの歴史を重ねていると、借金ばかりが積もるだけではなく笑、探せば一つくらいは事業に活用できるものが意外とあるものです。


ここで見つけられたのは、各地方の職人さんたちと強いコネクションを持っていることでした。実際に包丁職人さんの工房にお邪魔し、写真や動画の撮影を行い、包丁のことを直接ヒアリングしていくうちに、この規格で商品作りをしたなら市場に受け入れられるモノが作れるかも?と感じました。とても質の高い良い包丁を作る職人さんたちです。

トマトもこの通り。(やってみたかったヤツ)

さらに包丁の規格だけではなく、パッケージやブランドストーリーを、包丁の見た目や使われている素材、製造プロセスからコンセプトづくりを進め、林金物だけのオリジナルブランドとしての包丁商品の誕生です。

Amazonで海外に売ってみた

売るものができると、次に販売チャネルを検討しました。自社サイトを作って販売する、モールに出す、SNSに付帯しているEC機能でテストマーケ、、、など色んな選択肢を吟味しましたが、僕が包丁事業にチャレンジすることを決めたときから海外に対して販売を進めていきたい想いがあったため、既にユーザーが集まっていて比較的ページ構築に時間もお金もかからないAmazon.com&Amazon.ca(米国版・カナダ版)に出品しました。

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全くの余談ですがAmazonのドメイン.以降は書体が違うんですね、、全然気づかなかった、商標も「Amazon」までしか取ってなかったりするんでしょうか。

途中、色々と苦労する部分もありましたが、海外での反応は悪くなく、そんなに時間もかからず月に一定の本数が売れるようになりました。

そこで押し寄せるコロナウィルスの波

一定の本数が徐々に売れ始めた包丁は、さらに1ヶ月あたりの出荷数は増えていきました。2-4月にかけて全世界的にStay Homeが叫ばれ始めた中、少しでも家にいる時間を豊かに過ごしたいというニーズに後押しされたのでしょう。

がしかし。ここで想定外の事が起こります。

コロナウィルスの影響で、海外向けの配送手段であった日本郵便のEMSの遅延が始まり、最終的に4月3週目には受付停止、過去に手続きしていた荷物が届くのもいつになるかわからないような状況(当時お伺いできた到着の見立ては4ヶ月後の米国到着とか...)となり、自社が活用していたアメリカ・カナダ向けの物流チャネルは絶たれてしまいます。
すぐに代替手段をリサーチして各物流会社にコンタクトを取ったのですが、同様の状況に直面された方からの問い合わせが殺到、また先行きの不透明さを考慮して一旦海外向けの販売はここで停止する判断を取りました。

荷物到着遅延の事実を、そのままご購入頂いたユーザーさまにお伝えすると、返金リクエストの嵐。それはまあ当然でよすね...購入した商品が1ヶ月以上も届かないんですもん。。。皆さまそれぞれに真摯に対応させて頂きました。

Shopifyでサイトをつくって売ってみた

海外向けの販売を停止した今、対象は国内マーケットに向き合わざるを得ない状況です。
吟味した内容の一つで、自社ECサイトを作って販売する、という選択肢がありました。越境ECサイトに強いECシステムといえば、カナダ発のshopifyがすごい勢いで伸びていることを知り、早速使ってみることにしました。

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前職の運用型広告代理店時代に、クライアントさまのECサイト管理画面や、自身で契約していた他のカートシステムを使ったこともあったのですが、shopifyのそれはUIから全く異なり、感覚的に操作できる点やEC事業の効果測定に必要である見るべきポイントがデフォルトで実装されており、少し触ってみた感覚では非常に使いやすい印象を抱きました。

とりあえず、深く考えずに自身でサイトを構築してみることにしました。

10万円の広告費をかけて、1本しか売れなかった

デザイナーさんの協力を受け、自分でLP風のテキストを書いて翻訳し、Amazon用に撮影した写真を活用しながらページが整いました。さらに、Google Adsを用いてテスト的に広告出稿を行い、今か今かと包丁が売れるタイミングをワクワクしながら待っていたのですが、、待てども待てども包丁は売れません。

ようやく、待望の1本目をご購入頂けた方が現れたのですが、そのときにはすでに広告費を10万円近くを使っており、収益性と継続性の観点から広告を停止しました。
ページのなかで伝える内容が良くないんだなと感じ、作って間もないサイトの作り直しを決意します。

リブランディングとクラウドファンディング

感覚的にですが、国内においては、単に包丁販売をスタートさせただけでは正直あまりうまくいくイメージがありませんでした。そこで、今一度ブランドの見直し(リブランディング)とウェブサイトのリニューアル、クラウドファンディングの活用を模索し始めます。

再商品化した包丁たち

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リニューアルしたウェブサイト

クラウドファンディングを活用できないかと考えた理由は、下記のとおりです。

・林金物の事業について伝えたいストーリーがあった
・クラウドファンディングプラットフォームのトレンドの変化を感じた(アイディアの実現化から、価値を再定義したモノのEC化へ)
・実質的な予約注文の獲得による好条件キャッシュフローの実現
・一定以上の支援額を集められればその後の事業展開がスムーズになるのでは、という仮説検証

色々な条件を整理し検討した結果、チャレンジしないよりもチャレンジするメリットのほうが大きいと感じ、クラウドファンディングのチャレンジを決断します。


まずはMakuake内に出ている包丁プロジェクトのリサーチを行った

Makuakeで公開されている包丁のプロジェクトをリサーチしました。そのときにまとめたスプレッドシートがこちらです。(スプレッドシートにリンクしています)

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このリサーチの目的は、支援金額の現実的な集まり具合と成功・失敗パターンの確認、さらに類似プロジェクトの有無の確認とページ内訴求の差別化でした。このリサーチを行った内容を元に、プロジェクトページで何をいうか、言わないかを判断し内容を作り込んでいきます。
ちなみに、クラウドファンディングサイトは色々とありますが、僕の選択肢はもとよりMakuake一択でした。


理由は2点で、パッといくつかのクラファンサイトで包丁関連で調べたときにMakuakeが圧倒的に大きな金額を集めているプロジェクトが多かったこと、また、
当時Makuakeは会社として上場して間もなかった(2019年12月株式公開)ため、決算の数字を作る必要性から広告を打ってでも集客しなければいけないフェーズだったことから、媒体としての集客力を考えた時にMakuakeなら選択肢として失敗することはないだろうと思ったからです。

プロジェクトを公開する前にFacebook広告でメールアドレスを集めた

僕は自身の経歴として、過去に運用型広告(Google AdsやYahoo!Adsなど)を得意とする広告代理店での経験(詳しくは自己紹介の記事※リンク※をご確認ください)があり、プロモーションの面でクラウドファンディングプロジェクト公開前になにか施策を打てないかと考えました。

結果、Facebook Adsのリード獲得広告を用いてユーザーのメールアドレスを集めるための広告を打ってみました。以下が実際に配信を行った広告です。

配信していた広告クリエイティブの一例

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大体1週間くらい配信して、約1000件分くらいの方に登録して頂けました。広告費としては13万円くらいだったので、CPL(リード1件獲得あたりの費用)が130円でしょうか。

意識した点としては、FacebookAdsの特性であるインタラクティブ性から、配信している広告クリエイティブに良くも悪くもいいねやコメントが集まります。その反応を逐一確認しつつ、コメントについては真摯に受け答えを行うことを意識しました。

登録してくれたユーザーに対してプロジェクトに関するメールを5回送った

上記でFacebookAdsを活用して約1000件のリードを集めた話をしましたが、そのメールアドレスに対してShopify Mailからメルマガを送りました。ざっくりした内容だけお伝えしますと、

1通目:自己紹介、自分たちが何者なのか
2通目:クラウドファンディングを実施する理由(なぜやるのか)
3通目:製品について(なにをやるのか①)
4通目:メンテナンスについて(なにをやるのか②)
5通目:プロジェクト公開アナウンス(ページリリース時)

という感じです。

shopifyメールを使うと、管理画面上からこんな形できれいなHTMLメールが簡単に作れます。

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Shopifyから当時新機能としてリリースされたShopifyメールは、コーディング不要でHTMLメールを無料で作成できるという、全体的には非常に使いやすいものでした。
が、新機能ゆえに使い方を解説した記事が日本語・英語ともに少なく、登録頂いたユーザーさまの名前が文字化けしたり、メールアドレスリストの分類の方法が分からなかったりと、とてもとても苦労しました。。

挙句の果てにはウィークリーで送ることができる上限数が決まっていたようで、3回目のメールを作って送信する際にそのアラートが出てきた際には発狂しそうになりました。
もちろん発狂する余裕はなかったので、一旦息抜きにビールを飲んで冷静になり、多くのユーザーが支持されているklaviyoというアプリに乗り換えなんとか乗り切りました。(一部画像が表示されなかったり送信元が変な表示になっていたのは悔やみきれない失敗です、、、)

結果として、プロジェクトページ公開後のメールを送ってからすぐに数件のご支援を頂き、約2時間ほどで目標金額として設定していた30万円に到達することができました。

ダメ元で地元新聞社に対して記事にならないかを打診

当時、プレスリリースサイトを活用して公開時にプレス配信する事も考えていたのですが、客観的に冷静に自身のプロジェクトのことを考えてみると、メディアが取り上げたくなるような要素は特にないように感じていました。その一方で、もし可能性があるとすればその土地で長い間商売を行っている点から、地方新聞紙であれば老舗商店が取り組み始めた新しいプロジェクトとして取り上げて貰えなくもないのかもな、、、?と考えはじめました。

そこで、ピンポイントに知人のツテを辿った結果、林金物の店舗のある地元新聞社、徳島新聞社の経済部の記者の方とコンタクトを取れることになりました。結果として、下記のような形で記事として取り上げていただくことができました。(恥ずかしながら写真は実父です)

200715_林金物有限会社_徳島新聞_朝刊8面(徳島経済)レタッチ

定期的に活動レポートを投稿

Makuakeサイトでも推奨しているように、ほんの小さなことでもプロジェクト進捗があった際には活動レポートを投稿するようにしています。例えば「支援金額が○円を突破しました」という目に見えて分かりやすい進捗や、「パッケージ資材の到着のご報告」「新聞記事の掲載」などのトピックです。
この活動レポートは、プロジェクトを支援頂いたユーザー様に対してメールで通知が行きますので、どんなに小さな些細なことでも進捗があった際には定期的に投稿するのがよいでしょう。

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そして今に至る

ざっくり大雑把な部分も、少し細かい話も含め、ここまでが今に至るまでに行った施策です。あえて今行っている施策を挙げるとすれば、ごくごく少額に限定した広告出稿で、プロジェクト開始前に一定の成果を得たFacebook Adsを配信しています。(1日1000円~2000円前後)プロジェクト開始後の広告出稿の目的はアドレス獲得ではなく支援者の獲得なので、リード獲得広告ではなくコンバージョン獲得を目的とした出稿です。

出稿の意図としてはお守りみたいなもので、Makuakeの管理画面ではアナリティクス機能があり、1日にどのくらいの人が自分のプロジェクトを見てくれたかどうかを知るページがあるんですね。このデータが極端に少なくならないように、安いCPCで多くのクリックを集められるように工夫をして広告を出しています。

ただ、自社で広告を運用する場合はMakuakeのページを使っているがゆえにタグを設置することができず、コンバージョンベースの効果測定はできないので、コントロールする自信がない場合には広告代理店に運用を委託してもよいかもしれません。

最後に

クラウドファンディングは良くも悪くも、集まっている金額が可視化されるので、自身のプロジェクトを公開したあとに似たようなプロジェクトが公開されたり、そういったプロジェクトが多くの金額を集めているのを目の当たりにすると少し負けたくない気持ちになったりもします。


でも、そこをライバル視しても何かできるわけでもないですし、そもそもクラウドファンディングは多くのお金を集めることがゴールではなく、ページの公開は長い道のりのスタート地点に立った段階にすぎません。そのことを心に留めつつ自戒を込めて、Makuakeのプロジェクト終了まで残り41日間、全力で走りきりたいと思います。


これからクラウドファンディングを考えられている方の参考に、ほんの少しでもなれば幸いです。


おまけ
僕が今回のクラウドファンディングプロジェクトをアップするまでに、情報を参考にさせて頂いた方々のアカウントです。どの方々も非常に有意義な情報を発信されてます。記事やつぶやきを何度も見返し非常に参考させて頂きました、ありがとうございますm(_ _)m

・Hush Tug 戸田さん https://twitter.com/HushTug_toda
・ファブリックトウキョウ 森さん https://twitter.com/yuichiroM
・Takram 佐々木さん https://twitter.com/yasuhirosasaki
・山西牧場 倉持さん https://twitter.com/yamanishifarm

林のツイッターです。お気軽にご連絡頂けると嬉しいです。

Twitter https://twitter.com/Koichiro884


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