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オオカミウオは格好良い美味しい...が。 その2。

さて先日のオオカミウオ。

70cm超えで1200円。

なかなかに大きく予想より脂がのっている白身で寄生虫もおらず卵巣や肝臓のおまけもついていて期待値が高い。
これは色々活用できそうだ。

オオカミウオ実食

綺麗な白身。

オオカミウオの刺身。


魚食いあるあるだとは思うが初めて手に入れた魚で生食で何かしらのリスクが低いようであれば刺身で食べようと思う。
だってこんなに美味しそうで寄生虫がいないんだもの。
大きい肉塊を更に切り分けサクにして脱水シートで軽く水分を取り、うすーく切って皿に盛り付けたら…。


オオカミウオの刺身。

若干水分が出て見た目頼りないが個人的にハードルは高いまま。
刺身をワサビ醤油と紅葉おろしポン酢でいただきます。(惜しむらくは小ネギがあればと後悔)

…身は弾力があるものの固いわけではなく繊維質で噛めばその繊維にそって容易に噛み切れ解れる。ジャキジャキとした食感が顎の骨に響いて面白い。
味もすこぶる良い。クセが無く旨味、甘みに欠けるという評価もあるが少なくともこの個体は冬のヒラメやカレイにも似たほんの少しのクセと濃厚な旨味がある。
昆布締めやカルパッチョにして味を付けなくとも白身の刺身として上等だ。
養殖のマダイにも似たほんのりと甘くコクのある脂もありこれなら何度でも食べたいくらいだ。

オオカミウオのバターソテー。

淡泊ながらも白身の底力を感じられた刺身の次は少し手を加え下味とバターの脂質と豊かな風味を足し洋風にいただこうと思う。
水分を飛ばした切り身に黒こしょうとマジックソルトのガーリックを両面丁寧にまぶしたっぷりのバターで揚げるようにソテーしていく…。

完成。バターソテー。

加熱すると身が縮み一回りほど小さくなった。
調理中何回もつついたりひっくり返したものの崩れることなく綺麗に焼き上がった。
このタイプは火を通すと硬く締まるのかと思い箸を入れると…。
ふんわりと解れる。ただばらけるような事はなくきちんと塊で持ち上げることができる。
口に入れると"ほわっとしている"単に柔らかいとかほろっとほどけるとはちょっと違うふんわりほわっとしている。優しい歯触りだ。
簡易的な調理法なのだが元からある白身魚らしい食味とバターとが合いまり咀嚼する度に優しくも濃厚な肉汁(魚汁?)が口いっぱいに広がる。
高級フレンチとも張り合えるしちょっと手を加えたらそれすらも超えるポテンシャルがあると思う。

オオカミウオの天ぷら。

表皮の色が淀んで粘液が出て細長い魚は揚げ物が旨い。
なかでも江戸前のギンポの天ぷらがあるくらいゲンゲ亜目に属する魚は天ぷらが旨い。
それにオオカミウオは北欧や北米などではフライとして良く提供されているのだから間違いはない。
正直、面白みはないのだが半身の3分の2を使って大量に作った。

オオカミウオの天ぷら。

想像を超えないが王道を行く仕上がりだがアナゴやギンポの天ぷらよりも滑らかで意外にもゼラチン質は感じられない。
近いものをあげればカレイやアユのような食感だ。
ネットではタラに近いというような感想も見たが明らかにこっちの方がキメが細やかだ。
味もすこぶる良く天つゆ、塩、タルタルソースなんかとも相性がよく天丼にしても蕎麦に入れても主役をはれる。
個体数だとか漁獲量などの問題はあるだろうが一般に普及しないのが不思議なくらい旨い。
安い大きい美味しいと見た目を除けば完璧に近いのではなかろうか…?

また見つけたら買おう。

オオカミウオの味噌煮。

最後は余った身とアラと酒で血抜きした内臓を使った味噌煮だ。
煮物には少々こだわりがあってベースとなる味付けにはこれをしっかり計る。
出汁醤油:1.5 味醂:1 料理酒:1
とりあえずこれを守れば後は砂糖を入れようが薬味を入れなかろうが美味しくできる。更に付け加えれば「鎌田醤油(かまだしょうゆ)」さんの「低塩出汁醤油」をお勧めしたい。リンクも張っておく↓

さて前置きは長くなったが今回はこのレシピにプラスαをしてオオカミウオ料理を締めくくろうと思う。
アラで出汁を取り沸騰させ煮汁とささがきゴボウを入れまた一煮立ちした頃に身と血抜きした肝臓と卵巣を入れ火を止める前に味噌を溶き入れる。

完成。オオカミウオの味噌煮。

しっかりと味が染み非常に美味しそうにできた。
というより今までの料理からして不味かろうはずが無いのだ。
滋味深いオオカミウオの白身とごぼうのしみじみとした風味。
それを味噌でまとめるとなんとも日本人好みの落ち着いた味わいに仕上がった。
身は言わずもがなの旨さなのだが卵巣も良い食味をしていた。
酒と塩を使い血抜きと臭みをとっているので変な血なまぐささやえぐみも無い。
未成熟ながらもしっかりとした歯ごたえにまろやかな甘みがねっとりと舌にからみつく。魚卵もレベルが高い。

プチプチしてないが歯ごたえがある。

最後は肝臓だ。きっちり血抜きして真っ白になり変な匂いもなく他の内臓より大きくなっておりまるでアンコウの肝臓のようだ。

中央の白いの。

ここまで楽しまれてくれた最後の一つ。
是非とも味わって頂くとする。
一口…。
アン肝より脂肪分が少なくヒラメの肝臓やタラの肝臓のように弾力がある。
さっぱりとした甘みがあり臭くもなく美味しい。

…そう思った時だった。

突然の出来事。

肝臓を数回噛んだ瞬間、意識とは関係なくむせて盛大に吐き出してしまった。
自分でも驚いた。何があったか理解できなかったが数秒の間を置いて口の中を途轍もない苦みが襲ってきた。
苦い苦い苦い苦い苦い苦い苦い苦い苦い苦い苦い苦い苦い苦い苦い苦い…!
急いで苦みを緩和できそうなものを手当たり次第口にして何とか収まった。
「大人の苦み」とか「サンマの内臓」とかそんなレベルの苦みではなく。
なんというか…こう…ケミカルなのか藻類を煮詰めたというかおおよそ人が食べられるものでは無かった。
同じ産地のヒラメやアイナメやエイの肝臓を食べた時はこんな辛い思いはしなかったのだがどうやらオオカミウオは似た食性でも事情が異なるようだ。
思わず毒があるのかと思ったがこのブログを書いている今、私は健康そのものだ。
最後の最後の楽しみが驚きと落胆で終わってしまい食後には体感やつれていた。

今回のまとめ。


有終の美とは相成らなかったが身や卵や出汁などは非常に美味な魚であった。
並べていたおじさんでさえ食べ方を知らず新潟では今のところゲテモノ枠としての地位しか無いが食材としては優秀で食味でいえばタイやサケにも負けないくらいの能力がある。
もしまた見つけた時オオカミウオと私の環境が悪くなければ間違いなく購入するだろう。
それに今回は冷凍もされず寄生虫や鮮度落ちなどの心配もなく思う存分限界まで楽しめたと思う。
前編に比べて三倍量になったが書きたいことも書けたので満足である。
また何か面白そうなものを見つけたら食べてブログにしたいと思う。
終わり。



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