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いいからギンガメアジを買うんだッ!!!!

前置き

2022年10月22日。—その日私は直近の鮮魚不足による発作を起こし道の駅新潟ふるさと村へ駆け込んだ。そして彼と出会った。—

君はギンガメアジを知っているか?

この日の鮮魚コーナーには変わり種という程面白い魚の顔は無く、私の知的好奇心を満たせそうな他の魚介類も無いかと思われたそんな折。  
大きさに加えて安さに目をつけこんな魚を買った。
そしてこれが衝動的にブログを書く意欲を沸かせたのだ。

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上のおっきいの。

標準和名を「ギンガメアジ」、英名を「Bigeye trevally」。
スズキ目アジ科に分類され食卓の常連マアジさんの親戚である。
50cm程になりアジ科の中では中型種だ。
一般家庭ではあまり馴染みのないギンガメアジだが釣り人や魚好きにとってはなんのこっちゃない「メッキ」の成体だ。沖縄では他の大型のアジ科とまとめて「ガーラ」と呼ばれているようだ。

なんだかいつもと違うね君…?

まぁ…以前にも一度食べてはいるし10月の新潟ふるさと村では特段珍しいものではないと思っていたのだが鱗を取り頭を落として内臓をズルリと抜くと…。

内臓脂肪ビッッッッチリ!!!!

なんと肝臓より後ろの内臓にご覧の通り白い脂肪がまとわりつき内臓のシルエットを隠すほどになっている…!過去にカイワリや同サイズのロウニンアジやシマアジ、ブリ、ヒラマサなど近しいアジ科の魚は何度も捌いてきたがここまで極端なものは初めて見た。養殖ものなら分からなくもないがコイツは天然物である。
そして違和感は内臓だけでなく顔にもあった。

前回の2020年10月3日の個体。
今回2022年10月22日の個体。

お分かりになられるだろうか…?
二枚目のものはスマホで簡易的に撮ったもので少々荒いが目の部分をご覧いただきたい。
今回の個体は目が若干白く濁っているのだ。
これは脂瞼と書いて(しけん)という組織であり様々な説があり目の保護やレンズの役割を果たしていると考えられている。
魚好きの人が脂瞼と聞くと思い浮かべるのは「ボラ」の逸話だろう。
「冬の脂ののったボラは脂瞼にまで脂が渡り
白濁し結果視力が落ちる。」というものである。この特徴は近縁種のメナダにも見られ同じく脂瞼を持つサバヒーやアジ科なら上の写真のように白く濁るのも頷ける話だ。にしたってこんな分かりやすくなるかね…。期待が高まる。
そして三枚おろしにすると…。

なぁんか君、背中まで白いねェ…

赤身の魚が脂がのると白っぽくなるのは皆様も大トロ等でご存じだろうがこのギンガメアジ君はいやらしい事に背節まで淡く白みがかっている。
私は学生時代にバイトしていた魚屋で宮崎のブランド養殖魚「黒瀬ブリ」を何度も扱っていたのだがまさにそんな具合である。
ここから肋骨をすいて腹膜をとりのぞいていく…。

WAO!!!!

君本当に天然物かね?日本のどこかで完全養殖してる?寿司ネタとかのブリトロじゃんか。んもうお手々がツヤツヤヌルヌルテカテカ…///
じゃあ刺身用に皮…引いちゃおっか…♡

Oh…Sexy…
包丁にも糊のようにベッタリと…

光り物特有の銀側のその下。皮下脂肪が淡雪のように積層しており赤い肉を覆っていまっている。ただ色味は流石に"ブリ"というよりも"アジ"といった感じだ。ちなみに私個人脂の乗った魚は大好きだ。女性も肉付きの良い人が大好きだ。要は人も魚もぽっちゃりがタイプなのだ。なんなら最近運動不足で自分にもブーメランが飛んできている。
いや〜〜〜じゃあ取り急ぎサク取りして刺身にしますか!

ギンガメアジ実食ッ…!

ドジャーン!

うーん…なんとも食欲をそそる見た目に照り。堪らんなコレは。

腹節の方。

先ずは見てよこの脂身!皮下だけでなく身の繊維の中一本一本、その隙間にも脂が入り込み霜降り肉もかくやという具合です。
それでいて獣肉よりも脂の質はサラサラとしており噛むたびに滲み出てあっという間に舌を包む。喉を通る時にはまったりとしたコクが感じられ生臭みも無い。
ただ脂の甘い感じはあまりなく身のうま味を口内に充満させるための媒体となっている。養殖のブリだとこの旨さの中に魚粉のような飼料の匂いがどこか遠くから顔を覗かせるのだが天然のギンガメアジにはそんなものは無い。

背節の方。

見てよこの血合い!まぁじでカルビ肉じゃないの!アジかと思ったらブリでブリかと思ったらやっぱりアジで最後はまさかのカルビ肉に着地するというつくづく楽しませてくれる魚だ。食味の方もすこぶる良好で先述もしたが口の中の温度でとろりと溶け出る脂だけでなく新鮮も新鮮なので食感もブリンブリンで噛み砕けばそれが弾け出てくるのだ。しかし若かったり新鮮なブリのような青臭さもなく血合いに酸味もない。ただただ旨いのだ…。
お次はアジ科といったらこの食べ方「なめろう」!
手元に8ヶ月熟成のお手製ゆず味噌があるのでこれを混ぜよう。

オ…オソマ…

入れるのはシソ、ネギ、あとはほんの少しの下ろしショウガ、味噌に出汁醤油に秘伝のゆず味噌を削ってたたけば完成。

ギンガメアジなめろう!

たっは〜〜〜〜!!!!これこれこれこれェ!出来映えは100点満点!
口に入れて解した途端まず来るのはガツンと強い柚子の香り。本当に脳天をバカでかい柚子で殴られたようなインパクトがある。それでいて魚の味を殺さず露骨すぎる主張もせず真っ黄色の衝撃の1秒後には口から鼻にかけ正に柚子が"咲く"のだ。
モニュモニュ咀嚼するとジワジワと脂と味噌と醤油の塩気で何杯にもされた身の旨味が進出してきて最後の最後にシソとネギがキリリッ!と締めてくれる。
いつまでもダラダラと口の中にあるんじゃなくて薬味それぞれが各々の役割をきっちり果たしてギンガメアジという主役を引き立てて活かしてくれている。
普通に味噌のみのなめろうなら日本酒だろうがゆず味噌を練り込むことによって白ワインとの相性が良くなっている。
非常に美味しい逸品であり魚である。

まとめ。

今回のギンガメアジには気づかされることが色々あった。
丸物の魚を買う際の選び方にはエラを見る、腹のハリを見る、肩を見るなど色々あるが今後アジ科の中型魚には目を見て脂瞼の濁り具合を確認するという工程を入れる事にしよう。
さらにこの旨さ。佐渡の寒ブリにも引けをとらない食味なのだが寒ブリに比べると一尾の値段が10分の1程も安い。今回の個体は一尾約1800円、佐渡の寒ブリは一尾約20000円。サイズやブランド力にも差があるので単純に比べてよいものではないのだがサクにするにしろギンガメアジは同サイズのシマアジよりも本当に安価である。(お店や漁師さんの儲けが少ないのは懸念材料だが)見つけたら絶対に買うべきだ。というか魚嫌いでない限り買わない理由の方が少ない。多分安さの理由も知名度が低いからだろう。
10月の頃、新潟ではふるさと村に行きさえすれば4〜6尾程が2500円未満で買えてしまうのでこれを読んだ新潟の魚好きは直行しなさい。
…え?こんなに長々高いテンションでお前もいつもと違うだろって?そうだよ!なめろうでワイン一本空けて高揚してるんだよ!

おつまみスライスゆず味噌。

このゆず味噌も来年の4月ころには投稿したいな。
〜Fin〜


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