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土屋カエデのエッセイ7

鶏肉養殖業の朝は早い
コンコルドぐらい早い

午前9時
モモ肉の水槽を掃除する
鍋にこびりついたお焦げをヘラで削ぎ落とす
絶対に捨てないでね
これがうま味になるのだから

午前5時
事前に募集したパートの老婆が
このファミチキの衣を一つ一つ剥いてな
畑に植えるんじゃ
水耕栽培には自信があるが
冬時間は蝋燭が足りなくなるので二毛作になる
パートの老婆が1人闇に消えた

PM27:15
【銀座】
豊洲市場では水揚げされたばかりのムネ肉が競りにかけられている
「30万!お客さんに決まりだぁ〜」
「いやだぁ放してくれぇ!」
「そらおとなしくこっちに来い」
「いやだぁ!上沼恵美子にだけは調理されたくない!」
「なんでだ!?意外とテクニシャンだぞ!?」
「いやだぁ!」
「じゃあ誰がいいんだ?」
「もこみちかな」
「ふむ恵美子は嫌か」

「平野レミぃぃいいいいい!!!」
「YEAAaaaaaaaaaaa!!!!!!!」

午後4時
配達を終えたトラックが一台
ブロイラーの群れが一台
合計三台の車両が帰社予定です
今すぐ駐車場を明け渡しなさい!!!


一方その頃
鳥インフルエンザによる死骸が弊社の南大門前に山ほど打ち捨てられていた
暇を与えられた老婆は1人
地鎮祭を執り行う

午後11時
タイムカードを撃ち
鶏肉養殖職人も夜の街に消えた
職人はまた明日の仕事に備え英気を養うのだ
安月給のくせに
見栄を張って

…こうして僕たちの食卓に新鮮なお肉が届けられているんだね
うーん豚汁おかわり!

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