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[詩]今日に似た日

歩きながら ふいに 気づくのだ
今日に似た日が たしかにあったと

やはり 頭上に 淡い灰みの低い空
やはり 足もとに 乾き切らない舗道
やはり 靴音が いつもより響いて

立ちどまって ふいに 分かるのだ
今日に似た日は さみしかったと

あれは ピアノ教室に向かう 夕刻前
あれは 恋の終わりを知る 信号待ち
あれは 余命短い父の 見舞い帰り

振り返ると ふいに 怖くなるのだ
今日に似た日が またやってくると

いつか 未生以前の 深い森
いつか 人の世の後の 白い浜 
いつか 銀河と銀河の 薄い塵

もう 靴音もなく 道もなく
それでも さみしさは 歩いている
今日に似た日を 歩くあなたと
すれ違う


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