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[詩]擬態の柩

擬態の柩

燃える 燃える 擬態の柩
もう ならなくていい
なりたくないものに ならなくていい

ハイビスカスの玉座で 瑠璃色の蝶に化け
蜜の吸い方も知らず 鏡の間へ逃げ延びて
見てしまったのだろう? 聴いたのだろう?
ひからびた樹皮を真似る 幾千もの蛾の羽ばたきを

燃える 燃える 擬態の柩
いま やっと なれるときがきた
いや いくども なったことがある

忘れられた墓標に寄り添う 朝露の輝きに
疲れ澱んだ川面に舞い落ちる 花びらの囁きに
うなだれて冬夜を歩く者に降る リゲルの瞬きに



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