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短編小説集『三千世界』

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Short stories documenting the days of the void. In the days of no 全.
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2022年2月の記事一覧

『幻やったんかいね、、』

『幻やったんかいね、、』



この世界の片隅に、

お花が一輪、咲いてたとさ。

ある時、蜂さんが、話しかけたと、

「ねぇ、お花さん、お花さん、

ずっとそこで、咲いとてくれる?

お花さんがおるから、

わたし、

生きとるんじゃ、ないかね、、」

お花さんは、こう答えたと。

「いのちは終わらんよ、、

いのちは、おわらんよ、、。

あんたがおるから、

いのちは、おわらんよ、、。」

蜂さんは、

また次の日、

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『風の吹く丘の上で、風が吹いた』

『風の吹く丘の上で、風が吹いた』



ゆっくり、ゆっくり、でも、しっかり、しっかりと、一歩一歩、大地を踏みしめて、登ってゆく。

ザワザワという、木が揺れる音がして、少し雨が降った後の匂いがする。

細い山道の旧道を、少しずつ進んでいる。

上を見上げると、太陽の光がほとんど入ってこないほど、木が生い茂っている。

後ろを振り返れば、自分が歩いてきた道があるだけで、誰もいない。

前を見ても、ただ、ゴールの見えない森

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