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だから、私は酒を呑む|自己紹介

初めまして。愛知の酒と食をコンテンツにしたガイド育成事業とツアーづくりをしようとしている Stay Aicih 食任(しょくにん)の葛山(かつらやま)佳代子です。
Stay Aichi では、愛知の発酵食品の講座とツアー企画を主に担当していきます。事業を始めるにあたり、自己紹介を兼ねて、なぜこの事業をやりたくなったのか、自分のこれまでを振り返ってみました。
(まだwebサイトもできてない、事業も作り中だけど、とりあえず自己紹介の振り返り)


体育学専攻からの国際交流へ

 私は幼少期からスポーツに親しんできました。中学、高校時代は部活の記憶しかないくらい(笑)!小学5年生の時に女子サッカーで全国大会に出場し、その後中学、高校では陸上部に所属。中学時代には東北大会で優勝し、高校生の時にはインターハイにも出場しました。でも、私は運動そのものよりも仲間いること楽しかったので、大学で入った陸上部では同級生がいなくて寂しかったので辞めちゃいました。

 サッカーを始める以前は水泳をしていたので、陸上部を退部した後はスポーツジムに通い、水泳プログラムで出会った仲間と共に大会に出場するなどをして楽しんでいました。「年齢も性別も異なるメンバーで一緒に楽しい時間を共有する」この時間が好きなのは、ここが原点かもしれません。

 ずっとスポーツを続けていたので、大学では体育学を専攻しました。けれども、それよりもフランス語が楽しくなってしまって、カナダに短期留学に行ったり、日本語を教えるサークルに入ったり、日本語教師養成課程を履修したり、韓国で教育実習をしたり…国際交流の魅力にハマっていきました。

就職活動を機に自己探求からの現実逃避

 就職活動時期は、折しも就職氷河期の真っただ中。自分が何をしたいかもわからず、ただリクルートスーツに身を包み、定型文のような志望動機で面接を受けていました。仙台から格安高速バスで東京に行き、就職試験を受けるも一向に内定がもらえません。まわりは次々と内定をもらっていて、それまで勉強も部活もつまずくことはほとんどなかったので、自信がなくなっていきました。そんな時、従妹から突然、「10月にタイに行くけど、一緒に行かない?」という誘いが…。

 就職も決まらず卒論も未完成のまま、大学4年生の10月にタイに1週間遊びに行くという所業。ハッキリ言って、現実逃避。親にも先生にも「留年していいですか」と言って、タイでダイビングのライセンスを取りながら遊んでいました。

 リュックを背負って初めて訪れた東南アジア。空港を出ると、赤色の街頭にむわっとした空気、そして現地タクシーの呼び込みであふれる人々。「怖い」「絶対騙されるもんか」「怖いと思っていることを悟られちゃいけない」というさまざまな感情が交錯しながら、従妹と合流しました(従妹は先に現地入り)。

 クーラーのない小汚い小さなバス、お湯の出ないシャワー、スプリングが最大限につぶれたベッド、1泊300円のゲストハウス、そして野犬にストリートチルドレン…。これまでに訪れた外国の景色とは全く異なる光景が広がっていました。

「そうだ、大学院へ行こう」
畑違いの国際関係へ。

 約1週間の現実逃避を終えて大学に戻った私は、先生の協力があってなんとか卒論をまとめることができました。旅の経験や国際交流の楽しさを感じられる仕事に就きたいと考えましたが、JICAやNGOなどの国際協力団体に就職するには知識も経験も足りませんでした。だったら学んでからにしよう!と、大学院に進学してからその道に進もうと思いました。

 とはいえ、大学院は普通、大学で学んだ専攻をさらに深めるための場です。国際関係の研究科を受験するには、政治や経済などの専門的な知識が必要です。私は苦手意識から政治や経済の授業を避け続けてきました。だから、そういった試験がなく、小論文や面接などだけで受験できる大学院を探しました。

 いくつかの大学院を検討し、興味を持った教授の著書を読んでいる中で、東京国際大学の下羽友衛ゼミが出版した『私たちが変わる、私たちが変える~環境問題と市民の力~』に出会いました。この本を読んだ時、大学生が世界の貧困問題や環境問題を学び、考え、行動して本を出版するという活動に衝撃を受けました。自分が過ごしてきた大学時代とは全く異なる活動を行っている人々がいることを知り、「このゼミで学びたい」と強く思ったことを今でも覚えています。

幸せって何だろう?
人間がいる意味って何だろう?

 なんとか無事に大学院(国際関係学研究科国際関係学研究専攻)に合格。しかし、私が体験したい学びは学部生のゼミだったので、教授にお願いして3、4年生のゼミにも参加させてもらうことにしました。理論学習、体験学習、発信活動という学びのサイクルを回していくことで、地球市民になるための学び方を実践していきました。

 大学院時代の2年間が今の私の“学び”の原点です。それまで本を読むことが嫌いだったし、世界の問題と自分が置かれている環境がつながっていることを意識したことはありませんでした。

 スタディーツアーでフィリピンの貧困地域に行って最も感じたことは「幸せとは何か?」という問いでした。電気もガスも水道もない、トイレの衛生環境も良くない、毎日お腹いっぱいご飯を食べることができない、ゴミを拾って売って生活をする…それでも子どもたちの目はキラキラと輝いていて笑顔で走り回っていました。教育を受ける機会が少なくても「将来は先生になりたい!」と夢を語る子どもたち。「日本は物質的に豊かになったけれど、精神病や自殺率が高い国になってしまった。経済成長をしたけれど、子どもたちに夢を与えられる社会になっているんだろうか?フィリピンの人たちの方が精神的な幸福を味わっているんじゃないだろうか?」と問いは続くばかり。

 さらに、環境問題のことを考えると「人間がいない方が地球は良くなる」という答えが出てくるし、国際問題のことを考えると「複雑すぎて、解決するには自分の力はあまりにも小さすぎる」という喪失感にさいなまれていました。おそらく、ゼミ生は全員この気持ちに一度はなっているはず。

 でも、そうした気持ちを持ちながら「自分に何ができるか?」を考え続けて少しでもいいから行動すること、それが大事なことだとこのゼミでは学びました。

国際交流って世界平和につながるんだ!

 フィリピンのスタディーツアーで現地の方から聞いた言葉を今でも覚えています。

「私たちはなかなか外国に行くことができないけれど、あなたたちが来てくれることで私たちは外の世界と触れ合い、知ることができる。ありがとう。」

 これまでは現地の問題を解決するために何ができるか、という視点しか持っていなかったけれど、学生として現地を訪れるだけでも彼(女)らにとっては意味のある時間なのだと気づかされました。

 現地の人々が知る日本人は私たちだけであり、彼らは私たちを通して日本という国を見ています。私たちは外国に行くとき、日本という国を背負っていることを自覚しなければいけないな、とも。それは日本で外国の方と接する時でも一緒です。

 文化交流などによる国際平和への要素の総称を、ソフト・パワーと呼びます。それを私の理解で言うと、興味がなかった国でも友達ができればその国に関心が向くし、友達がいる国と自分の国はもちろん仲良くしてほしいと思う心のこと。色々な国の人が交流することで、きっと世界は平和への道を一歩ずつ歩んでいくはず。大学生の時はただ国際交流が楽しいと思っていましたが、大学院で学んだことによって、国際交流が世界平和につながることを学びました。

またもや畑違いの微生物の世界へ。
そこから始まるライター仕事

 大学院1年生の終わりに、所属していたゼミと企業が連携してフィリピンで具体的な農村開発プロジェクトを進める話が持ち上がりました。このプロジェクトは、EMという善玉菌の農業資材を使って現地の農業を活性化させ、貧困解決を目指すという計画でした。プロジェクトを進めるにあたりゼミの卒業生がパイプ役として会社にいた方が良いということで、私がその役割を担うことになりました。(プロジェクトは1年目に恩師の急逝と社長の交代があり、中止。)

 農業という分野は、私にとってまたもや畑違いでした。農業なんてダサイ!と思っていたし、家庭菜園すらしたことがなく、農業や微生物に関する知識は全くありませんでした。しかし、就職した会社の商品について理解する必要性を感じ、本を読んだりベランダ菜園を試みるなどして勉強しました。

 就職2年目にEMの業界誌を発刊することになり、その製作を担当することになりました。農家や環境保護活動家、自然派医師などさまざまな分野の方々を取材し、記事を執筆する中で知識を深めていきました。ライターとしての仕事はこの時から換算すると16年間続いています。

 学生時代に小論文テストがCやDの評価だった私。「そんな私が文章を書くなんて!」と戸惑いつつも、情熱や信念を持った人々の話を聞くことは楽しいし、取材先の魅力を限られた文字数で伝えることはやりがいのある仕事です。

 会社員時代は、微生物が環境問題や健康問題、食糧問題から貧困問題までを解決する可能性を深く学んだ10年間でした。

独立してどっぷり発酵食品の世界へ

 転機が訪れたのは2016年。会社の会議中に、発酵食品を学べる協会があることを知り、東京へ講座を受けに行くことにしました。その講座を受講中に、これまで点で学んできた微生物の知識が一気に線でつながった気持ち良さは今でも鮮明に覚えています。これまで環境や農業、健康と微生物との関わりを知っていましたが、今度は発酵食品そのものの面白さに取りつかれてしまいました。

 当時、世の中は空前の塩麹ブーム。会社のマーケティング戦略でも「EMという微生物を直接伝えるのではなく、発酵の良さを伝えることでEMの良さも知ってもらおう」という方向転換が起き、「暮らしの発酵プロジェクト」がスタート(暮らしの発酵プロジェクトは個人ブログへ)。プロジェクトチームの一員として仕事をしていましたが、発酵食品に関わる活動により深く関わりたいと感じるようになりました。

 そこで、プロジェクトで製作していたフリーペーパー「暮らしの発酵通信」のライターとしての仕事をもらい、会社を退職。無職の期間なしに、晴れて個人事業主としての道を歩むことに。ライターと発酵食品ワークショップ講師の2枚のわらじを履き始めました。

発酵講師デビュー!でも・・・

 それまで会社のイベント司会や発表など人前に立って話すことはあったけれど、自分で企画を立てて募集ページを作って人を集めて講師をして…と一人で講座を開催したことはありませんでした。
「募集をすれば人は集まる」
と安直に考えていましたが、全くそんなことがあるわけもなく、人集めに苦労する日々。
「価格が高いのか?」「募集が魅力的じゃないのかな?」「そもそも経験のない私の話を聞いてくれる人がいるのか?」
など悩んで工夫していくうちに、少しずつ講座に来てくれる方が増えてきました。
今では愛知県内のみならず、神奈川、岐阜、大阪、奈良などにも発酵講座で呼んでいただけるようになりました。「わかりやすく教えてもらえて楽しかった」「塩麹をもっと使ってみたくなりました!」など嬉しい感想をいただいています。

奈良県でのお醤油講座の様子

2017年に発酵の資格を取ってから、今もなお学び続けています。発酵は歴史は古いですが、学問としてはたかだか100年ばかり。技術の進歩によって新しいことがどんどんわかってきます。だからこそ、面白い!
ライターとしても講師としても、「伝える」ための周辺知識をアップデートし続けていたら、いつしか発酵仲間からも質問される側になってきました。

Stay Aichiの事業では、ガイド育成事業の発酵食講座にこれまで得た知識とつながりを活かしていきたいと思っています。

結びつける愛知

 発酵食品の世界を知るまで、両親や友人が遊びに来ても、「愛知県は面白いところないから」と伊勢神宮や白川郷など他県に遊びにいくばかりでした。しかし、発酵食品というフィルターをかけて愛知県を見ると、「こんなに素晴らしい場所は他にない!」と言い切れるほど、歴史が深く、種類が多く、特徴的な食文化の地域だということを知りました。

 今いる愛知県の魅力を教えてもらったこともそうですが、私が発酵食品に最も感謝しているのは、「人とのつながり」です。就職で名古屋に来たことで、それまでの友人関係は仕事関係だけでした。上司や同僚とは仲が良かったけれど、学生時代の友人とは違いがあり、友達と過ごすことが好きな私にとって、どこか寂しさがぬぐえませんでした。

 しかし、独立してからは、共に発酵を学んだ仲間や蔵元とのつながりが増えました。蔵めぐりや醸造家さんの集まりに参加することで新しい知り合いが増え、私の交友関係は菌が爆発的に増殖するように一気に広がりました。

白醤油屋さんのイベントに出店
醸造関係の女性をゲストにしたトークイベント主催

 伝統製法で取り組む蔵元を知れば知るほど、その製法を続ける難しさや後継者問題などが見えてきます。私はかつてNGOやJICAなど外国で世界平和を目指す仕事に憧れていましたが、フィールドと直接的に取り組む課題が異なっても、日本に住んでいる今の自分でも、世界平和に向けた何らかの取り組みができると考えるようになりました。

最後に:愛知の食文化が育む世界平和

 私は、ストーリーのある食材や調味料を囲んで、仲間とわいわいお酒を呑む瞬間が一番好きです。元々料理は好きでしたが、発酵食品を学んだことで料理がさらに楽しくおいしくなりました。

 食べることは生きる上で欠かせない行為。しかし、「毒が盛られているかもしれない」「爆撃に合うかもしれない」といった不安や恐怖、緊張、退屈な時間が食事を苦痛に変えてしまいます。逆に、「明日も生きていける、生きていこう」という安心感がある食事は、私たちにとって生きる糧になります。

 人間にとって、食事は単なる栄養源ではありません。微生物や土壌生物が作物への栄養を作り、農家さんが手塩にかけて育てた作物の命を私たちがいただきます。調味料に至っては、そこには蔵人さんの想いや蔵の菌たちも関わってきます。そして食事を終えたら、皿を洗います。洗剤が川や海に流れ、雨となって再び作物に降り注ぎます。私たちはその大いなる循環の中で食事をしているんです。

 「その土地の歴史や文化、命と想いの循環が込められた食事を中心にした食卓を、様々な国籍の人たちと笑顔で囲んでいる」様子が、私にとって世界平和を表す画です。共に蔵めぐりをして食材に込められたストーリーを分かち合い、酒を酌み交わす。その魅力をちゃんと理解してもらうためには言葉の壁を乗り越えられ、愛知の発酵文化に長けた通訳ガイドさんが必要になります。そんな人を増やしたいと思っています。

 愛知という素晴らしい食文化のあるこの土地で、色んな国の人が愛知を好きになり、色んな国の人と愛知の生産者がつながって、その輪がどんどん広がっていく。世界は愛を知る県から平和になっていく。Stay Aichiで私が実現したいことはそういうことなんです。

世界平和のために、私はみんなと食卓を囲んでお酒を呑みたい。


Stay Aichiは、愛知の発酵と酒をコンテンツにした〈ツアーガイド育成〉と和食のルーツを巡る旅〈ルーツアー〉企画をしています。
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