育ちがよくて育ちがわるい

生まれた家は最悪。親は貶すもの。子供は殴るもの。他人は虐げるもの。そんな価値観を持った人ばかりだった。
母親は祖父母と父親の悪口、祖母は祖父と父母の悪口、みたいなね。みんなが嫌ってた祖父が一番マシだった。孫ができて丸くなったってやつなんだろうけど。

でも育ちは良いほうだと思う。
祖母の再婚相手が経営者でお金持ちだったから良いものを食べさせてもらってたし、いろんなところに連れてってもらって教養やマナーが身についた。
大人に囲まれて生きてきたから、良い部分はたくさん吸収して、悪い部分は他人への警戒心を形成するかたちで役立った。

そもそも実家も由緒でいえばあるほうだと思う。
枠でも触れたことがあるけど、宝永の時点で名字を名乗ってて地域でも偉いほうだったらしい。12代目の私で終わりなのが申し訳ない。

多分、外から見たら「良い家庭」だったと思う。
祖父も祖母も母も持ち家に住んでて、食べ物にもお金にも大して苦労してない。もちろん母親は努めて私を育ててくれたんだろうけど、祖母の再婚相手の会社でゲームしながら働いてたから恵まれた労働環境だったと思う。
んで芸術一家だから個展開いたり作品売ったり、音楽や絵画、書道、陶芸、手芸、園芸といろんなことを教えられて、年に3~6回は展示会とかにも連れて行ってもらってた。
国内外問わず旅行もたくさん行ってアメリカにホームステイさせてもらったりもした。

話だけ聞けば坊ちゃんである。ちょっと地位低めの政治家の子供の生活って言われたら信じそうである。
でもそういう格式高い外での振る舞いに似つかない、家庭内での家族の粗暴な言動はすばらしかった。

外では良い子でいないといけなかった。社長の義理の孫としてあちこち連れまわされた。
静かだねーしっかりしてるねーって言われて嬉しかったし、逆に大人の「子供だから仕方ないか」みたいな目がとても怖かった。
家に帰れば罵詈雑言に暴力。吐くまで食べさせられて吐いたものも食べさせられて、家事をするまで寝たらだめで寝たら起こされて、親がイライラしてたらありとあらゆる虐待を受けた。
書いてて苦しくなってきたしやめよ。

はたから見たら私って、温室育ちのわがまま不良お坊ちゃまって感じなんだろうか。育ちは良いんだもんな。周りからすれば。
そんな環境を捨てて家を出たなんて意味不明だろうなぁ。植物図鑑(有川浩)の樹的な。

私の幼少期を知る大人たちが私を説明するとしたら「良いとこの出で、良い暮らしをしてきて、あの家の子らしくしっかりしてる良い子」「いろいろな重圧に耐えかねて家を出たのかな」みたいに思われてるんだろうか。
実際は暴言暴力に耐えかねて家族を捨てたんだけどね。

知り合いから「私の彼氏すごい家の人なんだけど家庭環境が複雑で家族と縁切ろうとしてるんだよねー」って聞かされてハッとしたので書いてみた次第。
本当にすごい家だとしたらそれはそれで苦労するだろうし、実は劣悪な環境で~ってのも考えられる。
いずれにせよこういう家って箔が大事だから、その家にいる間は外部に言えないことが多すぎるんだよね。及ぶ影響の大きさを考えると怖くて家族ディスなんてできない。

本人が言ってたならいいけど、端から見れば「育ちがいい」「出が良い」ように見えても、それが「良い家庭」なのかは判断できないよーというお話でした。

中途半端な小金持ちの家が一番カスだと私は思いますね。


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