素晴らしきスター・ウォーズの音楽
作曲家ジョン・ウィリアムズ(御歳90)
ジョージ・ルーカスはもともと既存のクラシック音楽をスター・ウォーズに使う予定だったが、ルーカスの親友スティーブン・スピルバーグは彼にジョン・ウィリアムズを紹介した。ウィリアムズはスター・ウォーズのためにクラシック音楽を書き上げ、そのサウンドトラックはのちにAFIによって「史上最高の映画音楽」に選出された。
アカデミー賞受賞5回、グラミー賞受賞25回、ゴールデングローブ賞受賞4回。
ちなみにアカデミー賞はノミネート52回でウォルト・ディズニーに次いで2番目に多い。
↓ジョン・ウィリアムズの家の前でスター・ウォーズを演奏する少年にファンサする本人(されてぇ)
手がけた作品は「スター・ウォーズ」「ハリー・ポッター」「ジュラシック・パーク」「ジョーズ」「E.T.」「ホーム・アローン」「インディー・ジョーンズ」「スーパーマン」など。
スター・ウォーズでの作曲
スター・ウォーズ エピソード4 新たなる希望(1977)
スター・ウォーズ エピソード5 帝国の逆襲(1980)
スター・ウォーズ エピソード6 ジェダイの帰還(1983)
スター・ウォーズ エピソード1 ファントム・メナス(1999)
スター・ウォーズ エピソード2 クローンの攻撃(2002)
スター・ウォーズ エピソード3 シスの復讐(2005)
スター・ウォーズ フォースの覚醒(2015)
スター・ウォーズ 最後のジェダイ(2017)
ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー(2018)テーマ曲「ハン・ソロの冒険」のみ
スター・ウォーズ:ギャラクシーズ・エッジ 交響組曲(2019)
スター・ウォーズ スカイウォーカーの夜明け(2019)
オビ=ワン・ケノービ(2022)テーマ曲「オビ=ワン」のみ
40年以上前に作られたスター・ウォーズにおけるウィリアムズの楽曲が今日まで”史上最高”と言われてきたのには多くの理由がある。口ずさみやすいメロディー、フルオーケストラが奏でる優雅な調声はもちろんのこと、なにより映画界に革新をもたらした張本人であるからだ。
現在のほとんどの映画音楽にはオーケストラが使われている。しかしスター・ウォーズ1作目が製作された時代はシンセサイザーやロックバンドが当たり前だった。ウィリアムズは尊敬する映画音楽家コルンゴルドらが始めた「オーケストラの大編成による映画音楽」を継承し、スター・ウォーズの音楽を作曲した。この時代以降大作の音楽には必ずと言っていいほどオーケストラが使われるようになり、その流れは現在も続いている。
エピソード4/新たなる希望
誰もが知っているメイン・タイトルに加えて、スター・ウォーズファンお好みの「フォースのテーマ」「反乱軍のテーマ」「レイアのテーマ」が作曲された。メイン・タイトルはエピソードごとに若干アレンジが異なる(ティンパニがあったりとか楽器のバランスとか)ので聴き比べてみても面白い。
ベンの死とTIE戦闘機の攻撃
シリーズを通して宇宙戦で使われる反乱軍のテーマ。使い勝手がいいためケヴィン・カイナー作曲の「反乱者たち」のテーマにもアレンジされている。
ベンが死ぬシーンには「レイアのテーマ」が使われており、ライトモチーフ(それぞれのキャラのメロディー)と全く関係ないテーマの使われ方だと言われてきた。でも「オビ=ワン・ケノービ」でレイアとオビ=ワンの友情が描かれたからこれは解釈だな...(本音)
王女レイアのテーマ
スター・ウォーズシリーズで綺麗な曲ランキングを付けるとしたら間違いなく1位。ジョン・ウィリアムズの綺麗な曲はこういうコード進行が多い。たとえば「ハン・ソロとレイア姫」「マリオンのテーマ」など。ちなみにこの曲はコンサートようにウィリアムズ本人がアレンジしたもの。
酒場のバンド
フィグリン・ダンのバンドが演奏するスイング・ジャズ。もともとジョン・ウィリアムズはジャズを学んでいたらしい。
編成の内訳はトランペット、サックス3人(うち1人クラリネット持ち変え)、フェンダーローズピアノ、カリビアン・スチールドラム、様々なパーカッション、アープシンセサイザー。録音後にリバーブをかけて低音域をカットすることで独特の「酒場の安っぽさ」を演出している。
王座の間
フォースのテーマのファンファーレバージョン。
ヤヴィン4のあのシーンにこれ以上にマッチする曲はありえない。
これもまたアレンジ違いが存在し、コンサートバージョンはエピソード3のエンドタイトルに収録されている。個人的にこの曲好きすぎて100万回聞いてます。
エピソード5/帝国の逆襲
ダース・ベイダーのテーマもとい帝国のマーチが誕生した素晴らしい作品。スター・ウォーズってエピソードによって評価二分されたりするけど帝国の逆襲嫌いな人は多分いない。
ヨーダのテーマ
ジョン・ウィリアムズによれば、この曲では「真の知恵の純真さ」が表現されている。
ヨーダのテーマは至ってシンプルな共和音程な曲で、ドとミとソを軸にして若々しく動き回る。
ヨーダが登場する他のエピソード、「クローン・ウォーズ」「ボバ・フェット」などにもこのテーマを使ったアレンジが作曲されている。
ダース・ベイダーのマーチ
多分メインテーマより有名な曲。冒頭ちょっとだけショパンの葬送行進曲のような雰囲気を醸しながらも堂々たる軍隊行進曲として作曲されている。
ショパンの「葬送行進曲」
この曲の影響力については言うまでもないし、この曲関連で調べたら無限に面白いものが出てくるのだが、一旦は真面目で楽典的な話をさせて欲しい。
↓きらきら星を歌うはずだった子どもが急に帝国のマーチを歌い出す
(以下真面目な話)
おそらく、この曲の最も明白な特徴はビートを刻むリズムだろう。
このリズムはダース・ベイダーのテーマに確かな足取りを与え、ベイダーの揺るぎない自信を見事に描き出している。3連符はテーマのほとんどの部分で動機づけされているので、自信に満ちた暗黒の音色は曲全体に貫かれている。
口ずさみやすいメロディーとは何か?
帝国のマーチはその問いに対する明確な答えを教えてくれる。一般的に、譜面に書いてみて歪な動きをするメロディーラインは歌いにくい。帝国のマーチのメロディーラインの動きに大雑把に矢印を付けてみると、全体的に下降していることがわかる。
2段目の冒頭では急に1オクターブの降下と上昇がぶっこまれるが、仕組みは単純で、メロディー(1段目1小節目)の始発点よりも高い位置から落とすとインパクトを与えることができる。「モノはさっきより高い高さから落とした方が面白い」のと同じ感覚だろう。
加えて、2段目1〜3小節目では高さを変えて同じ音のピースが使われている。「繰り返し」というほかのジョン・ウィリアムズのテーマでもよく使われる技法で、それもまた単純だ。聴く側が覚えやすい。
このように、帝国のマーチには”人の覚えやすさ”が濃縮されている。
風呂敷を広げたのにたたみ方が分からなくなったのでこの曲の解説は終わり。
雪の中の戦い
エピソード3のコルサントの戦い、エピソード9のエクセゴルの戦いの曲に並ぶ”戦争”の名曲。ティンパニとピアノの重低音のフレーズの繰り返しが迫り来るAT-ATの重々しさ、細かい音符を刻む木管とパーカッションが逃げ惑う反乱軍、スノースピーダーの強襲を表現している。
決闘
エピソード3のヨーダと皇帝の対決のイメージが強いこの曲だが、初登場は帝国の逆襲。スローテンポのダース・ベイダーのテーマとオクターブを往復する素早いストリングスがいい感じに絶望を醸し出している。後半はランドのテーマ、ハンと王女とテーマがシンフォニックに演奏され、ブラスのブリッジを挟んで再びハンと王女のテーマがかかる。
エピソード6/ジェダイの帰還
ガチファン垂涎の劇中曲がいくつか入っていないためちょっと残念なサウンドトラック。例えばエンドタイトルでは劇中のヴィクトリー・セレブレーションではなくイウォーク・セレブレーションが収録されている。
ルークとレイア
寝れる曲ランキング1位。フレンチホルンのソロからビオラ、オクターブのストリングスと様々な楽器でメロディーが演奏される。それほど有名な曲では無かったが、エピソード8、9とこの曲が登場したため今では知っている人も多い。
ジェダイの帰還
スター・ウォーズのテーマと反乱軍のテーマを組み合わせた王道の名曲。タトゥイーンのジャバとの戦いのシーンでかかる。かかったらテンションあがる。曲の最後、コントラバスの上昇とトランペットのメロディーがかっこよ
帝国軍皇帝
皇帝のテーマは全てマイナーコードで構成されているため、ダース・ベイダーのテーマより曲調が暗い。
ジョン・ウィリアムズ自身もなかなか気に入っているようで、「ファントム・メナス」のオージーの大楽隊シーンではテーマの長調verが、「スカイウォーカーの夜明け」では何度もアレンジ違いが登場する。
森林での闘い
帝国とイウォークの戦いの緊迫感が、ホルンと木管の高音で精巧に表されている。ときどき間に挟まるイウォークのテーマによって気が緩むが、一貫してスピード感のある戦いのテーマとして演奏映えするためコンサートバージョンも作成された。この曲も終わり方がめちゃくちゃいい
エピソード1/ファントム・メナス
アメリカの音楽トレンドの王者ビルボードで3位を獲得した脅威のサウンドトラック。スター・ウォーズに限らず戦いの曲と言えば「運命の闘い」と認知されるほど全世界に影響を与えた。
運命の闘い
この楽曲を作曲するにあたり、ウィリアムズはイギリスの詩論ロバート・グレーヴスの詩論「白い女神」に収められていたケルトの古代詩「樹木の闘い」の一節に注目した。ただし、ウィリアムズはグレーヴスの英訳をそのまま歌詞に用いることをせず、異教的な雰囲気を表現するために元の詩をサンスクリット語に訳した。さらにそのサンスクリット語訳を声楽的に美しく響かせるため、語順や音節を自由に入れ替え、最終的な歌詞を作り上げた。
この曲におけるジョン・ウィリアムズの天才たる所以は、「ファントム・メナス」のストーリーラインを知りこの詩を引っ張ってきたところだろう。”恐るべき闘い”とはもちろんダース・モールとの死闘、すなわち千年ぶりのジェダイとシスの直接対決と見ることができる。となると、”もうひとつの怒り”とは”恐るべき闘い”を背後で操っている存在、すなわちダース・シディアスと解釈できる。隠れているもうひとつの怒り=見えざる脅威(ファントム・メナス)という、ジャンプ漫画家もびっくりな作家性を垣間見せている。
アナキンのテーマ
ジョン・ウィリアムズのアレンジ能力は他に類を見ない。この曲は本編のエンドロールで流れる〈アナキンのテーマ〉のコンサートバージョンだが、23秒あたりの弦楽合奏のテーマは〈ダース・ベイダーのテーマ〉を大胆に変形したものに他ならない。しかも主題の最後の部分は、はっきりわかる形でベイダーのテーマの一節が組み込まれている。その意味するところは改めて説明するまでもないだろう...
この曲は後期ロマン派の語法でオーケストレーションされているため、非常に陶酔的で美しく聴こえるが、アナキンのテーマは12の半音を不安定に並べることで一種の無調音楽(譜面上ではイ長調)として作曲されている。
後期ロマン派の作曲家、ワーグナーの代表作↓
プリクエル三部作の核心は「ダークサイドの支配」。安定した調性の崩壊と不安定な調性の台頭、と考えると素晴らしくも恐ろしい音楽である。
ドロイドの侵攻〜ダース・モールの登場
スター・ウォーズ三大マーチと言えば〈帝国のマーチ〉、〈愛のアリーナ(いわゆるジェダイ聖堂のマーチ)、そしてもうひとつがこの曲だろう。
重々しいC-9979着陸船のエンジン音と1寸狂わぬドロイドの行進がよく表されたこの曲だが、実はエピソード2にも登場する。
しかしその登場はドロイドのためではなく、「オビ=ワンが初めてクローン軍を目にした」シーンに使われた。ドロイドと同じように、クローンは最終的に消耗品として捨てられてしまった。
エピソード2/クローンの攻撃
映画音楽界の”愛のテーマ”として知られているのは「シネマ・パラダイス」の〈愛のテーマ〉と、このサウンドトラックに収録されている〈アクロス・ザ・スターズ〉だ。「クローンの攻撃」の魅力は大方この曲にあるといってもいい
アクロス・ザ・スターズ
この愛のテーマは〈ルークのテーマ〉、すなわちスター・ウォーズのメインタイトルが大きく凝縮され変形されて作曲された。その面影はほぼなく、冒頭の三連符のアルペジオやテーマの運び、語感(リズム)がそれっぽいなーぐらいにしか感じることはできないが、アナキンとパドメの禁じられた恋から生まれるもう1人の選ばれし者を考えれば自然なテーマの流れだろう。残念ながら〈ルークのテーマ〉のように希望や明るさを感じさせる要素はひとつもなく、彼の両親の悲恋の結末を予感させる黄昏色の悲しみに終始覆われている。
〈ドゥークー伯爵との対峙〜フィナーレ〉では壮大なオーケストレーションのアレンジ違いを聴くことができる。
きれいな曲ランキング1位!
コルサントを離れて
スター・ウォーズの日常系BGM。あんまり知っている人はいない隠れた名曲だが、クラリネットの繰り返しのテーマやフルートのフォースのテーマ、壮麗なオクターブストリングスの響きが素晴らしい。スマホゲーム「銀河の英雄」にも使われてた気がする。
野原のピクニック
上の視聴の0:51秒あたりから流れる〈アクロス・ザ・スターズ〉アレンジは個人的に1番すきです。
この曲にも一応主題が登場し、それが〈ナブーの草原のテーマ〉といえる。
エピソード3/シスの復讐
このプリクエル最後のスコアは、おそらくファン全員のお好みのサウンドトラックだろう。〈コルサントの戦い〉、〈英雄たちの戦い〉、〈グリーヴァスのテーマ〉、〈オーダー66〉などアレンジや新たなテーマ曲を含めたシンフォニックな音楽がいくつも紹介されたことに加え、コーラスとブラスによる闇堕ちアナキンの暴力的なテーマが作られた。
たまに「ジェダイ聖堂襲撃のマーチが入ってない!」という人がいるが、クローンの攻撃のサントラ「愛の誓い〜アリーナ」に含まれているから安心してください。この曲をシスの復讐で使うためにEP2では使わなかったならジョージ・ルーカスは天才すぎる。
シスの復讐
いわゆる〈コルサントの戦いのテーマ〉。フォースのテーマが三拍子にアレンジされ、バスドラムとスネアドラムが一定のリズムを刻んでいる。
スローテンポのテーマはコルサントを背景にゆっくりと航行するヴェネター級スター・デストロイヤーを、木管とパーカッションの装飾音符は華麗に飛びまわるアナキンとオビ=ワンのインターセプターを表現している。
英雄たちの戦い
ジョージ・ルーカスは、アナキンとオビ=ワンのために、運命の闘いよりもっと壮大で緊迫した、絶望感に溢れる曲をジョン・ウィリアムズに依頼した。ウィリアムズはムスタファーからコルサントに移り変わる戦闘のアニメーションを見て、ムスタファーでは「英雄たちの戦い」のテーマを、コルサントでは「運命の闘い」を使うことにした。
この曲はあくまでコンサートバージョンであり、映画で実際に流れたのは「アナキンvs.オビ=ワン」、「The Boys Continue(サントラ未収録)」だが、YouTubeではムスタファーとコルサントのシークエンスの完全版を聴くことができる。
この15分のシークエンスは、今までのジョン・ウィリアムズの集大成とも言える。〈アナキンの裏切り(オーダー66のテーマ)〉から始まり、そのまま〈アナキンvsオビ=ワン〉に移行する。一方コルサントでは「帝国の逆襲」で流れたダース・ベイダーのテーマのアレンジ〈決闘〉と共にヨーダが吹き飛ばされ、再びムスタファーで三拍子のテーマが流れる。その後〈英雄たちの戦い〉、〈運命の闘い〉を経て、ベイダーが焼かれるシーンでは〈業火〉が流れる。
この曲のメロディーラインを読み解くと、ド、レ、ミ、ファの4音の限られた音域しか使われていないことがわかる。このことは、アナキンとオビ=ワンの力関係が拮抗し、抜き差しならぬ(ほど音程が動かない)状態に陥っていることを示唆している。
もちろん〈運命の闘い〉と同様、混声合唱を用いているが、特定の歌詞を持たないヴォカリーズ(母音唱法)で歌われる。この楽曲はモーツァルトの〈レクイエム〉、ベートーヴェンの〈第九〉などと同じニ短調で書かれている。西洋クラシック音楽において、ニ短調は死、畏怖、厳粛さを象徴するために用いられることが多く、おそらくウィリアムズもそうした文脈を踏まえた上でニ短調を選択したのだと考えられる。
↓オビ=ワンの対決シーンの音楽(W.ロス氏 作曲)を自分で作曲し直してみたのでよかったら聴いてください。
グリーヴァスとシディアス卿の会談
この試聴では残念ながら冒頭の一番いい部分がないのでぜひホンモノで聴いて欲しいが、何度聴いてもこの曲ほどグリーヴァスにマッチするものはない。実はグリーヴァスというキャラクターは2Dアニメ「クローン大戦」が初登場なのでそれに合わせてジェームズ・L・ヴェナブルが「サイコ」のテーマに類似した音楽を作っていたのだが、EP3の実写には合わなかったためホルンとトロンボーンを軸にしたいわゆる”現在の王道ヴィラン的”音楽がジョン・ウィリアムズによって作られた。
アナキン、闇の所業
この曲も割と有名なので特に言うことがある訳では無いが、EP3後スター・ウォーズの制作側が「オールド・リパブリック」などでこの曲を使ったことで〈暗黒面のテーマ〉として捉えられる節がある。シスの復讐ではコーラスとティンパニを鳴らしながらホルンがメロディーを担当する曲が多い。重低音が迫り来る手法は古くはオペラのヴィランが登場する際に使われたが、ジョン・ウィリアムズはスター・ウォーズに限らずハリー・ポッターなどでも使っている。
エピソード7/フォースの覚醒
アメリカのビルボードチャート200で5位。そもそもマイケル・ジャクソンやテイラー・スウィフトが上位を独占するビルボードでサウンドトラックのくせに5位に登るジョン・ウィリアムズってどうなってんだよ(褒め言葉)
全てのスコアはジョン・ウィリアムズ作曲だが、彼の体力的な面も考慮して、今作ではウィリアム・ロスやグズターボ・ドゥダメルが半数近くの楽曲を指揮し、残りをジョン・ウィリアムズが指揮した。
今作では〈レイのテーマ〉〈カイロ・レンのテーマ〉〈レジスタンスのテーマ〉〈ポーのテーマ〉などが新しく書かれ、特にレイのテーマはYouTubeで1200万再生を超えている。
レイのテーマ
ジョン・ウィリアムズがシークエルで一番好きなキャラクターがレイなわけで、その分スコアが熟考されているように感じる。レイのテーマを反転するとカイロ・レンのテーマになるのは有名だが、熟考とはそれ以上にこれほど壮大なストリングスのテーマがかつてあっただろうかという話になってくる。
木管の導入から始まるピアノ、ハープ、パーカッションで混ぜ合わされたモチーフは、楽器を変えて終始楽曲に登場する。そしてその上からコードの音程をなぞるように、ドリアンモードで構成されたメロディーが流れる。ドリアンモードは、自然短音階の第6音を半音下げた音階のこと。
例えばレイのテーマはニ短調かつDからメロディーが始まるので、DドリアンモードのD-E-F-G-A-B-C-D(レ-ミ-ファ-ソ-ラ-シ-ド-レ)が使われているということになる。
カイロ・レン、戦場に到着
カイロ・レンはスター・ウォーズで最も葛藤するキャラクターの1人だ。その分テーマ曲もいつ崩れるか分からない不安定さを孕んでいる。
ダース・ベイダーのテーマをレンのテーマと同じように移調してみると、モチーフの一節が同じ音の運びになっていることがわかる。けど正直音楽をやっている人からするこういうことは大抵の場合意図せずして起きちゃうのでたぶん偶然。
レジスタンスのマーチ
ダース・ベイダーのテーマは「下がっていくメロディー」だと解説したが、逆にこの曲は楽器を変えながら掛け合いで上がり続けて、いい場所で下がっていく非常に音楽的なマーチだ。雰囲気的にはベートーヴェンの「運命」と言った方が掴みやすい。
ギャラクシーズ・エッジの交響組曲もそうだが、ジョン・ウィリアムズはたまにこういう類のロマン派音楽をやってくる。大好き。
エピソード8/最後のジェダイ
挑戦しすぎてファンの反感を買った問題作だが、音楽に限って言えば素晴らしいテーマのアレンジと新たなモチーフが作曲されている。実際筆者は受験期にこのサウンドトラックを聴いて受かったので、そういう効果があるのかもしれない。
オクトー
ハンス・ジマーが、映画音楽の作曲を「ジョン・ウィリアムズに頼んでくれ」と言うのはこういう部分で出てくる。シーンに完璧な音楽をつけるのがいかに難しいことかは言うまでもないが、「希望を失い隠遁するルーク」でこの曲が書けるジョン・ウィリアムズ...
極秘作戦
ローズのテーマ。エンドタイトルでも登場する今作1番の名曲で、ウィーン・フィルとのコンサートでもこの曲が演奏された。メインタイトルと帝国のマーチとこの曲ってどういう組み合わせだよ。
クレイトの戦い
フォースのテーマ、反乱軍のテーマ、レイのテーマなどがふんだんに盛り込まれたご褒美のような曲。ものすごいジョン・ウィリアムズ色が強い。
エピソード9/スカイウォーカーの夜明け
サーガの締めにふさわしい、過去8作の集大成のようなサウンドトラック。102人編成の大規模なオーケストラ、100人の合唱団で演奏された。
レコーディングの最終日、2019年11月18日にはマーク・ハミル、デイジー・リドリー、スティーブン・スピルバーグなどがスタジオに来てお疲れ様会を開いた。その時マーク・ハミルは身分証を家に忘れてきていたため、スタジオの入口でスピルバーグと間違えられた。
スカイウォーカーの夜明け
今作で何度も登場するテーマ。ヨーダと同じ進行でモチーフが作られているため、神秘的な雰囲気を醸しながらも美しいメロディーを奏でる。ストリングスの重厚な重なり方はアナキンのテーマやアクロス・ザ・スターズを思い起こさせ、同じくクラシカルな手法でオーケストレーションされている。後半部分はホルンの英雄的なモチーフが演奏され、このパートは「フォースと共に」でも登場する。〈スカイウォーカーの夜明け〉のアレンジに関して、YouTubeに全てのバージョンを繋げてメドレーにしていれファンがいるのでぜひ聴き比べて欲しい。
レジスタンスの戦い
ジョン・ウィリアムズ界の王道の戦闘音楽。ポーのテーマ、メインタイトル、フォースのテーマなどを組み合わせて変拍子ながらにのりやすい曲になっていて、後半の三拍子のフォースのテーマでテンションが上がらない人はいない。
再会
個人的にこの曲とエンドタイトルはファンへのプレゼントだと思っている。メインタイトルのアレンジから始まり、フォースのテーマ、ポーのテーマ、ヨーダのテーマ、レイのテーマ、ルークとレイアが流れ、そのまま自然にスカイウォーカーの夜明けのテーマに移行する。さいこう
フィナーレ
聴いたことない人は今すぐ聴いてください
以上
ハン・ソロ/スター・ウォーズ ストーリー
ハン・ソロが制作された2018年、ジョン・ウィリアムズは最後のジェダイの作曲に取り組んでいた。ソロの作曲担当に就いたのは「ヒックとドラゴン」などの壮大な音楽で知られるジョン・パウエルだったが、この作品のメインテーマのみジョン・ウィリアムズが作曲することになった。
ハン・ソロの冒険
ハン・ソロの若々しさを見事に表した英雄的なメインテーマ。歌いやすいモチーフはもちろんのこと、幅広いオーケストレーション、飽きない展開など、ジョン・ウィリアムズの魅力が濃縮されている。昨年のフィルフィルのコンサートではこの曲が初めて日本で演奏された。すごかったです。
オビ=ワン・ケノービ
オビ=ワン
ジョン・ウィリアムズがスター・ウォーズからの引退宣言をして2年後、「オビ=ワン・ケノービ」での彼の帰還がまことしやかに囁かれた。噂は的中し、ウィリアムズはわずか2週間で「オビ=ワン」を書き上げ、実際にそのスコアは気が進まないヒーローによく似合っている。
個人的にはこの曲はルークと同じく「隠遁するジェダイ、オビ=ワン」を表現した作品であるため非常にコンセプトとマッチするとは思うが、ヒロイックなテーマを望んでいたファンがちょっとがっかりする気持ちも多少は分かる。だがそもそもこの作品のコンセプトが暗いのでその手の作曲は難しいところではある
そして残念ながらこの作品の作曲担当のナタリー・ホルトとウィリアム・ロスが安っぽいシンセサイザーとコーラスの音楽を書いてしまいまたそれがシーンに合わないので総合的に残念。
スター・ウォーズに合う機械音楽はルドウィグ・ゴランソン(マンダロリアン作曲家)しか作れないのだろうか
散々言ってしまったがジョン・ウィリアムズの「オビ=ワン」テーマは素晴らしいし、ナタリー・ホルトの「Young Leia」も若々しいストリングスを奏でている。ただしウィリアム・ロス、あんたオビワンのエンドクレジットは凄いいいのに戦いのシーンの曲はなんなんだよ
ギャラクシーズ・エッジ交響組曲
ジョン・ウィリアムズのファンファーレはいつ聞いても耳が幸せですよね
ジョン・ウィリアムズ入院報道があって一時はどうなることかと思ったものの、無事に回復しワールドコンサートをするぐらいまで元気になった。
この曲が出たのは2019年のちょうどそんぐらいの時だったとおもいます
シンフォニックでクラシック色の強いジョン・ウィリアムズのこの曲は、その道のスペシャリストたちによって演奏された。スター・ウォーズにとっては久しぶりのロンドン交響楽団だ。指揮したのはウィリアム・ロス、すてきな作曲家です(手のひら返し)
結局のところ
ジョン・ウィリアムズは神だと思って貰えればそれでいいです。スターウォーズっていい宗教だよほんとに
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?