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「故郷忘じがたく候」

豊臣秀吉による慶長の役(1598)の際に、朝鮮から連れてこられた陶磁職人の話です。当時、薩摩藩に連れてこられたのは17氏70人ほどだったらしいのですが、主人公の14代沈壽官氏は、大正15年生まれの方です。

すでに400年以上も経っているので、沈氏は日本国籍で日本人であることに間違いはないのですが、姓をそのまま維持し、先祖の行っていた陶磁を脈々と受け継いでいたり、昔の朝鮮の祭りごとを残していたりと、驚嘆に値します。

この本の中で、とても印象に残る部分があります。14代沈壽官が1966年に韓国に招かれてソウル大学で講演したときの実話です。

「私には韓国の学生諸君への希望がある、韓国にきてさまざまの若い人に会ったが、若い人のたれもが口をそろえて三十六年間の日本の圧制について語った。もっともであり、そのとおりではあるが、それを言いすぎることは若い韓国にとってどうであろう。言うことはよくても言いすぎるとなると、そのときの心情はすでに後ろむきである。あたらしい国家は前へ前へと進まなければならないというのに、この心情はどうであろう。」

「あなた方が三十六年をいうなら、私は三百七十年をいわねばならない」

拍手は全く起こらなかったようです。その代わりに当時に流行っていた青年歌の大合唱が響きわたったということです。

日韓関係は、なかなか一筋縄ではいかない部分が多くあります。お互いの理解不足に起因していると感じるときも多々ありますが、うえの14代沈壽官の言葉には大変な重みがあります。

より良い未来を次世代に引き継がせるために、我々は常に前向きに進んでいかなければなりません。そのために自分に何ができるのかを改めて真面目に考えるきっかけにもなりました。

現在は、15代が当主になっているようです。

さっそく、福を呼び込むために、沈壽官窯の招き猫を注文してみました。笑

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