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本の諸島を旅するメンバーシップ

銀河に浮かぶ本の諸島。本から本へ、それぞれ1人の漕ぎ手を乗せた小さな小舟がぽつり、ぽつり。灯台守が光を当てれば、またひとつ新しい小島が銀河のどこかでページを開く。

漕ぎ手たちは、開かれた本の小島に上陸してもいいし、しなくてもいい。もしかしたら、在りし日に上陸した記憶が蘇る漕ぎ手もいるのかもしれない。

それぞれの漕ぎ手は、上陸して見つけたものや、島の近辺を周遊して見た景色、その向こうに現れた蜃気楼、思い起こした別の島での体験なんかをしたためてこの銀河諸島海域にそっと放流する。もちろん、静かに通り過ぎるだけの漕ぎ手がいてもいい。

放流されたボトルメールは銀河諸島の中央に立つ灯台島へと流れ着く。灯台守は小瓶を拾い集め、小瓶の中のコトバたちはラジオ放送に乗って海域内に散らばる漕ぎ手たちに届けられる。

頁を開いて読んでいる間、ひとつの世界がそこにあるように感じる。しかし読み終えて本を閉じると、もう世界はどこにもない。そこには字を印刷した紙の束があるばかりだ。もちろんそれはアタリマエのことなのだが、そのアタリマエのことが神秘的に感じられることがたびたびあった。

この神保町にはどれだけの数の「世界」が封じ込められているのだろう。
たとえばこの神保町の書店に入って、一冊の本を手に取り、頁を開いたとたん、特別な時間が流れ出す。それまでは何もなかった空間を言葉が充たして、土地が生まれ、草木が生い茂り、人間が生き始め、そこに世界が現れる。べつの本を手に取れば、またべつの世界が現れるだろう。そのようにして世界は奥行きの知れない密林のように増殖していく。

『熱帯』森見登美彦(文春文庫)

置き手紙もしくはボトルメール式のブッククラブ

小瓶に託すコトバは、きちんとまとまった感想でも気の利いたコメントでも鋭い洞察じゃなくてもいい。
同じ島に上陸した漕ぎ手でも、全く違うところに目を向けていたり、同じところに全く違う印象を持っていることに気付くかもしれない。
そのギャップは他の漕ぎ手に対してだけじゃなく、過去や未来の自分からも発見できたりする。あのときこの島に上陸した私はこんなことを感じていたけど、今の私はまた違うことを感じている。あるいは、上陸するまえの自分と、島の散策を終えて小舟に帰ってきた自分のささやかな(人によってはドラスティックな)変化だとか。

この海域は、本を照らす灯台守は、そして本の諸島は、別に漕ぎ手たちが「学びを得る」ことも、「成長する」ことも、「活発な議論で交流する」ことも求めちゃいない。もちろん、それは読書の楽しい「副産物」だけども、それが「目的」じゃあないってだけで。

賑やかに行き交う商船も、伝令使命を帯びた熱き使節団船も、荒くれ者の海賊もいない穏やかな海域で、漕ぎ手たちは思い思いに遊覧して、メッセージを小瓶に詰めて、ラジオに耳を傾けて、孤独で気楽な遊覧を楽しむ。

驚くべきことに、ぼくらはこの小舟に乗って、はてしなく広がる大洋へと出発することができるのだ。そして大洋にはたくさんの本の島が点在し、島にさしかかるたび、古いともだちや知らない島人たちが、海岸から手を振ってくれる。
その希望に支えられて、ぼくらはこの土地で、この都市で、生きている、生きてゆく。

読書の目的は内容の記憶ではない。そのときその場で本との接合面に生じた一回きりのよろこびを、これからやってくる未来の別のよろこび(読書によるものとはかぎらない、生のいろいろな局面でのよろこび)へとつなげてゆくことだ。

『本は読めないものだから心配するな』管啓次郎(筑摩書房)

私たちはひとりぼっちで、ひとりぼっちだから諸島の旅が自由にできる。
そしてその旅は、私たちがひとりぼっちではないってことを教えてくれる。

ぼくたちはひとりぼっちではないことを知るために読むんだ。

ぼくたちはひとりぼっちだから読むんだ。

ぼくたちは読む、そしてぼくたちはひとりぼっちではない。

ぼくたちはひとりぼっちではないんだよ。

『書店主フィクリーの物語』ガブリエル・ゼヴィン(早川書房)

メンバーシップについて

灯台守 とと子🦝

メンバーシップのオーナー、管理人、本の諸島を旅する漕ぎ手のひとり。

漕ぎ手

この海域の周遊券、メンバーシップ会費は月額300円。これで本の小島を浮かび上がらせる灯台の光源を賄うよ。

本の諸島は遠目でも島影が見えるけど(試し読み公開範囲は、本の基本情報部分)、漕ぎ手たちは灯台守の照らす島の桟橋に舟をつけて上陸も可能。

コメント欄にボトルメールをちゃぽんと落としていけるのは、この海域の周遊券を持つ漕ぎ手のみ。

漕ぎ手は灯台から流れるメンバー限定ラジオを受信することができる。メンバー限定記事にて、stand.fm音声配信の限定公開URLを共有するよ。
ラジオでは、本の小島に流された海の何処かにいる漕ぎ手たちのボトルメールを紹介。

灯台守に照らしてほしい本については、掲示板でリクエストできるよ。小島探索で気になったことを他の漕ぎ手にも尋ねられる掲示板も用意しようかな。

灯台の光が照らす本について

小説、人文書、ノンフィクション、児童書や絵本、学術書から漫画まで、ジャンルにこだわらず。

灯台守が読んだ本、読んだことがある本だけじゃなくて、これから読んでみたい本、リクエストがあった本、どこかで見つけたタイトルの本、つまり「読んでいない本」も現れることになる。漕ぎ手は読まない本の島にもボトルメールを流せるし、読む前と読んだあとでそれぞれ流してもいい。

本の島が新しく生まれる頻度は、ちょっと予測できないんだけど…
灯台守は天敵の襲撃(1歳半&8歳のおちびたち)を躱しつつ海域に繰り出していることを、どうかご了承願いたい…🙏

そういうわけで、銀河に浮かぶ本の諸島海域で一緒に周遊する漕ぎ手を(そのうち)募集開始しようと思う。


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¥300 / 月
このメンバーシップの詳細

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