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町の小さなタイヤ屋さんに救われた話。

本格的な寒さとなり、車のタイヤもスタッドレスに履き替えました。

まだ越してきたばかりで土地勘や情報がなく、車の運転も初心者。

冬になったら冬用タイヤに履き替えるのが一般的という常識は、働き出した職場が山の上にあり、‘この坂道、雪が降ったらどうやって登るのかしら’とふと疑問に思ったことによってやっと得ることができました。

ホイール付きタイヤ4本、決して安くはない買い物なので、出来るだけ安価で良いものがいいという当たり前の考えを同僚に相談すると、町の小さなタイヤ屋さんを紹介してくれました。家からもすごく近い!

大手のタイヤ専門店にかかる仲介料などがなく、型落ちなどもあって、安価だけどタイヤの質は問題ないのだとか。しかし、もう12月も半ばだというのに来店予約は必要なし、多少大丈夫かなと不安な気持ちもありましたが紹介してくれた人もいるので、一応電話でスタッドレスに替えたい・持ち込みではなく買いたいと今から行きます宣言をしてから行ってみました。大丈夫ですよーと良い雰囲気の女性に、‘い、いいんだ。’と人生初のタイヤ交換にドキドキしながら来店。

タイヤ屋さんにはご夫婦と作業員が2名。「初めてなのでお任せします!」と言うと少し笑われながらも予算やこだわりをうまく引き出してくれ、タイヤが決まりました。

交換中は目の前にスーパーがあるので買い出しにでも行くかと思っていたら、そっと丸椅子が目の前に置かれ、どうぞと。そう、ご夫婦とずっと喋ったのです。

話した、じゃなくて、喋った の方がしっくりくる時間。

ご主人は、なぜうちの店に来てくれたのかから始まり、私たち夫婦の職業、家族構成、コロナの時期のこと…最近あまりすんなりと質問して来る人も珍しいなと思いました。

人と話すとき、その人のことをほとんど知らない時は特に、その場が気まずくなったらとか、訳ありだったらとか私は考えすぎてしまう。それは30年少し生きてきて、色々な境遇の人がいるんだと知り、自分も色々大きな声で言えない経験もしてきたからだと思う。(法を犯すようなことはしていませんよ)

聞かれたら、自分は全然答えられるのにね。

とにかく私が話したことに気持ちいいオーバーリアクションで返してくれるご主人に、電話で対応してくれた奥さんがやっぱり良い雰囲気の相槌と小出しの質問。

20分くらいで作業員2人がタイヤを交換してくれ、「またお願いしまーす!」ドキドキしていた人生初のタイヤ交換は終わった。

なんとも清々しい気分。

いつぶりだろう。こんなに気持ちがいい会話をしたのは。

私が引越してきた時期は、コロナによる緊急事態宣言の少し前だった。それから半年以上が経ち、その頃から自分に足りていなかったものが何なのかわかった。足りていないとしっかり自覚もできていなかった。

他愛もないコミュニケーション。

職場では、新しい仕事をこなすのにまだ精一杯で、しっかり会話をすることができていない。そもそもしっかり会話ってなんだ?

相手を知ろうとする。この人は自分のことを知ろうとしてくれている。わかろうとしてくれている。

コミュニケーションによって信頼関係を築くことが、良い仕事につながるのかもしれない。良い仕事が、出世やお金儲けにつながるのかもしれない。タイヤ屋さんだって、次もお願いしますという営業面の考えがあるのかもしれない。

でもタイヤを交換してもらっている20分間のコミュニケーションの目的は、コミュニケーションだった。

そして今の私にとっては、文章に残したいと思うくらい、その出来事に影響を受けた。

コロナが終わっても、コロナがやって来る前の生活にはもう戻らないという。ソーシャルディスタンス、リモートワーク等が生まれた、小さな会話が少なくなり、毎日が色褪せてしまっている人も多い。私のように色褪せていることに気づかない人もいるし、そもそもコロナ前から人と向き合うことには大して興味がなく今みんながそうなったことを逆に心地よいと思う人もいる。

他人とのコミュニケーションは何のためにある?

そんなことは考えない方がいい。

自分と全く同じ人間はいないことを楽しむことができたら、今より楽になる人はたくさんいるんだろう。


母たちを、子どもたちを、私も応援します。