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現代アートを楽しむ

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現代アートは、常識を覆すコンセプトを作品で表現しています。作品がどんなコンセプトで創られたのか、アーティストが作品に込めた思いは何かなど、アートの根幹に関わる記事をまとめます。
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アーティスト、シアスター・ゲイツによるシカゴ再生の軌跡

シカゴの街角に新たな息吹を吹き込む、アーティスト、シアスター・ゲイツの活動を紹介します。1973年、シカゴ生まれのこの多才なアフリカ系アメリカ人アーティストは、陶芸、彫刻から音楽、パフォーマンス、映像まで、幅広い分野でその才能を発揮しています。今回は、彼の地域再生への情熱的な取り組みを、森美術館で開催されている「シアスター・ゲイツ展:アフロ民藝」を通じて紹介します(2024年4月24日〜9月1日)。 シアスター・ゲイツ、地域再生の原点 アイオワ州立大学で都市計画と陶芸を学

五感で「想う」、遊び心が生む自由な発想とイノベーション

87歳にしてなお精力的に作品を創り続けるアーティスト、横尾忠則さん。その創造力の源泉は「遊び心」と「想う」力にあります。ビジネスパーソンもこの力を活かせば、イノベーティブな発想を生み出せるようになります。今回は、「遊び心」と「想う」について考えます。 論理を超えた「想う」力 横尾さんは、頭で「考える」よりも、身体が勝手に描いてくれる、描こうという衝動、「想う」にしたがうことを重視しています。 横尾さんのいう「考える」は論理的思考のこと、これは確かに重要ですが、自由な発想

休館中のBunkamuraが映す、過去と未来の交錯

Tokyo Creative Salonのイベントとして、休館中のBunkamuraを使ったインスタレーションが展示されています。渋谷エリア統括ディレクターの寄本さんに案内していただきました。 Bunkamura吹き抜けには、西野達さんの巨大イスタレーション《ミラーボールファニチャー》が宙吊りになり、ミラーボールとして回転しています。 譜面台、ロッカー、カフェの椅子など、実際に使われてきた什器を組み、東急の社員さんが家族と一緒にミラーを貼り付けたそうです。 かなりの重量の作

8000m峰14座に挑む:興味あるものに徹底的に向き合う

地球上には標高8000mを超える山が14峰あります。この14峰制覇に挑戦している写真家の石川直樹さんの展覧会が、日比谷図書文化館で行われています。今回の記事では、写真家としての石川さんの視点と、興味あるものに徹底的に向き合うことについて紹介します。 ASCENT OF 14:14峰の登頂記録と歴史を並べて展示 石川さんは、昨年秋の時点で13峰の登頂を達成しました。そして、最後の山シシャパンマへのチャレンジ中に、山頂付近で雪崩が起き、他のパーティが巻き込まれるという事態とな

奇想の力で世界を変える!京都のアートシーンにみる創造性

奇想天外な発想が世界を変える力になる、そんなことを感じさせる展覧会が京都で開催されていました。この記事では、スターリング・ルビー、坂本龍一+高谷史郎、塩田千春の展覧会を紹介するとともに、奇想について考えてみます。 幽霊が伝える未来の危機 京都の古い町屋に幽霊が現れました。でも、それは本当の幽霊ではありません。アーティストのスターリング・ルビーが作った幽霊です。彼は、日本や欧米の昔話や伝説に出てくる幽霊をリサーチして、奇抜な世界を表現しました。ラフカディオ・ハーン(小泉八雲

日常の「ハガキ」が彫刻に変わる!アート思考サロン in 代官山 第2回 冨井大裕氏と語る「思考の飛躍:日常から異次元へ」

2023年12月6日(水)、代官山 蔦屋書店のシェアラウンジにおいて、アート思考サロン in 代官山 第2回 冨井大裕氏と語る「思考の飛躍:日常から異次元へ」を開催しました。このサロンは、書籍『イノベーションを創出する「アート思考」の技術』の出版を記念して不定期で開催しています。 アート思考とビジネスパーソンを体験でつなぐ アート思考とは、現代アートのアーティストが作品を制作する際に発揮する思考プロセスと共通しています。アート思考を身につけることで、ビジネスパーソンは、新

受取人のいない手紙を預かる「漂流郵便局」:人の深層心理を洞察して隠れたニーズを掬い上げる

瀬戸内海に粟島という小さな島があります。この島に、受取人のいない郵便を預かる不思議な郵便局があります。その名も「漂流郵便局」。アーティストの久保田沙耶さんが、2013年に、瀬戸内国際芸術祭での作品として制作したものです。 受取人のいない手紙を預かる郵便局 受取人のいない手紙とは、例えば、お子さんを亡くしてしまったお母さんが、亡くなったお子さんに向けて書いた手紙や、10年後の自分に書いた手紙などです。通常の郵便配達では、このような受取人のいない手紙は配達してくれません。しか

冨井大裕さんと日常から異次元を創造する:アート思考サロン第2回を開催します

私たちの身の周りにはモノが溢れています。それらのモノには、私たちの生活を便利にする機能が備わっています。しかし、視点を変えると全く別の姿が見えてきます。アーティストの冨井大裕さんは、既製品に最小限の手を加えることで、それらを固定された意味から解放し、色や形をそなえた造形要素として、「彫刻」のあらたな可能性を模索しています。 冨井大裕さんをお迎えして、アート思考サロン in 代官山 第2回 冨井大裕氏と語る「思考の飛躍:日常から異次元へ」を開催します。 詳細、お申し込みは

「日常の風景から世界を再構築する」:イノベーションフォーラムを開催します

青山学院大学大学院ビジネススクール(ABS)では、2023年度 第1回青山イノベーションフォーラムとして「日常の風景から世界を再構築する」を10月17日(火)18:30より開催します。この記事では、登壇いただくアーティストの毛利悠子さんについて紹介します。 毛利悠子さんによる特別講義 このフォーラムは、私が担当している「イノベーションとアート」の講義を拡大し、特別講師として、現代アートのアーティストであり、東京藝術大学准教授でもある毛利悠子さんをお招きして、グローバル社会

「思い出す」ことと創造性− AKI INOMATA「昨日の空を思い出す」

このコラムでは、AKI INOMATAさんのアート作品「昨日の空を思い出す」から、「思い出す」ことと創造性との関係を考えます。 AKI INOMATA「昨日の空を思い出す」 2023年8月25日から9月16日までMAHO KUBOTA GALLERYで行われていたAKI INOMATAさんの個展「昨日の空を思い出す」。 水を入れたグラスの中に、前日の空に浮かんでいた雲を3Dプリントする作品が展示されていました。3Dプリンタが実際に雲を制作している様子も見ることができます。

「マクドナルドラジオ大学」:難民の姿を伝える革新的なプロジェクト” ーダイヤモンドオンラインに掲載

マクドナルドラジオ大学は、マクドナルドの店舗で難民による講義を提供する革新的なプロジェクトです。このプロジェクトの起源と、そのイノベーションに焦点を当てたストーリーを、ダイヤモンドオンラインに寄稿しました。 2023年4月から9月24日まで、東京・六本木のマクドナルドでは、「マクドナルドラジオ大学」が開催されています。店内に掲示されたQRコードへのアクセスを通じて、ハンバーガーを楽しみながら、建築、生物学、文学からスポーツ科学まで、多彩な講義を受講できます。 このプロジェ

アートから学ぶ捨象された事象への視点

私たちは日々多くの情報に接しています。その中から必要な情報だけを選択し、単純化して理解することは効率的な判断や行動に欠かせません。しかし、その過程で捨象されてしまった事象にも、価値があることを知っていますか? アートは、私たちが見過ごしてしまった事象から新たな発想や感動を生み出す力があります。この記事では、現代美術作家・杉本博司さんの作品《OPTICKS》を例に取りながら、アートから学べる捨象された事象への視点について考えてみましょう。 太陽光は7色からなる - ニュート

ドリフト走行によるアート制作:新たな発見で思いもよらぬ創造を

田村友一郎さんの映像インスタレーション作品《見えざる手》。この作品は、アート制作におけるドリフト走行のようなアプローチを取っており、アーティストも予想していなかった展開をみせます。この記事では、田村さんの作品制作プロセスやその意義について紹介します。 通常、自動車はフェース(前方)を向いて進みますが、ドリフト走行では車両を横滑りさせます。同様に、アート制作においても、最初に思い描いた方向から逸脱し、新たな発見やアイデアを取り入れることで、予想外の作品が生まれることがあります

代官山蔦屋さんとのコラボレーションで現代アートを紹介するショートムービーが登場

このコラムでは、『イノベーション創出を実現する「アート思考」の技術』のプロモーションを目的として、代官山蔦屋さんとのコラボレーションで作成した、現代アートを紹介するショートムービーについて書いています。 現代アートから学ぶ、ビジネスパーソンが持つべき3つの力 私は、多くのビジネスパーソンが直面するイノベーションの課題を解決するために、アート思考を提唱しています。このショートムービーでは、ビジネスパーソンが学ぶべきアーティストたちの3つの力―飛躍力(常識を覆す革新的なコンセ