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2022年12月の星の行方


『ラストダンス』



彼らを追う



残されたわずかな時間。太陽の軌道が日を追うごとに低くなっていく。彼らは大鎌を振り続けた。忌み嫌われようとも積極的に姿を現し、容赦なく斬り捨てた。そのたびに、空気が軽くなっていくのを感じながら。

闇に馴染むローブのあちこちに煌めく破片がつき始めた。踊り舞うごとく大鎌を振るうたびに、銀河が渦巻くように見えた。彼らはその破片の数々を星飛沫ほししぶきと呼んで、払い落とそうとしなかった。北風が落とした木の葉が風に舞うように、彼らの大鎌が落とした鎖が輝きを伴って塵のようにあちこちに散らばった。


人間は誰かに鎖をつけられたり、自ら進んで鎖を巻き付けたりして生きている。その独特の重みや不自由さがあった方が社会に馴染めるから必要だった。特に、意識に巻きつけた鎖は身体にも心にも作用する。そうやって長い鎖を絡ませ、もつれさせれば、みんなと同じように生きていける。それこそが平等であると誰かが言い始めると、その在り方は長らく尊ばれた。それは人類史に残る"お遊戯"だと、地球人以外の誰もが認めていた。

人類は世界終末時計を形に表して、そのカウントダウンを始めた。分刻みで進んでいた時計が秒刻みに変わっても人間の"お遊戯"は続いた。ある銀河の科学者は、意識的な"お遊戯"ではなく、集団幻覚に陥っているのではないかと警鐘を鳴らし始めた。宇宙に息づく多くはその説を信じなかった。ただ、時計の針がじわりじわりと進むにつれてその説を信じるようになった。

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