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2023年6月の星の行方


革命前夜


男たちはいきり立っていた。いつ爆発したっておかしくない燃え盛る思いをずっと胸に秘めていた。我が身を焼き尽くさんとするその思いに苦しめ続けられ、眠れずに歯を食いしばった夜を何日も何ヶ月も過ごしていた。

話に聞けば、男たちがこうして苦しんでいる最中も、豪勢な食事とともに酒盃を交わし、高みの見物をしている連中が何人もいるらしい。特に、自分の決断を正当化し続けるあの忌々しいアイツさえいなければ、今男たちが抱える苦しみはなかった。

いったいどうしてこんなことになってしまったのか。それは誰にもわからない。気がついた時には、あたり一面が焼け野原になっていた。愛着のある家を追われ、逃げ惑う人々の中には、女子供も多くいた。もちろん、逃げ遅れた者も少なくなかった。

思い出したくもないあの日が訪れるまでは、良くも悪くも平穏な日々だった。毎日のようにシャワーを浴びて、2〜3食は好きなものを口にして、必ず一口は香り豊かな酒を含んで、夜はあたたかい寝床で思い悩むことなく目を閉じた。それが幸せだったかどうなのか、あの頃はわからなかった。しかし今は、間違いなく幸せな日々だったと男たちの誰もが確信していた。

男たちは平穏で幸せな日々を取り戻すために、あることを決意した。運が悪ければ命を落とす可能性がある。それでも、男たちは行動を起こさなければならなかった。

明くる日が訪れた時には、全てが元通りになる。男たちはそう考えていた。しかし、思いもよらぬことが起こった。男たちの耳に入ったことは全て嘘だったのだ。男たちは困惑した。今更それが嘘だったと言われても、抱えてきたこの思いはどうすればいいのか。

わめき散らす者、黙り込む者、皆それぞれが抱えた思いを表したが、しばらくすると誰もが途方に暮れた。男たちが信じてきた話がそうではなかったからだ。

もうすぐまた昔のような平穏が訪れるはずだったのに。男たちは何もできなくなった。そうして、ただいたずらに時を過ごすしかなかった。これまでとは違う行き場のない思いを胸に男たちは眠りについた。

明くる日の朝、男たちは鳥のさえずりで目を覚ました。雲ひとつない空は青々としていた。荒れ果てた大地にわずかに残った草花に虫たちが集まって朝日を浴びていた。男たちは外に出た。辺りの様子は特に変わらなかった。しかし、男たちの目に映る物はいつもとは違って見えた。

焼け焦げた瓦礫の下から顔を出すぬいぐるみが笑っているのが見えた。煙の匂いが残るその場に強い風が吹いた。すると一瞬、煙の匂いが感じられなくなり、緑豊かな山々から発せられたかのような新鮮な空気が男たちの体を包んだ。

何も変わっていないはずなのに、何かが変わったような気がした。そのようにして革命が起こった。



宇宙銀行頭取マニーからのご挨拶


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