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『流れ星のゆりかご』 制作秘話 #最終回?


今回からストーリーをネタバレのない範囲でお伝えしようとしましたが、どうもすぐにネタバレにつながりそうなので、もうちょっとだけラッタンや海についてのおはなしを深めてみたいと思います。



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制作秘話 #1でおはなししましたが、マッコウクジラのラッタンに出会ったのは「金曜日の星の坊主さま(通称キンボ)」を執筆している時のことでした。



どういうわけか彼は地上の様子に興味を示していて、地上のそこかしこにアンテナを向けながら、誰かと何かと接点を持とうとしていたように感じました。



2020 / 10 / 30 の星の声」を書こうと星の声を聴き始めた時、星々は何度も「海の底に意識を向けたらいい」と教えてくれました。

その結果、ラッタンを巡る物語が浮かび上がってきたのです。



ラッタンとの響き合いは、ラッタン自身も楽しんでくれているようで、それからというものの交流の機会が頻繁に訪れました。



・話は変わって、2021年3月のこと



水族表現家の二木あいさんや、海と響き合う方々と一緒にぼくは伊豆大島と式根島へ素潜り合宿に出かけました。それと同時に、海の声やラッタンの響きをもっと間近で感じることが目的でした。



素潜りはある程度沖の方まで泳いで行かないと深い海を堪能できません。シュノーケルをくわえて水中の様子を眺めながら浜辺から沖へ向かって泳いで行きます。

色とりどりの小魚の群れが行き交い、たまにエイやフグがこちらの様子に気を配りながら泳いでいる様子を眺めながら、二木さんが素潜りに適したスポットを探してくれました。



そのスポットで、みんな揃って何度も素潜りの練習をした後、ぼくは二木さんに誘われてもう少し沖の方へ出かけることになりました。

もっと深くまで潜る練習を兼ねて沖へ出たのですが、その時、水中で二木さんが指差す方向にウミガメがいました。

海で出くわした守り神の姿に興奮したぼくがシュノーケルをくわえたまま思わず「カメーーーーー!!!」と叫ぶと、ウミガメはこちらにお腹を見せながら方向を転換をして、さらに沖の方に向かって泳いで行きました。



その時、ウミガメから発せられた端的な響きは、合宿後家に帰ってしばらくしてからようやく言語化するに至りました。





「おかえりなさい」





ああ、あのウミガメは出迎えをしてくれたんだなあと納得はしたものの、ぼくは海とそこまでの縁を持っていないのでは、と思ったのですが、そこからまたラッタンとの交流が深まり始めたのです。





・「海の記憶を教えてあげよう」


ある日の昼下がり、午前中の畑仕事を終えたぼくが昼食後にソファの上でののんびりしていると、急にラッタンが話しかけてきました。おもちゃ箱からいろいろなおもちゃを得意気に見せびらかすようにして、様々な「海の記憶」を響きを通じて教えてくれました。追い切れないほどの膨大な量ですぐに感覚がパンクしてしまいそうになるほどでした。

その頃、すでに『流れ星のゆりかご』の執筆が始まっていたので、ぼくはラッタンにお願いをしました。



「せっかくなら、流れ星のゆりかごにまつわる海の記憶が知りたいな」



するとラッタンは、またも得意気に言いました。



「いいよ。それじゃあ、教えてあげよう」



この時、ラッタンが教えてくれた海の記憶は、物語『流れ星のゆりかご』の第3章の光景でした。ラッタンのお父さんはパパタンと言って、海の世界では博識なクジラとして有名な存在のようで、そのパパタンがラッタンに伝えた記憶も含めて、かなりはっきりとした解像度で流れ星のゆりかごに関する情景が浮かび上がりました。

ラッタンが伝えてくれた数々の光景の中で、ぼくにとって特に印象的だったのが、マンネンという名前の亀の存在です。




・亀のマンネン


マンネンはウミガメに比べるとずいぶん小さい亀でした。どうしてマンネンの名前がわかったのかというと、ミヒャエル・エンデの『モモ』に出てくる亀のカシオペイアのように、その小さな亀の甲羅に「マンネン」という文字が浮かび上がって見えた気がしたからです(まぼろしかもしれません)。

はじめのうちはマンネンの頭や足、甲羅の形や尻尾などにフォーカスが当たりました。よく見ると、四本の足にはしっかりと爪があって、穏やかな顔つきでちょっと眠たそうな印象でした。

しばらくすると、少し離れた場所からマンネンを見下ろすような光景になりました。もしかするとマンネンをとらえていたぼくの視界は、ラッタンの視界をそのままうつしたものだったのかもしれません。マンネンに視点が定まったまま、滑らかな動きで不思議な移動の仕方をしたのでそう感じました。

さて、ラッタンの視界にうつる亀のマンネンは一体どこにいたのでしょうか??


ラッタンが教えてくれた「海の記憶」には、亀のマンネンのこともしっかりと刻まれていました。

彼はいったいどこから、どうやって来たのか。彼にマンネンという名前をつけたのは誰なのか。どうして海にいるクジラのラッタンとマンネンが出会ったのか。

そのあたりのことをすみからすみまで描写した物語『流れ星のゆりかご』、実は今回の作品展でお届けするのはスピンオフ作品で、本編はこれまでにぼくが書いてきたさまざまな物語よりもうんと長いです。そして、まだ未完なのです。






・続きは、展示会場にて



物語が一向に書き終わらなかった2021年、うまのはなむけさんとの試行錯誤の日々が続きましたが、ようやく、11月24日水曜日お昼の12時から、作品展『流れ星のゆりかご』が幕開けします。

京都に近い方もそうでない方も、ご興味あればぜひ観にいらしてください。入場料はありませんからどなたでも気軽にご覧いただけます。

ただし、会期中の15時から19時までは予約制です。予約方法はKOUSAGISHA GALLERYさんのお知らせをお確かめください。毎週月曜日と火曜日はお休みです。お間違えないようにご注意くださいね。

会場内で展示されているうまのはなむけさんの作品は、ご購入いただくことができます。ただし抽選制となるため、もしお気に召した作品がありましたら、会場内でお申し込みください。

ぼくは神出鬼没のタイミングで会場に伺い、その日その時の流れで、在廊したりしなかったりをしようと思います。みなみなさまの観覧の邪魔をしないようにできる限り気配を消して存在する予定です。

さあ! これにて、制作秘話は最終回?といたします。

ほんとうはもっともっと秘話があって、少し前まではそれをお伝えする気満々だったのですが、今現在は展示そのものを純粋にお楽しみいただきたい気持ちの方が強いため、さらなる秘話は、会期終盤かもしくは会期終了後のクリスマスプレゼント的に、文字で書くか音声でおはなしするかのどちらかでお伝えしたいと思います。

本展をご覧いただくご予定のあるみなみなさま、どうぞどうぞよろしくお願いいたします。くれぐれもお気をつけてお越しくださいませ。

それではあらためて、11月24日水曜日からKOUSAGISHA GALLERYで始まる作品展『流れ星のゆりかご』、どうぞお楽しみくださいませ!

龍の再来を祝う日々となりますように。




こじょうゆうや

あたたかいサポートのおかげで、のびのびと執筆できております。 よりよい作品を通して、御礼をさせていただきますね。 心からの感謝と愛をぎゅうぎゅう詰めにこめて。