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2024年4月の星の行方


開花師


ある時期になると、開花師かいかしと呼ばれる集団が一斉に外へ出始める。寒々しい風が吹く中、彼らはひとつぼみごとに歩いて回る。一年に一度、この時期だけの特別な仕事だ。

とんとんとん。

「やあ、そろそろ起きたまえよ。今から膨らんでおけばちょうどいい頃合いだ」

「うーん。むにゃむにゃ」

同じ木、同じ株のつぼみでも彼らには彼らの個性があって、えらくせっかちなのもいればのんびりしているのもいる。

開花師たちはつぼみの様子を観察して、さまざまな種類の花のつぼみのひとつひとつの性質を丁寧に見分ける。開花のタイミングができるかぎり揃うように毎日の努力を欠かさない。

ひとつの花が開く際には可愛らしい音が鳴る。似ているものはあれど同じ音はひとつもない。その音が風に乗ってあちこちに響き渡ると、人間やあらゆる生物たちの目覚めの合図となる。


とんとんとん。

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こじょうゆうやが、宝船のような今この瞬間を表現する感性むき出しマガジンです。毎月1日に配信する『星の行方』や、2024年3月からスタートし…

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