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FDAはコロナワクチンの前倒し承認?ワクチン・治療薬の株はどうなる?

投資対象としてすっかり色褪せた感があるコロナワクチン、治療薬銘柄ですが今でも保持している人は多いと思います。これからどんな未来が待っていると想定すべきでしょうか?

先日トランプ大統領が血漿(Blood Plasma)を使ったコロナ治療が、FDAの緊急使用承認を得たと大々的に発表しました(後に効果を過大評価したとFDAが謝罪)。同時にアストラゼネカ製のワクチンを大統領選挙前に認可するようFDAにかけ合っていると報じられています。
前回の記事の続きにもなりますが、ロシアと中国がコロナワクチンの認可に動いたことで事態は風運急を告げてきました。冴えない株価とは対照的にコロナワクチンに関するニュースを見ない日はありません。

現在コロナワクチンや治療薬銘柄の投資家にとって重要な「薬の認可」に関して、3つの軸が同時並行して進んでいると言えます。

1. 医学的な見地からの検証。治験のフェーズ。
2. 政治的な判断からのプロセス。主に国のリーダーの意向。
3. メディアが望むシナリオ。

薬の認可に限ったことではありませんが、コロナについてはこの3つの軸を意識する必要があります。
1は感染症の専門家や医師、学者などが、安全性を慎重に確認するよう重ねて発言しています。これを基準に認可を想定すると最も長くかかるスケジュールになります。
2についてはトランプ大統領が、実績として大統領選挙前に認可して盛り上げたいと意向を示しています。「FDAがワクチンの認可を大統領選挙後に延ばしている」という陰謀論をぶち上げて、FDAと対立しています。要は早めに認可したいという意向です。既に認可しているロシアや中国以外にも、イギリスのボリス・ジョンソン首相が早めの認可を進めているようです。
3のメディアについては、メディアのスタンスにもよりますが問題点を指摘し世論を形成する作用が発生します。つまり持ち上げたり落としたりが起きるので、認可プロセスそのものには影響しなかったとしても、先走り報道してお手つきしたり人々を抗議に駆り立てたりするので、株価には影響が大きくなります。
1しか見ていないと見通しを見誤る可能性があります。

今後の具体的なスケジュール
アメリカのFDAは10月22日に委員会を開いてコロナワクチンの認可に関する審議を予定しています。もしコロナワクチンの結果が出る前に降りるのであれば、それまでに売らないといけません。

と、ここまで書いたところで8月30日日曜日、FDA長官がコロナワクチンに緊急使用承認(EUA)の可能性に言及したという報道が出ました。

この理屈は、アストラゼネカ・オックスフォード陣営が最もワクチンに関して進んでおり、アメリカで行われている各社のフェーズ3の治験は少し時間がかかる。だったらイギリスで行われた治験を元にコロナワクチンを緊急使用で承認してしまおう(おそらくイギリスのボリス・ジョンソン首相と共に)。それで世の中をパッと明るくして大統領選挙にも望みを繋げたいというトランプ政権の意図だと思います。
※ツイッターの一部情報によるとアストラゼネカの治験自体が、承認を進めるためアメリカで中止になっているとも言われています。

先日のロシアのワクチン承認をきっかけに、各国がワクチン使用に傾いているのが分かります。これは国同士のビジネスでもあります。ネットでは医療の専門家が拙速なワクチン認可に批判を展開していますが、個人的にはそれを押し止めるのは難しいと主張してきました。慎重になって薬害を防ぐのは医療的には賢明な判断ですが、いま目の前にある危機、患者には役に立ちません。政治家は向こう数ヶ月の犠牲は切り捨てというわけにはいきませんので可能性があるなら今すぐ手を打ちたい。つまりどちらを選んでも結果的に命の選別をしていることになります。
(FDAを裁判所のような公平で独立した組織であると扱われているフシがありますが、個人的にはあくまで行政側であると考えているため政治的意図に左右されるかと。とりわけ、ヒドロキシクロロキンを承認したりこの「緊急使用承認枠」は曖昧です。なかなか難しいところです。)

さてFDAがワクチン承認を進めた場合、どんなスケジュールが考えられるのでしょうか。10月22日の委員会の前に、アメリカ国内で治験しているモデルナやバイオンテックのワクチンが承認されるとは今はまだ考えられません。FDAも長官が可能性を示唆したに過ぎず、アストラゼネカ製のワクチン認可のスケジュールも示されていません。
よって個人的には経済再開期待以外は「本来10月22日以降に議論になる予定だった、ワクチンの安全性などの国民的議論が前倒しになる」効果だけを期待しています。これは早めに通過しておかないとワクチン接種には辿り着けないためです。

その理由ですが、現時点で他国でアメリカ以上に治験が進んでいるワクチンは、アストラゼネカと中国のワクチンだけです。またトランプ大統領のミエミエのパフォーマンスを、前述したようなメディアが好意的に捉えないと予想します。「トランプ大統領が保身のためにルールを曲げて認可したワクチン」というレッテルを貼られると、ワクチン会社にとっても不利ですから業界も盛り上がりません。残念ながら今はコロナワクチンに関する国民の人気はそこまで無いと考えます。したがい、アストラゼネカワクチンは世の動向を見るための観測気球のような役割を結果的に果たすと予想します。後は経済界の盛り上げ役として利用されるだけなので、イギリスの会社であるアストラゼネカはそこまでのインパクトを残さず、議論が進んだ段階で本番ワクチンの審査に移るのではないでしょうか。

関連株について
株についてはどうでしょう?それは今晩からわかりますが、1つはワクチンの安全性に対する疑問が出てくると同時に、ワクチン販売がリアルになってきます。そして選ばれないと思われる弱小企業のワクチンや治験が遅いところは不利です。ポジティブに捉えるとするとワクチン失敗に賭けているショート勢が少しずつ買い戻すと思うので、売られてきた銘柄の株価はゆっくり戻す可能性はあります。もっとポジティブなシナリオでは7月にあったような「コロナバイオ祭り」が来る可能性もあります(個人的には希望してますが)。

コロナ治療薬についてはどうでしょう?現在、コロナの第二派と共にコロナへの恐怖心自体は落ち着いてきているように思えるため、ワクチンと比べるとインパクトが弱くなります。元々ワクチンが来年以降に出てくるという前提で、それまでの緊急策としても脚光を浴びてきました。しかし今や薬のコストのことが主に取り沙汰されてきています。治療薬が話題になるには「低コスト大量生産可能」か「劇的に回復する」ものが必要です。
そしてもう1つ個人的に重要だと思うのが「後遺症」と「再感染」です。コロナは深刻な後遺症が残ると言われています。そして再感染もあるとのこと。これは大変重要なテーマですがまだ大きなテーマになっていません。ここが注目されることによってもう一度相場が来る可能性があります。

9月からの相場を観察していきたいと思います。

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