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ふたり旅(東京篇)

 先日、東京に行ってきた。恋人と付き合い始めて一年になることを祝うための、二泊三日の旅だった。

【一日目】 東京ディズニーシー

 「東京」と言いつつ、一日目は千葉県浦安市にある東京ディズニーシーをめぐった。僕は今年で25歳になるが、いままでディズニーに縁がなかった。恋人の猛アタックをいい機会だと思ったものの、ディズニー作品にあんまり触れてこなかった自分が楽しめるのだろうか…?そんなふうに不安がる自分がいた。舞浜駅で下車してディズニーリゾートラインに乗り込む。ミッキーの顔を模した窓や吊り革が可愛い。モノレールはどんどん進み、ディズニーリゾートの全貌がみえてくる。やばい。語彙がどんどん溶けて口が開きっぱなしになる。

ディズニーリゾートライン

 僕らはいくつかのアトラクションを経験した。センター・オブ・ジ・アースや「ソアリン」は本当にすばらしかった。平日とはいえ待ち時間はかなりのもので、暑い日差しや立ちっぱなしの足裏が厳しかったけれど、乗った後は不思議と体が軽くなっていた。圧倒され、また乗りたいと語り合った。

レックスのカチューシャを買ったけど、いつのまにかバッグの中へ

 おみやげでも買おうかとぶらぶら歩いていると、僕らは巨大な建物を前にしていた。一見するとパーク内のホテルかと見間違うが、それは「タワー・オブ・テラー」というアトラクションであった。知り合いから「あれはやばい」と脅されていたアトラクション。正直行きたいとは微塵も思ってなかったが、折角来たのだから乗ってみるか!勇気を振りしぼって僕らは進んだ。待ち時間は25分だった。なんで。嘘みたいにスイスイと案内され、気づけば座席の隅っこに腰かけていた。そこから先のことは書きたくない。なんだあれ。だめだろあれは。後から調べたら、僕が乗ったのはまだマシな方だったらしい。嫌すぎる。
 恋人が職場の人からおみやげをおねだりされていたので、それを探すためあちこち歩いていた。日はもうずいぶん傾いている。人々が、僕らの方向とは真反対に進んでいく。夜のパレードが始まるのだ。おみやげを見つけてパレードの会場に向かったが、ちょうどフィナーレの歌が流れ始めるタイミングだった。MISIAの歌はすごくよかった、でもパレードの内容は少しもわからなかった。恋人がパレードが終わった後の夜景を撮影していた(それを撮ってどうする…)。

遠すぎて誰がいたのかもわからず

 そのあとの記憶は朧げで自信がない。揉みくちゃにされながらグッズを買い、揉みくちゃにされながらJRに乗ってホテルに着いた。ほっともっとでお弁当買って食べて、そのまま寝た気がする。

【二日目】 渋谷→浅草

 二日目は東京の街をぶらぶらとした。
 僕は普段、田舎で生活してるので、電車も地下鉄も利用する機会がない。だからちょっと移動するのも一苦労だった。駅はまるで迷宮で、スマホを手がかりにしないと乗り場まで辿り着けはしない。生まれて初めて作ったSuicaで、おそるおそる改札を抜ける。太宰治が『人間失格』の「第一の手記」冒頭で、初めて汽車を見たときのことを書いていたけど、あの「恥ずかしさ」が頭に浮かんだ。
 まず向かったのは渋谷だった。腹ごしらえをするために「人間関係」という喫茶店でお茶をした。珍妙なネーミングとは相反するように店内はおしゃれな雰囲気で、流れている音楽もすごく好みだった(Shazamを使ってめっちゃ調べた)。僕らはサンドイッチとフライドポテトを食べた。

Sam Gendelを聞きながら空腹を満たした

 その足で、僕らはタワーレコード渋谷店を訪れた。一階にはスピッツの巨大なパネルが設けられていた。その近くにはスピッツへのメッセージを募るコーナーがあったので、付箋にしたためて貼り付けた。ついでに新譜のカセットテープを購入。
 二階に移ると星野源さんの特設コーナーがあり、目を見張った。あちこちに星野源のサインがある。そうか、ここはSHIBUYAか…。ようやく都会に来ている感慨がじわじわ滲みはじめた。

星野源関連の商品も並んでて、愛がすごかった

 タワレコに行きたいというのは僕のわがままで、恋人はそれに付き合ってくれているから、あんまり長い時間いるのも申し訳なく思った。レコードをじっくり漁りたかったけれど、そろそろ次の場所へ向かうことにした。
 港区、東京タワーは雨に濡れていた。僕らは落胆を押し殺しながら、入場料を払い、エレベーターに乗り込む。テラスに着き、景色の前に立つ。遠くの方は雨に煙って何もわからない。

また来よう

 浅草、雷門の提灯は雨のためか畳まれていた。仲見世商店街を抜けて、おみくじを引く。吉。「旅行:よい旅になるでしょう」、本当に?
 「つる次郎」というお店でもんじゃを食べた。関西に住んでいると、もんじゃに出会う機会がほとんどない。作り方の見本を基に、ヘラで具材を刻みながら炒め、そこにスープを注ぐ。それを何度か繰り返した後で、生地を薄く広げて焼き目がつくのを待つ。小さなヘラで掬い、ゆっくりと口に運ぶ。正直、よくわからなかった。恋人のほうはおいしいと言っていたが、そもそもこれはもんじゃとして正解なのだろうか。わからないまま平らげた。
 その足で、東京スカイツリーへと向かう。予想はしていたがこちらも「視界不良」。それでもテラスからの夜景は幻想的だった。雨雲がいなくなる瞬間を狙って写真を撮る。いくつもの光の粒が果てまでつづいている。『AKIRA』や『攻殻機動隊』で感じた「近未来」が目の前に広がっていた。

摩天楼からの景色

 まだ小腹が空いていたので、ミニストップでインスタントラーメンとクランキーチキンとお酒を買って帰り、食べたあと気絶するように眠った。

【三日目】 東京駅→羽田空港

 三日目は観光名所はあまり巡らず、おみやげを買うのに時間を注いだ。
 まずは東京駅。周りに現代的なビルがニョキニョキ立ってる中で、赤レンガ駅舎のモダンな雰囲気が異彩を放っていた。お腹が空いたので東京駅構内にある「Depot(デポ)」というお店でハンバーグナポリタンとクリームソーダ、プリンを食べた。ナポリタンは太麺のもちもち感とケチャップの甘酸っぱさが好みだったし、すごく食べ応えがあった。食後のプリンはカラメルが結構苦くて、大人向けだなあと思った(恋人は苦味が得意ではないので、渋い顔をしていた)。

「ハンバーグナポリタン」
「懐かしほろ苦プリン」

 駅の近くに丸善の本店があったので、これまた僕のわがままで寄ってみた。いようと思ったら一日中いれるけど、時間が惜しいので大白小蟹さんの『うみべのストーブ』というマンガを買って外に出た。
 東京駅に戻っていろいろおみやげを探そうと思ったのだけど、結局そこで買ったのは東京ひよ子(中にチョコが入ってるやつ)ぐらいだった。ちいかわショップがあると聞いてちょっと覗いてみたけど、なかなかの行列ができていたので断念した。やっぱりすごい人気だ。
 羽田空港に移り、職場の人や家族のためにおみやげを探した。第一ターミナル、第二ターミナルそれぞれにたくさんのお店が連なっているから、とても全てを回り切ることはできなかった。飛行機の搭乗時刻よりだいぶ早めに荷物を預け、搭乗手続きを済ませた。疲れが溜まっていたのか、飛行機からの夜景を見ることなく、スヤスヤと眠ってしまった。そろそろ着陸態勢に入るというアナウンスで目を覚まし、窓の外を見やると故郷の地味な暗闇が広がっていた。
 恋人の運転で空港を離れ、近くのコメダ珈琲店でお茶をした。三日間ほとんど一緒に過ごしたから別れはしんどかったけど、また会おうとハグをして解散した。家に帰り、シャワーを浴びて布団に潜る。それでもしばらく、頭の中は東京から受けた刺激に支配されていた。

【旅のあとで】

 まず、ツイッターでおすすめの観光スポットを教えてくれた方、時間や距離の関係でまわることができず申し訳ないです。いずれ必ず行ってみるので、ご容赦ください!
 恋人との一年記念での旅行だったけど、ディズニーシーを含め、贅沢な経験をいろいろできたから、ちゃんとしたお祝いになったと思う。恋人がスマホで電車の乗り場を調べてくれたからこそこの旅行は成り立ったし、「あそこに行きたい」と積極的に言ってくれたから、僕もその経験にお供できた。感謝の言葉は恋人に直接伝えているけど、ここにも記しておく。
 旅行の総括として、簡潔にいうと「楽しかった」になる。いろいろツイてない場面があったけど、そこも面白い思い出として印象に残っている(東京タワーに行った二日目は雨だったのに三日目は普通に晴れたのは笑えた)。二泊三日はいろいろ巡れてよかった一方で、疲労がものすごかったので、実は一泊二日ぐらいでちょうどいいのかもしれない。でも、また夏のあたりに旅行行きたいな。海の素敵な街を訪れてみたい。

ありがとう!

 長々とお付き合いいただいてありがとうございました。ではまた!