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この春のドラえもんの敵は、新興宗教。 【レビュー、ネタバレあり】ドラえもん のび太と空の理想郷

ドラえもんの映画を観てきました。

私はドラえもんが大好きです。

先日、保育園後の子どもたち連れて、ドラえもんの映画へ。

ここ1年以上、
ドラえもんチャンネルに登録し、
子どもたちに毎晩2〜3本の短編を見せてドラえもん漬けに。

英才教育の結果、ドラえもん大好きな子どもたちに仕上がりました。

さて、だがしかし、、

今年のドラえもん映画「のび太と空の理想郷」は、

近年稀に見る空振り感。。

今回はなんで空振りに感じてしまったんだろうという、
ちょっとした考察、ただの感想です。

今回のストーリー

初めは、「雲の王国」に近い始まり。でも全然違う。

ドラえもんたちが新興宗教のコミュニティに迷い込んで、

ジャイアンもスネ夫もしずかちゃんもいつの間にか洗脳されていく。

光の中で、3人がパーフェクト小学生に変えられていく。
あのジャイアンが、日を追うごとにどんどん優しくなっていく。

しかしのび太のダメ小学生っぷりは筋金入りで、
そのおかげでみんなが目を覚ます。

「みんな、そのまま、ありのままでいいんだ。」
という、エンディング。

こういうストーリーって、今までのドラえもんの映画には多分なかった。

そういう意味で、今回は非常に異質な内容。

観終わって、僕は違和感だけが残ったし、長男も面白くなかったと。

盛り上がらなさすぎて、彼にしては珍しくグッズ販売にも手を出さなかった。

ということで、朝電車に揺られながら考えてみた。

①つまらない理由

■秘密道具をたくさん使っての夢がない

ドラえもんは基本、無理してローンを組んで買った飛行船しか出さない。

夢がないところを、
キャラクターのコミカルな動きやセリフで補おうしているが、
秘密道具の夢がない喪失感は、そんなことでは全然埋まらない。

秘密道具を使って
こんな楽しい冒険ができちゃう!こんなに遊べちゃう!
というのが、ドラえもん映画の王道。

そのワクワクを序盤に圧倒的に積み上げることで、
夢の後味によって、
後半のシリアスな展開や、
ちょっと大人向けのメッセージや伏線が張られていても、
子どもたちはついて来られる。

■冒険がない

今回の映画は、
ちょっとした未来都市型の新興宗教のコミュニティに迷い込み、
そこに住んでしまう。
そのため冒険ではなくなる。
途中でワクワクが全くなくなる。

■そのパターンは、もう使えない。

序盤で「悪者」と思われてた人たちは実は、
「えぇ!タイムパトロールだったの?!」パターンは、

「のび太の新恐竜」で完璧にやりきってしまっていて、
2回目以降はどうしてもつまらなくなってしまう。

新恐竜の時は、

「ふっふっふ。旧作のび太の恐竜を知ってる保護者の皆さん。この謎の男、恐竜ハンターとか悪者だと思ってたでしょ?じゃーん!実は正義の味方タイムパトロールでした〜!!」

というどんでん返しに加えて、
のび太がまさかの時空犯罪者として
逮捕されそうになっちゃうという展開で、

最高に面白かった。

初回が、とにかく完璧すぎた。

■宗教=洗脳というステレオタイプのイメージを使っていて、気持ち悪い。

この理不尽な、
ままならない世界にどう立ち向かうか。

どう変えて、人々を救えるか。

今回のドラえもんだけでなく、
ONE PIECE FILM REDも、
進撃の巨人とかもこのテーマ。

多分他にもいっぱいあるし、最近加速しているテーマな気がする。

一つの解決策として単純な宗教による心の救いを提示する悪役が出てくるのは、
今回のドラえもんとONE PIECE FILM REDの共通すること。

で、やっぱりそれじゃダメだよね。「世界はそのままで素晴らしいんだから」と、今回はのび太が最後の方に言う。

■「運命」というセリフが、浅い。

ドラえもんは「友情やこころ」を叫びながらも、
自己防衛本能から逃れられないロボットからの攻撃によって虫にされて一旦退場。

ソーニャもアルマゲドン的な自己犠牲で空に散る。

最後、いくつかの偶然が重なって、この2体のロボットが復活した時、

しずかちゃんの「これは運命だったのよ。あるべきところに戻ったのよ」
というセリフ。


ONE PIECEの時も思ったけど、
悪役が解決策として宗教を提示するストーリーは、
ONE PIECEやドラえもんが
元々大前提にしている世界観に向いていない、合っていないように思えて、
違和感しかなかった。

ONE PIECEってそもそも
理不尽で大変な思いをしているキャラが

「ぞれでも私は生ぎたい!!助けて、、ルフィ!!」

「任せろ!!!!!!」じゃん。あれに痺れるんだよ。)

②面白かったところは?

■オープニングのタイムパトロールの場面。

シン・エヴァとか、
シン・ゴジラとかに影響されたような描写で、迫力あった。

■最後の時間トリック(専門用語違うかもしれないけど)

序盤のちょっと謎めいた伏線を、
タイムマシンのトリックで回収する。

ドラえもんでは使い古された、
しかしこれこそ王道パターンの一つ。

これを回収する時の描写が、
セリフで説明するのではなくて瞬間的にこう繋がるでしょという描き方で、
おぉー!ってなった。

③この映画で本当に伝えたかったことは??

つまらんとだけ言っててもなんなので、もうちょっとだけ考えた。

パンフレットも読んでないし、
脚本の人のこともあんま知らないので、
ほんとにただの感想ですけど。。笑

■みんながいい人であろうとすることに意識を高く持つようになった時代への、一つの問題提起。

ネガティブと思われるような個性も、
打ち消しちゃうとこんなにつまらなく、
気持ち悪くなっちゃうぞというメッセージ、、という解釈もできる。

どっちのジャイアンが良い?
 ・もしもYouTuberだったら炎上しかしないだろうスネ夫とジャイアン

 ・丁寧な言葉を使い、のび太を「ゆっくりやればいい」と励まし、自分の食べ物を喜んでシェアするようになるジャイアン。

■だから、あえてのつまらなさを選んだ??

なぜ、出来杉くんをメインキャラクターにできないかは、中の人たちは当然わかってる。

④改めて、ドラえもんの面白さとは。

わかりやすくあまりに凸凹なキャラクターたちと、
「未来の道具だから」という説明のみで
なんでも可能にしちゃういいやつなドラえもんという組み合わせ。

それでもそれぞれのキャラクター性は失われず、
映画の中で彼らが成長したとしても、
それは現実的な「ほんのちょっと」の成長だから楽しいのです。


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