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私とSSJ-「尊厳の回復」という重い課題

皆様、こんにちは。SSJ監事の山崎やよいです。

私は1989年から20年以上、シリアのアレッポで暮らし、シリア人の夫と共に、主に考古学や博物館関係の仕事や活動を行って来ました。夫は残念ながら2012年2月に亡くなり、私自身はそれ以降本拠を東京に移しています。

シリア革命

シリア革命は2011年に始まりましたが、私が日本に戻った後には、政権の市民に対する弾圧がアレッポでも一段と激しくなってきました。民間人地区への激しい攻撃のニュースやそれに伴う治安の悪化の状況は、ほぼ毎日現地の友人がオンタイムで知らせてくれていました。絶え間なく市民の上に投下される「安価」で殺傷力の強い樽爆弾は、人々の尊厳の蹂躙を端的に表していました。

シリア支援

人々の生活はどんどん追い詰められて行き、「緊急支援」の必要な局面がそこここで発生しましたが、同時にこのような苦難の中でも自助努力により生活を立ち直らせようと、様々な試みを始めた人々も存在していました。

「イブラ・ワ・ハイト(針と糸)」 は、そのような現地の人々の意志に突き動かされ、国内外で同じ思いを共有する人々、特に働き手を失った家庭の女性との協働を基本として、2013年5月に活動を開始しました。

「イブラ・ワ・ハイト」は、避難先でシリア人女性達が製作した刺繍などの作品を日本やその他の国で販売し、適正な対価を製作者に還元するという活動です。支援の要素は確かにありますが、それ以上に自活を促し、自己を刺繍などの製品の中で自由に表現する中で、長年蹂躙されてきた「尊厳」を回復することを基本理念としています。

SSJとの出会い

2016年12月、あるつてから「シリア・モナムール」上映会の誘いを受けました。開催日はアレッポが政府軍により掌握された数日後でした。私の中の革命の最後の砦であったアレッポの「陥落」を受け、沈んだ想いで会場に着きましたが、スクリーンに流れる映像は私にとって鑑賞の対象ではあり得ず、シリアの痛みを反芻するのみでした。

上映後、破壊し尽くされたアレッポ市街から逃れたシリア人によるライブ現状報告があり、続いて主催者であるSSJの代表の山田さんが壇上にたたれました。彼は、改革を求めて立ち上がった人々の正義とシリア人の尊厳の保護を、まさしく涙を流して訴えていました。
それは私にとって少なからぬ衝撃でした。

革命勃発以降、シリア情勢に関しては様々な「解説」がなされていましたが、この人々の当然の権利の要求を真正面から捉えたものは極めて稀でしたし、人々の声は時に、情緒的に消費されていました。そのような中で、私は「イブラ・ワ・ハイト」の活動をしていることを免罪符に、この訴えを明確に口に出すことを躊躇していたように思います。

私はシリア人の男性と結婚し、長い間彼の地で暮らしてはいましたが、あくまでステータスは外国人でした。とは言え日常的に見聞する不条理は、外国人の私にさえシリアの奥底に潜む暗闇へのある種の恐怖を植え付けました。一線を越えると「冗談」では済まないことになる、という夫の言葉を今でも思い出します。

しかし、あの上映会以降、「自由と尊厳」の回復を皆に訴え続けるSSJの姿勢は、私の心の中にあった恐怖の鎖も外してくれたように思います。

そして、改めて思い出したのです。2011年に革命が起こった時、私達の世代が恐れていたものを、シリアの特に若い世代の人々は最も簡単に乗り越え、「自由」と「尊厳」を高らかに訴えたことを。弾圧が加えられれば、加えられるほど、これらの要求の正当性が証明されていくようでした。

もちろん、事態は綺麗事ではありません。この中で何十万人もの犠牲者、十万人を越える拘束者、何百万人もの避難民・難民が出ました。
そして革命の基本理念は、国際的な駆け引きの中で問題をすりかえられ、国際的な思惑により不透明に取り扱われ、まさしくシリアは失われつつあります。

その中で、もう一度、人間が当然求めることができるはずのものを、求め、そのために具体的な行動を起こすこと。もしそれが「支援」という名のもとに呼ばれるものであれば、その「支援」の根幹にあるものは、個々の人間の痛みを共有するとともに、原因に分け入ることではないか。

そんなことをSSJの若い人達−日本人とシリア人双方−と確認しつつ、私の人生の最後を歩いていきたいと考えています。

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追記

「イブラ・ワ・ハイト」はSSJの協力を得て、昨年来共同でネットショップを立ち上げ、またさらなるステップアップを計画しています。こちらも、ご声援いただければ幸いです。

イブラ・ワ・ハイト x SSJ ネットショップ

現在NPO法人Stand with Syria JapanはNPO法人設立2周年キャンペーンを実施しています。ぜひ応援していただけたらと思います。

SSJ2周年キャンペーンページ

NPO法人Stand with Syria Japan
Mission:「シリアの人々を独裁体制・権力主義から解放し、民衆と共に自由で民主的な社会を構築すること」
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