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【行政書士試験FIRST STEP】8話 行政法を勉強する前に!


行政法総論、わかりづらくないですか?

 前回は行政書士試験の試験範囲の大枠を解説してきましたが、今回からさらに細分化していき、各科目の大枠について解説していこうと思います。

 まず一回目は行政法。行政法は他の法律と違い、複数の法律が並ぶため試験範囲解説と同じように今度は「行政法の大枠」について解説していくことになります。

 行政法の参考書を眺めていただければわかることなのですが、一般的に行政法を勉強する順番というのは

行政法総論→行政手続法→行政不服審査法→行政事件訴訟法→国家賠償法+地方自治法

 の順番です。これはどこの予備校もどの参考書も同じことだと思います。

 しかし、全ての受験生の気持ちを代弁させていただきたい。

 行政法総論、わかりづらくないですか?

 その理由を以下の図で解説していきたいと思います。

行政法全体図

行政法総論=行政法共通のルール=抽象的である

 なぜ行政法総論から勉強するのが大変なのか、それは行政法における共通のルールを示しているからです。

 行政法共通のルールと聞いて思い浮かべて欲しいのが憲法の存在です。
 憲法は国の最高法規つまり最も高い位置にある法規であり、憲法に違反する法律等は効力を持ちません。

 つまり、法律が守らなければいけないルールを示していると考えます。

 それ故に憲法の条文は広い範囲をカバーするためにあえて具体的な例を挙げずに抽象的に書かれているのです。

 これは行政法総論でも同じことが言えます。

 行政法共通のルールを示すため、参考書に書かれている文面はあえて抽象的に書かれています。

 その結果、具体的なイメージが掴みづらく、わかりづらく感じてしまうのです。

 行政法を一周勉強し終わって、再度行政法総論に戻ってくると

 「あの時のあれはこういう意味だったのか!」

 と理解できるようになるのはそのためです。このことから行政法の勉強は繰り返し勉強することが重要というのが分かると思います。

 極端なことを言うと、最初に勉強する際には行政法総論の部分は眺めておくくらいに留めておいて、どんどん先に進んでしまうくらいのイメージでも大丈夫だと個人的には思っています。

行政書士試験で出題される行政法の全体像を眺めてみましょう。

 再度同じ図を出させていただきます。

行政法全体像

 行政書士試験に出題される範囲の行政法はこれに載っている法律にプラスして地方自治法が加わります。
 
 ※地方自治法は地方自治を行うための運営や規則をまとめているものなので、今回は除外しております。

 図に記載がある法律の中で、行政書士試験受験生が特に勉強することになるのは「行政手続法」「行政不服審査法」「行政事件訴訟法」の三法です。この三つの法律は出題数が多いため、集中的に勉強する必要があります。

 では、これら三つの法律は何のためにあるのか、それを解説していきましょう。

事前救済と事後救済から考える行政法の大枠

 三法の考え方の大枠は国民にとって不都合なことが起きた際の「事前救済」と「事後救済」です。

 国民にとって不都合なことが起こらないようにするルールを定めたのが行政手続法。

 国民にとって不都合なことが起きてしまった際に救済するルールを定めたのが行政不服審査法と行政事件訴訟法です。

 さらにこの事後救済にはお金で解決する国家賠償法と損失補償の制度がくっついてきます。

救済担当の違いから考える行政不服審査法と行政事件訴訟法の違い

 では、同じ事後救済にあたる行政不服審査法と行政事件訴訟法の違いはなんでしょうか。違いについて考えなければならないことは以下の点です。

  1. 救済を担当する場所はどこになるか

  2. 行政からの処分等が違法なのか、不当なのか

  3. 対応の迅速さ

1.救済を担当する場所はどこになるか

 行政不服審査法が救済のために動くのは主に行政庁です。政庁が行った処分等を行政庁が救済に向けて動くということになります。

 一方、行政事件訴訟法では裁判所が救済に向けて動くことになります。

 行政不服審査法はどうしても身内が起こした問題を身内で解決していくというイメージなのでどうしても公正さに問題があるのではないかという疑問が当然に生じます。

 もちろん目的条文に公正な手続きを謳っているため、公正な手続きを保証していることは間違いないのですが、行政事件訴訟法は裁判所で行われるため、こちらの方が公正さについては担保されているというイメージです。

 救済を担当する場所が2つの法律で違うという点で大きな違いです。

2.行政からの処分等が違法なのか、不当なのか

 行政事件訴訟法は裁判所が担当することになるので、行政の処分等が法律に違反していない限り対処できません。

 しかし、行政不服審査法は違法でなくても不当であれば対処できます。

 この場合の不当とは簡単に言うと「法律には違反していないけども、それはあまりにも酷くないですか?」といったイメージです。

3.対応の迅速さ

 行政不服審査法は目的条文において「簡易迅速な手続き」を謳っております。

 行政事件訴訟法は裁判を起こすことになるため、手続きは行政不服審査法に比べると手続きは多くなるため、それだけ時間が掛ることになります。

国家賠償法、損失補償のテーマは「お金で解決しましょう」

 国家賠償法、損失補償のテーマは国民が受けた損害に対して「お金で解決しましょう」ということです。

 では2つの違いはなにかというと、損害を与えた行為が「違法か適法か」ということになります。

 例えば警察官が罪のない一般市民を銃で撃ってケガをさせてしまった場合、これは明らかに違法な行為ですので国家賠償法が適用され、ケガをした方へその損害を国が補償してくれることになります。

 しかし、その地域の人たちの利便性のために広い道路を作ろうと考えたとき、道を塞いでいる民家に立ち退きを依頼することは違法なことでしょうか? 損害を与えていますが、違法ではないので国は強引に民家を立ち退かせます、補償はしません……では困ってしまいますよね。

 そういった適法だけどみんなのために特別の犠牲を払ってくれた人を補償するのが損失補償です。適法な行為に対しての補償なので、補償されるためにはそれなりに高いハードルがあります。

まとめ

  • 行政法総論は行政法全体のルールなので抽象的に書かれていてわかりづらい。一度行政法の範囲全体を勉強することで分かりやすくなってくるので繰り返し勉強することが大事。

  • 行政手続法は国民にとって不都合なことが起きないように、事前に救うための事前救済。

  • 行政不服審査法、行政事件訴訟法、国家賠償法、損失補償は不都合なことが起きた際に救済する事後救済。

  • 行政不服審査法は行政庁が対処する。行政事件訴訟法は裁判所が対処する。

  • 行政事件訴訟法は裁判所が対処するので、違法でなければ対処できない。

  • 行政不服審査法は違法以外にも不当なことにも対処することができる。

  • 国家賠償法は行政の違法行動に対して損害が生じた場合、損失補償は行政の適法な行動に対して特別な犠牲が生じた場合に「お金で解決する」制度のことをいう。

 次回はさらに細分化していきまして、行政手続法の全体像について解説していきます。

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