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hidekのエンジニアと長話 第11-2回【全文書き起こし】~ゲスト:PKSHA 共同創業者 山田尚史氏~

stand.fmで配信中の「hidekのエンジニアと長話」11人目のゲストは、PKSHA Technology 共同創業者の山田尚史さんです。

「hidekのエンジニアと長話」は、メルペイVPoEのhidek(木村秀夫)さんをメインパーソナリティにお招きし、ゲストエンジニアとともに作っていくスペシャルトーク番組です。

第11-2回の今回は、PKSHA Technology 共同創業者の山田尚史さんをお招きして、起業を選んだ経緯や経営者の苦労、プロダクトの抽象度と精度のトレードオフなどについて語りました。

※本記事は、2021年11月26日にstand.fmで配信を開始した番組を書き起こしたものです。

ゲスト
山田尚史 氏 @naofumi0628
株式会社PKSHA Technology 共同創業者

メインパーソナリティ
hidek(木村秀夫)氏 @hidek
株式会社メルペイ VPoE(Vice President of Engineering)

パーソナリティアシスタント
gami(池上)氏 @jumpei_ikegami
株式会社プレイド エンジニア

メーカー志望の学生が起業を選んだ経緯

hidekさん(以下、敬称略):で、ご経験なさって、一般企業に就職せずに「いきなり起業」っていうキャリアを選んだわけですけど。結構、この番組、実はですね、起業家の方が多いんですよ。出てくださった方々。

山田さん(以下、敬称略):はいはい。

hidek:で、いろいろ聞いてるんですけど、結構、十人十色なところがあったりとかして。全然いいんですけど。山田さんがなんで起業を選んだの、っていうのは、ちょっと興味あります。

山田:ありがとうございます。そうですね。これ、結構、話すと驚かれるんですけど。学部3年くらいまで、院に行って大手メーカーに就職しようと思ってたんですよ(笑)。

hidek:あ、そうなんですか(笑)。

山田:東大の工学部だったんですけど。ボリューム層って言ったらあれなんですけど、典型的っていうのかあれですけど、普通にいこうと思ってたんですね。っていうところで、松尾研を選んだっていうのも、「フィクションの中に出てくるAIとかに興味があった」っていうのがもとなんですけど。そこで出会った先輩と、PKSHAの創業者とはまた違う先輩なんですけど、ソーシャルゲームを作った、っていうバイトをしたんですね。ファーストキャリアとして。ファーストキャリアって言っていいのかわからないんですけど、バイトなので。そのときにですね、『怪盗ロワイヤル』とかが流行ってる……。

hidek:あー。

山田:奇しくもDeNAさんと……(笑)。モバゲープラットフォームで、ガラケーでですね。私、Flash Liteの1.1から2.0の時代だったんですけど。はじめてのバイトで、マクロメディアっていう会社がありまして(笑)。

hidek:はいはい。

山田:携帯電話向けFlashの仕様を策定しているところで。仕様というかソフトウェアを開発しているところで。そこの仕様を見ながら、バイナリエディタでFlashをガーって読んで、リトルエンディアンとかビッグエンディアンとかで、「ここからここまでが、このチャンクがデータです」みたいな仕様がいろいろあってですね。

hidek:(笑)。

山田:なるほど、と。「こうやってFlashってできてるのか」みたいなのを解析しながら、最終的に組み合わせ爆発を起こしそうな、装備画像とかのユーザーアバターをPHPからFlash Liteでバイナリ書き出す、っていうライブラリを作ったりしてたんですけど。

hidek:あー。紀平さんってご存知ですか?

山田:いや、お会いしたことないです。

hidek:そうなんですね。まさに、Flash LiteをHTML5に変換するエンジン、変換エンジンを作って。

山田:おー。

hidek:DeNAがそれを買収して、オープンプラットフォームに使っていった、っていう経緯があるんですけど。

山田:そうなんですね。

hidek:はい。話聞いてて、結構近いな、と思いました(笑)。

山田:いや、なつかしいですね。はい。っていう経験をしたんですよね。大学3年のときのバイトで。

hidek:そうなんですね。なるほど。

山田:それで、実際に自分でソーシャルゲームを運営してみてわかったことで、一番、自分の常識を壊されたな……。ま、誤った常識を身につけていてですね。「ものを売る」って、何か資格とかが必要な複雑な行為だと思ってたんですね。「ユーザーにものを売る」っていうのは。たとえば、「そこら辺で露天商って広げていいのかな?」みたいなところから始まって。店っていうものがあって、商取引をするための許可みたいなのがあって、それでものって売ってるのかな、くらいの感覚でいたんですけど。「インターネットでユーザーにデジタルコンテンツを売る」っていう行為って、こんなに簡単なんだ、というのがありまして。

hidek:うん。

山田:で、4人チームで作ってたんですけど。結果、数百万くらい普通に売上があったんですよね。

hidek:はいはい。

山田:ってなると、「あれ、就職ってなんだっけ?」みたいな感じになってきて(笑)。

hidek:(笑)。

山田:「最悪、食いっぱぐれても弁理士の資格あるし、これ、起業って全然選択肢に入るんじゃないの?」みたいな印象を抱いたのが、大学3年のおわりくらい、っていう感じでしたね。

PKSHA創業と経営者の苦労

hidek:へー。なるほどね。で、起業をして、のちにPKSHA Technologyっていう風になっていくとは思うんですけど。私もね、いろいろな経営者の方とお話しさせていただくと、結構孤独というか、いろいろ悩んでらっしゃるなー、と思いつつお話を聞いているんですけど。やっぱり、いろいろ大変だったんじゃないですか?

山田:やっぱり、そうですね。特に、上場がかかってくるところですと、「知ってること100%を話せない会話」っていうのが当たり前になってくるんですよね。

hidek:はいはい。

山田:で、インサイダー情報って、自分だけじゃなくて、仮に漏らしてしまうと相手にも迷惑がすごくかかることですし。そうでなくても、組織の、VPoEやられているとわかると思うんですけど、やっぱり、給与とか評価とか、いやでも入ってしまうじゃないですか?

hidek:はいはい。

山田:そういったことっていうのを相手に悟らせないように、っていうのはあれですけど、伝わらないようにいろいろな会話をする、っていう行為って、二重思考しているような感じが常にあって。

hidek:あー。

山田:今でこそ、「透明性」みたいなことって言われていますけど。だからといって、プライバシーとか法制度がなくなるわけではないので。どうしても、「これ、話していいんだっけ?」って、発言する前に悩むワンステップが常に入る会話、っていうのが、結構、「自意識の乖離」みたいなのにちょっとなってしまっていて。正直、つらい時期はありましたね。

hidek:そうですよね。だって、家族が相手でも、そういう話、気使わなきゃいけないから。

山田:もう、すごくそうですね。

hidek:安らぎの場がない、というか。

山田:そうなんですよね。本当に。そういう意味では、共同創業者が唯一の理解者に近いところで。本当にそうですね。僕が幸いだったのは、あらゆる点で、共同創業者である上野山と利害が対立したことって一度もないと思うので。そういう意味では本当に幸運だったな、と。大きい喧嘩とかも全然ないですし。お金で揉める、みたいなことも本当になかったので。すごく、そこは恵まれているな、と思うんですけど。

hidek:役割分担として、テクノロジーとビジネスみたいな役割分担ですか?

山田:もう、ほぼ完璧にそうです。上野山も松尾研の白書持っているので、全然技術者なのですが(笑)。やっぱり、実装っていう意味では、私がいわゆる技術的な最高責任者っていう立場で、彼がビジネスの最高責任者っていう立場で会社を経営していましたね。

hidek:なるほどね。結構、深層学習黎明期だと、そもそもエンジニアを集めていくだとか、組織を作っていくのってすごく大変だっただろうなー、と思うんですけど。どうやってやってたんですか?

山田:はい(笑)。そうですね。ひとつは、やっぱり、半分狙って半分幸運だったのは、東京大学の中に、最初の方のオフィスって構えてたんですよね。

hidek:なるほど。

山田:それは、企業さんと話す時も大きいですし、学生の身近に身を置く、ってこと自体がすごくメリットあったな、と思っていて。

hidek:なるほどなるほど。

山田:そういう意味で、松尾研からうちに入った人って全然多くないんですけどね。松尾研は、やっぱり、起業を自分でしたがる人が多いので。一国一城の主が非常に多くてですね(笑)。

hidek:あー、なるほどね(笑)。

山田:そうですね。みたいなところがあって。あとは、やっぱり段々、深層学習技術っていうものがいろいろなところで使われていくようになるくらいのころですと、「その技術を持っていても、今いる会社で活かせない人」っていう人が出てきてですね。大学でニューラルネットワークの研究をしていたのに、実際にやるのが、何か、電子機器のファームウェアの実装、みたいな、全然関係ない仕事に従事されている、みたいな人が出てきちゃうんですよね。

hidek:なるほどね。

山田:すべての会社に機械学習の仕事があるか、っていうとそんなことはないので。そうした専門性を持っているのに発揮できないもどかしさですとか。あとは、キャリアを重ねて管理職になってしまったが故に実装ができなくてつらい、みたいな方とかが、我々のことを聞いて来てくれる、っていうのが結構ありまして。そういった、中途って言っていいんですかね、人が多かったですね。組織を構築していくところでは。

hidek:なるほどですね。それこそひとりから始まって、今って何人くらいいらっしゃるんですか?

山田:パッと出てこないんですけど。100はいかないかな、と思うんですけど。50と100の間だと思います。

hidek:なるほどね。でも、短い間にそこまでスペシャリストを集めるって結構大変だな、って思うんですけど。

山田:そうですねー。ある意味、松尾先生自身がすごく有名になられた、っていうところもあって。今でこそ、松尾研のベンチャーって結構いっぱいあると思うんですけど、当時はそんなに数もなかったので、我々にそれで注目してくれる人もいて。なので、アルゴリズムを修めた人でうちを志してくれる人っていうのは、本当にありがたいことにすごく多くてですね。で、逆に、Webみたいな、機械学習でないところをやってきた、専門性を持っているエンジニアもうちには必要なんですけど、あんまり候補に入らなかった、みたいなところが悩みだったりとかしてたんですけど。今もそうですね。悩みです。

役員から技術顧問に

hidek:なるほどですね。ちなみに、今、PKSHAの中ではどういう役割をやってらっしゃるんですか?

山田:私自身、先ほどお伝えしたとおり、「技術フェロー」っていう技術顧問の立場なんですけど。

hidek:なるほどね。うんうん。

山田:もともとやっていたCTOのポジションの部分から、今、社内のVPoEに引き渡した部分とかもありますので、そういったフォローアップをしたり、技術的な相談に乗ったり、みたいなところがメインですね。

hidek:なるほどね。どういう経緯で、今、そういう風に技術フェローに。今まではCTOっていう立場で直接的に関わっていたところを、技術顧問っていう形に役割を変えたのは、何かきっかけとかあったんですか?

山田:そうですね。うん。明確に何かあったわけではないんですけれども。ひとつは、私自身がPKSHAがひとつ目の会社だった、っていうのはあると思っていまして。他の会社を何も知らないまま30歳になった、っていうところがあって。今でも共同創業者では当然あると思うんですが、役員になっていると、「本当に100%自分のすべてを会社に注ぎ込まねば」っていうマインドセットで生きてきたんですね。

hidek:はい。

山田:で、ただ、いろいろな世界があって。今回、マネックスさんにもお声がけ、というか、就任することになりましたけど。より多くの人と関われたり、あるいは、それこそ優秀なエンジニアの方にいろいろなコミュニティとかで会っていく中で、世の中、いろいろな企業とか機会とかがあって、自分もそこを知らない、っていうのは、これから、あるいはもしかしたらPKSHAにまた役員として戻ることっていうのはあるかもしれないんですけど。全然、そういう予定があるとかではなくて、可能性として。あったときにも、何かしら企業価値の向上の還元をしていく、っていう上では、今、ここにとどまるよりも、いろいろなところでいろいろなことをしてみたいな、と思ったし、それが自分の成長にもつながるかな、と思った、っていうところ。あとは、ちょうど任期の切れ目っていうのが去年の末だったので、去年の末っていうタイミングになった、という感じですね。

hidek:なかなか、共同創業者CTOからバトンタッチを受ける方、っていうのも結構大変だな、と思うんですけど。

山田:いやー、めっちゃくちゃ大変でしょうね。他人事ですけど(笑)。

hidek:他人事だ(笑)。でも、そういう方は、もう、いらっしゃったんですね?

山田:います。本当に優秀な人でですね。とか言っちゃうとあれなんですけど(笑)。

hidek:(笑)。

山田:ちょっと名前を出すことはしないですけど、僕は、本当に、彼には何度も支えてもらって感謝していますし、今でも僕以上に役割を発揮してエンジニアを率いてくれていますね。

hidek:なるほどね。なかなかのプレッシャーなんじゃないかな、と思いますけどね(笑)。

山田:とんでもないプレッシャーですよねー(笑)。

hidek:意外とひどいな(笑)。

山田:いえいえ(笑)。

AI SaaS Company

hidek:なるほどですね。そんなPKSHAなんですけど、ちょうど、この収録日の昨日ですかね、決算報告。

山田:そうでしたね。はい。

hidek:その中で、結構「おもしろいな」と個人的に思って見ていたのが、今まで、R&Dというか、というところから、「AI SaaS Companyへのシフト」っていうのを、結構大々的に、ほぼすべてのページにその文言が散りばめられているのね。結構、大きなピボットをしているなー、という風に伺ったんですけど。なんか、その辺の経緯とかって、話せる範囲であったりとかしますか?

山田:わかりました。話せる範囲というか、前提として、私、今、役員ではないので、メッセージングをした立場では全くない、作った立場ではないんですけど。たぶんなんですけど、これ、ピボットとかシフトっていうより、もともとプロダクト比率って、売上比率高いんですけど全然知られていなかったので、「ちゃんと説明した」ってことなんじゃないかな、と思っていまして。

hidek:なるほど。

山田:やっぱり、外から見ると、研究開発とか受託っぽいイメージがあるのかな、と思っていて。アルゴリズムサプライヤーとして起業してですね。モジュールですとか、こういったSaaSみたいなプロダクトで、テイラーメイドの機械学習モデルも当然作るんでけれども、ソフトウェアパッケージとしての価値提供っていうのもしてきたので。

hidek:なるほど。

山田:そういった中で、「プロダクト比率が高まっている」っていうことをちゃんと周りに、これは投資家向けの説明だとは思うんですけれども、私としてはエンジニアの方にもすごく知っていただきたいな、と思っていて。PKSHAって、本当に、異なる専門性が混ざり合うことをよしとする文化なので、非常にオープンマインドですし。さっきもちょっと触れましたけど、「機械学習自体はやったことないよ」っていうエンジニアの方でも、当然、Webですとかそういったところでの専門性をお持ちの方は遺憾なく発揮できる場だとは思うんですよね。

hidek:うんうん。

山田:で、逆に、専門性同士が交差することで、自分への学びっていうのが、当然、お互いに発生するのかな、と。それは、ビジネスドメインに関しても同様だとは思うんですけど。そういったところで、機械学習を今まで触ってこなかったSWE(ソフトウェアエンジニア)の方にもどんどん参加してほしい部分だな、と思いますし、それが伝わる資料で、SaaSって言っているのは非常にいいことだな、と私も見ていて思いましたね。

募集しているエンジニアのスキルセット

hidek:なるほどね。これ、奇しくもですね、前回、ゲストで来ていただいた、LayerXの榎本(mosa)さんも、結構、今、まさにそこの、今まで「ブロックチェーンカンパニー」って言っていたところのブランディングを変える、というところで。この前、福島さんが、ちょっと前になりますけど、そういうメッセージを発表して、「我々、ピボットします」みたいな、わざとそういう言い方をしたりだとか。一方で、ブロックチェーンカンパニーっていうブランディングがあるがゆえに、いわゆるソフトウェアエンジニア、バックエンドエンジニア、フロントエンドエンジニア、そういった専門性を持った人がなかなか入ってくれない、っていうジレンマを抱えてらっしゃって。結構、同じようなフェーズというか、同じような問題・課題を抱えてらっしゃっておもしろいな、と思ったんですけど。でも、「おもしろい」とか言ってる場合じゃないんですよね、きっと(笑)。

山田:結構珍しいパターンなのか、みなさん、本当に、ソフトウェアエンジニアって、今、どこでも求められている人材だとは思うので、「人が足りない」っていうのは本当に共通していると思うんですけど、理由としては、結構珍しい方かもしれないです(笑)。

hidek:そうですね。今、具体的に募集しているエンジニアのスキルセットとかあったりするんですか?

山田:はい。ちょうどホームページを更新したところでして。

hidek:そうですよね。決算発表があったあとに、ちょっといやらしい感じですけど、ストップ高になって、結構、Twitterでも「あ、このタイミングでホームページも変えた」みたいな話をちらほらと。

山田:はい。そうですね。ホームページからもリクルートのところがあって。ジョブディスクリプションの説明もございますので。

hidek:うんうん。どっちかっていうとあれですかね、いわゆるAPI開発をするバックエンドエンジニアとWebフロントエンドですかね?

山田:そうですね。

hidek:Webアプリケーションというよりは。

山田:はい。まさにそういった方々にぜひ来てほしい、っていう状態ですね。

hidek:なるほどね。ちなみに、バックエンドって、使ってる技術って、プログラミング言語って何を使ってるんですか?

山田:はいはい。RailsとPythonが多いですね。

hidek:そうなんですね。

山田:ちょっと、すみません。等価じゃない概念を並べてしまったんですけど。

hidek:いえいえ。

山田:Ruby on RailsでAPIを作るのと、あとは、機械学習ってどうしてもPythonでコードを書くことが多いので、簡単なAPIとかであればlambdaでそのままPythonを書いてしまったりだとか。で、APIゲートウェイをつけて提供している、みたいなことも全然ありますね。

hidek:なるほどですね。じゃあ、ぜひ、これを聞いているオーディエンスのみなさまで、Python・Railsを書ける方がいたら、ぜひ、PKSHA Technologyの方へ(笑)。

山田:よろしくお願いします(笑)。

機械学習系プロダクトの抽象化と精度のトレードオフ

hidek:はい。ありがとうございます。で、一方で、AI SaaSって、とは言うものの、個人的に難しいんじゃないかなー、って。これ、私、AI・マシンラーニングにそんなに詳しい方ではないので、完全に素人質問なんですけど。やっぱり、SaaSにしていくにあたって、より抽象化していった方が、よりいろいろなところに使いやすいじゃないですか。って言ったときに、結構、精度とのトレードオフっていうのが発生するのかな、と思っていて。この辺をプラットフォームとして……。PKSHA Technologyだと、いろいろなパートナーさんがいらっしゃるじゃないですか。で、たぶん、それぞれにモデルって、結構、変えなきゃいけなかったりだとかする一方で、なるべく汎用的なものを提供した方がプラットフォームとしては、たぶん、ROIが高いというか、だと思うんですけど。その辺のトレードオフとか、そもそも発生するのか、発生しているのであればどう解決しているんですか?

山田:なるほどですね。おっしゃるとおりで、当然に発生するものだとは思ってはいます。で、極論、Vision APIみたいな、画像認識一般のAPIって、クラウドベンダー公開されていると思うんですけど。あそこまでいくと、誰でも簡単に使える一方で利用用途は限られてしまう、みたいなことはありますし。

hidek:そうですね。

山田:逆に、一社しか使えないようなテーラーメイドのモデルですと、精度は高いけれども使えるところは限られる、というところなので。逆に言えば、その、適切な制約とそこから生み出せる価値みたいなのの目利きをする、っていうのが、まさにプロダクト設計の妙なんだとは思ってまして。

hidek:なるほどなるほど。

山田:で、あとは、精度の話で言うと、実際に精度自体が問題になることって、体感、そんなになくて。

hidek:ふーん。

山田:やっぱり、「解くべき課題の選定」「業務ドメインへの卓越」みたいなところですとか、ペインポイントって言うんですかね、を本当にちゃんと理解することですとか。あとは、「機械学習があってはじめて実現できるオペレーション」、あるいは、「オペレーショナル・エクセレンスの構築」みたいなことで価値を生み出す方がケースとしては非常に多いな、というところですね。要するに、プロダクトを作る上では、技術のみで完結することってほとんどないので。「ビジネスの視点」っていうのをどれだけ深く入れ込めるか、っていうのはなくてはならない話で。PKSHAは、それがかなり得意な企業なんだろうな、という風には思っています。

hidek:うんうん。なるほどですね。はい。

山田:で、ちょっと付け加えると、論文で、コモディティ化って言ったときにいろいろなコモディティ化があると思うんですけど。技術自体もどんどん広まっていって、後続のエンジニア、若いエンジニアの方って、いろいろなライブラリがある状態でスタートすると思うので、いろいろな技術が当たり前の世界でこれから生きていくとは思うんですけど。やっぱり、論文そのものの実装……。どんどん新しく生まれる技術も、論文の段階で実世界の問題が解ける、っていうケースがほとんどないんですね。

hidek:うん。

山田:あとは、ビジネス上の価値を生むための工夫、っていうのはたくさんあるので。そういったところで差を出せる企業っていうのは、今後も価値を伸ばしていくと思いますし。一方で、前提としては、機械学習技術っていうのは、全体のケイパビリティとしては当然必要なものなので。そこがコモディティ化していくっていうのは、人材の裾野が広がって非常にうれしいことだな、という風に思っています。

hidek:なるほどなるほど。よく、B向けのSaaS、gamiさんもそういうお仕事されていると思うんですけど、B向けのSaaSの難しさって、個別最適をどこまでするのか。で、最大公約数をどこまで守るのか、っていうのは結構難しくて。ただ、PKSHAは、まさにそこが得意というか、そこの設計、ドメインの切り分け、っていうのが、今までの知見とかで溜まってらっしゃってうまい、って感じですよね?

山田:そうですね。たしかに、いや、それ、悩んでましたね。スルッといくやつは本当にスルッといくんですよね。とか言うと怒られちゃうかもしれないんですけど(笑)。

hidek:(笑)。

山田:子会社のひとつでBEDOREっていうものがありまして。自動対話のシステム、コールセンター向けのサービスなんですけど。あれなんかは、カスタマイズとかは、そんなことはほとんどしてないと思うんですけどね。

hidek:ふーん。問題の抽象度を、設定がいい感じになると、たぶんその辺がスッといくんですかね?

山田:おそらくそういうことなんだと思いますね。逆に、やってみて、最初の数社から全然違うリクエストが来て、っていう製品開発も当然経験があるので。たしかに、そういう点はめちゃめちゃわかりますけど(笑)。

hidek:(笑)。

山田:うまくいくと結構うまくいくんだなー、という実感を、逆に今、抱きましたね。

hidek:へー。なるほどですね。結構、PKSHA Technologyのパートナーさんの一覧を見てると、本当に、もう、バラエティ豊かじゃないですか?

山田:そうですね。はい。

hidek:車もあれば。あの辺の、その抽象度の設定っていうのが、すげー難しいんだろうな、と思いつつ。意外と、じゃあ、その辺が強みになってる感じなんですかね?

山田:そうですねー。ですし、実際、バラバラに見えて、実際、バラバラなんですけど。一つひとつに、やっぱり、詳しい人間がいるんですよね。車業界であれば車についてですし、証券とか保険みたいな話であればその業界コードっていうのを抽出して、「どこにどう機械学習を入れれば課題が解決していくか」と、あとは、技術的に不可能なことっていうのは前提にはできないので、それを、エンジニアの方から「こういうことは、こういう形ならできます」っていうのを、ビジネスに活用の形で伝える、っていうコミュニケーション。ここもひとつの専門性の競争みたいなところですけど。そういった場になってるのかな、という風に思いますね。

hidek:うん。

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