hidekのエンジニアと長話 第6-3回【全文書き起こし】~ゲスト:元UUUM CTO BTO (尾藤正人)氏~
stand.fmで配信中の「hidekのエンジニアと長話」6人目のゲストは、元ウノウCTO・元UUUM CTOで現在は技術顧問やエンジェル投資家をされている尾藤正人さんです。
「hidekのエンジニアと長話」は、メルペイVPoEのhidek(木村秀夫)さんをメインパーソナリティにお招きし、ゲストエンジニアとともに作っていくスペシャルトーク番組です。
第6-3回の今回は、元ウノウCTO・元UUUM CTOで現在は技術顧問やエンジェル投資家をされている尾藤正人さんをお招きして、ストックオプションや税制、ファイナンスなどについて語りました。
※本記事は、2021年5月14日にstand.fmで配信を開始した番組を書き起こしたものです。
ゲスト
尾藤正人(BTO)氏 @bto
昔: Vine Linux SPARC版の開発・未踏ユース採択・ウノウCTO・UUUM CTO
今: 技術顧問数社・エンジェル投資数社・未踏ジュニアPM
メインパーソナリティ
hidek(木村秀夫)氏 @hidek
株式会社メルペイ VPoE(Vice President of Engineering)
パーソナリティアシスタント
gami(池上)氏 @jumpei_ikegami
株式会社プレイド エンジニア
ストックオプションの話
hidekさん(以下、敬称略):また話が飛んじゃうんですけど、ツイートを見ていて、「これ、面白えなぁ」と思って見てたんですけど。どっちかというと、エンジェル投資家の目線なのかな。3%ってめちゃくちゃ割合……、たぶんストックオプションの話ですよね? 「取締役クラスでも1%くらいだよ」と。「会社全体で発行できるのは10%で、そのうち3%を分与するってよっぽどだよ」みたいな。たぶん3%で「やりがい搾取だ」みたいなツイートがあったんですよね?
尾藤さん(以下、敬称略):はい。ありました。
hidek:それに対して噛みついてらっしゃったと思うんですけど(笑)。
尾藤:(笑)。
hidek:これ、3%ってすごいですよね!
尾藤:3%はめちゃくちゃすごいです。やりがい搾取どころじゃねぇ割合なので。
hidek:はい。僕ね、調べてみたんですよ、面白かったから。そうしたら、統計情報としては、「上場ベンチャーの従業員上位10名の持ち株比率の平均値は」っていうのがあって、平均値0.34なんですよね。
尾藤:はい。
hidek:あの、上位10名ですよ。しかも。
尾藤:はい。
hidek:3%に至っては、3%以上って本当にほぼいないですね。
尾藤:いないですね。いないですね。僕、だって、メルカリ上場したときに、誰が何株持ってるのかちゃんとチェックしているので(笑)。
hidek:(笑)。うち、結構配ってる方なんじゃないかな?
尾藤:メルカリは相当配ってますね。メルカリってSOで、たしか17%くらい配ってたんですよ。で、それって、スタートアップの中でもめちゃくちゃ割合が多いんですよね。
hidek:はい。報酬制度として、結構、株を使ったものとかもあったりとかして。そこは進太郎さんの意向だとは思うんですけど。
尾藤:そうそう。
hidek:はい。その辺は結構ドラスティックというか、うん、やってますね。
尾藤:ああいうのを見ると、シンって人材の獲得にものすごく重きを置いている、っていうのは感じますね。
hidek:うんうん。もらう方も「株」っていう、この先、自分の……、自分の頑張りだけじゃないんでしょうけど、一定、会社の成長がそこに跳ね返ってくる。やりがいを引き出す、みたいな意味もあると思うので、その辺はうまいなぁ、とか思ったりか。でも、欧米だとみんなそうですよね、基本的にね。
もっとエンジニアの人にお金持ちになってもらいたい
尾藤:そうですね。僕、ずっとスタートアップに関わってきてるんですけど、やっぱりお金の話ってすごく大事なところだと思うんですよ。で、シンプルに言うと、僕は「もっとエンジニアの人にお金持ちになってもらいたい」っていう想いがあって。で、そのためには、お金の知識ってちゃんと持つ必要があって。
hidek:うんうん。
尾藤:やっぱりファイナンスに強い人っていうのは情報を持っているから、自分に有利な条件で交渉できるんですけれども、知識を持っていないとそれができないじゃないですか。
hidek:なるほどね。うん。
尾藤:だから、「スタートアップで働く」っていうことはどういうことなのか、っていうのはちゃんと考えて入ってもらいたくて。この辺って、なかなか学べる機会がないので、理解するのが難しいんですけど。やっぱりスタートアップに関わる人には、しっかりここは学んでほしいな、と個人的には思うんですよね。
hidek:うんうん。僕、前職がDeNAで。で、今、メルカリ、っていう、上場後のメガベンチャーを渡り歩いているんですけど。正直、スタートアップに転職する人って多いんですよね。大体、転職理由の本当に8割くらいが、「スタートアップ」もしくは「起業」みたいな。
尾藤:はい。
hidek:もともと、メルカリとかDeNAに来るような人って、アントレプレナー意識が高い人だとは思うんですけど。
尾藤:はい。
hidek:そのときに、やっぱりスタートアップに転職する理由、自分の裁量の幅が大きくなるっていう、そういう業務的なところもあるんだけど、やっぱり成功したときのアップサイドが大きい、っていうのが、やっぱりそこが、正直、魅力と感じて別に構わないことだと思っていて。
尾藤:はい。そうですそうです。そこは狙いにいかないといけないんで。
hidek:そうですよね。ただ、そこ、やっぱりストックオプションの仕組みとかって、結構、税制含めて難しかったりするじゃないですか。
尾藤:はい。
hidek:その辺がもうちょっと浸透していって、ストックオプションのうまみだとか、というのが伝わっていくといいですよね。
尾藤:そうですねー。だから、みんなにはもっと詳しくなってほしいですよね、個人的には(笑)。
hidek:うん。
尾藤:僕、別にタダで相談乗るから、聞いてくれれば答えるんだけど、とか個人的には思ったりするんですけどね(笑)。
hidek:(笑)。
尾藤:あとは、変な条件に応じる必要もないし、強い条件を出し過ぎるのもよくないので、それはバランスがすごく大事なので、会社のステージと自分のスキルと、そのバランスっていうのがすごく大事なので、やっぱり適切なものをもらってほしいんですよね。
hidek:うんうん。だからこそ「3%がやりがい搾取」って言われると、「いやいや、それは違うよ」と。
尾藤:(笑)。
hidek:すごくよい会社だと思うので、それは後押ししてあげたいと思うし(笑)。ですよね。そこはすごい、聞いていて思いました。はい。
尾藤:うん。
起業前にファイナンスの勉強を
hidek:そういう相談って普通に来ないんですか? なんかわかんないですけど。
尾藤:ストックオプションの話は、正直、来ない、っていうが、僕が個人的にストックオプションもらうとか、そういう話はたまにあったりとかするんですけれども。
hidek:はい。
尾藤:ほかの人がストップオプションもらうからどうのこうの、みたいなのはなくて。
hidek:うんうん。
尾藤:僕の場合は、起業家の方からファイナンス系の話とかしたりとか、そういうのはあったりはしますね。で、エンジニアの中にも起業を目指している人とかもいると思うし、たぶん今後起業していく人もいると思うんですけれども。本当にこれ、声を大にして言いたいのが、会社を作るときにはファイナンスの勉強は本当にやってほしい。
hidek:いや、本当ですよ。
尾藤:ファイナンスって絶対に後戻りができないんですよ。
hidek:うん。
尾藤:絶対に後戻りができなくて、これで失敗してる例って結構いっぱいあって。
hidek:うん。
尾藤:どんなにプロダクトとか事業とかがよくても、ファイナンスで失敗したら取り返しがつかなくて。まあ、システムの失敗って、別に作り直せばおわりじゃないですか?
hidek:はい。
尾藤:ファイナンスの失敗は本当に取り戻せないので、タダで相談に乗るので相談してほしいくらいです、僕は(笑)。
hidek:(笑)。
尾藤:エンジニアの人が、「スタートアップに入りたい」とか「自分で起業したい」とか思っている人がいるんだったら、全然、相談に乗りたいですね。
hidek:そうですか。ぜひ、これを聞いている皆さん、心当たりがある人は尾藤さんまで、「こちらまでどうぞ」っていう(笑)。
尾藤:僕はやりがい搾取とかしないので大丈夫です(笑)。
hidek:(笑)。いや、逆に、技術顧問という立場でいらっしゃったときに、今後、採用のテコとして、たぶん報酬っていうのもあっていいと思うんですよ。
尾藤:はい。
hidek:で、特にスタートアップって、キャッシュフローとかの問題で、なかなか報酬、キャッシュとしてはなかなか難しいと思うんだけど、まさに伝家の宝刀、ストックオプションというのが、たぶんあると思うので。そこがね、もっとうまく見せちゃってもいいのかな、って。技術顧問として。
税制適格のストックオプションとは
尾藤:そうですね。その話で言うと、実はですね、国も制度は整えつつあって。
hidek:ふーん。
尾藤:ストックオプションって、ちょっと税金とかマイナスな話になっちゃうんですけど(笑)。一般的にストックオプションって、税金が50%かかるんですよ。
hidek:はい。
尾藤:普通のストックオプションというのは。で、税金が50%かかると、めちゃめちゃお金が取られるじゃないですか。
hidek:はい。
尾藤:なので、「税制適格ストックオプション」というのがあって。で、「税制適格」に条件があるんですけども、その条件に適合すると税金が20%になるんですよ。
hidek:はい。
尾藤:50%と20%じゃ全然違うじゃないですか。
hidek:はい。
尾藤:ストックオプションの価値が雲泥の差になるんですよ。で、税制適格のストックオプションって、基本的には、社員にしか出せないんですよ。で、社外の人には出せないんですよね。
hidek:はい。
尾藤:で、そうすると、まだ、お金はあまり持っていないスタートアップが外部の優秀な人材を採用しようとしたときに、高い給料を払えないじゃないですか。で、採用できないじゃないですか。
hidek:はい。
尾藤:で、そういうのを解消するために、社員じゃなくても外部の人、外部の手伝ってもらう人に対して、さっき言った、税金が20%になる税制適格のストックオプションを発行できるための例外措置っていうのがあるんですよ。
hidek:へー。
尾藤:で、それは、社外高度人材に対して、税制適格のストックオプションを発行する、っていう話があって。そこには条件がいろいろあるんですけどね。
hidek:うんうん。
尾藤:例えば、「博士号を持っている人」とか「上場企業で役員経験が3年以上ある」とか。で、その中の条件のひとつに「国が認める高度人材発掘プロジェクトに採択された者。例えば『未踏プロジェクト』」っていうのがあるんですよ(笑)。
hidek:なるほどね(笑)。うまくつながってますね。
尾藤:だから、未踏採択者は、外部の人間として、税制適格のストックオプションを発行してもらうことが可能なんですよ。
hidek:なるほどなるほど。そうすると、じゃあ、副業的な関わり方でも……。
尾藤:もらうことができますね。
hidek:会社側としては、さっきの、借りパクじゃないんですけど、顧問だった、副業で来てくれている人に対して、そういうものを渡しつつ取り込む、っていうことが可能ではありますよね。
尾藤:可能ですね。たぶん、社外高度人材の枠組みに入るかどうか、っていうところで。でも、社外の人にストックオプションを発行するって、結構よっぽどなことなので。よっぽどの実績のある方じゃないとなかなか難しいですね。
hidek:でも、ある意味、顧問とか副業の仕方って、自分の時間と対価として株をもらうので、エンジェル投資的な側面も……。
尾藤:そうですね。ストックオプションって正確に言うと株ではないので、投資とはまたちょっと違うんですけど。大きなリターンを得られる可能性がある、っていう意味合いではすごく価値が高いですね。
hidek:会社の成長にベットできるっていう意味で。
尾藤:まあ、そうですね。
hidek:「短期の報酬」という形ではなくて「長期の会社の成長にベットできる」っていう意味では投資っぽくて、面白い働き方かなぁ、と、今聞いてて思いました。はい(笑)。
尾藤:(笑)。
hidek:すごいですね。そこのノウハウをタダで出してもらうとか(笑)。でも、本当に若い人、助かると思いますよ。今、結構……。
尾藤:いやー、でも、この辺ね、本当に難しいんですよー。この辺で、『起業のファイナンス』っていう、結構定番の本があるんですけれども、あれ読んでも正直わかんないんですよね、なかなか。
hidek:うんうん。
尾藤:1回読んだくらいじゃ、あそこに書いてあることってなかなか理解できなくて。
hidek:すごく複雑化しているし、いろいろ抜け穴を作ろうとして複雑化しているのかな、と思いつつ(笑)。
尾藤:(笑)。
hidek:大変ですよね。うんうん。なるほど。
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