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副作用の説明はしっかりするのがいいとは限らない

ある薬の副作用と頻度

不眠9.6%、頭痛7.2%、便秘6.4%、アカシジア(そわそわして落ち着かなくなる)5.6%、下痢5.6%、嘔吐4.8%、悪心4.0%、よだれ2.4%
AMAZE試験より

なんの薬でしょう?
そしてこの薬を飲みたいと思いますか?

 


正解はプラセボ、つまり偽物の薬である。なんの作用もないとされるものでこれだけの副作用がでる。

 

有害事象と副作用の違い

重要なので有害事象と副作用の違いを先に説明しておく。

副作用とは、医薬品との因果関係が否定されない医薬品の使用により生じた有害な反応です。一方、因果関係の有無を問わず、単に医薬品の使用によって生じたあらゆる好ましくない有害な反応を有害事象と呼びます。
日本ジェネリック製薬協会より

簡単に言えば、薬を使用中に起きた悪いことすべては有害事象である。それが薬で起こされたものであろうとなかろうと、症状であろうと全く関係がない。

一方 医師が薬が原因ではないと判断したもの以外が副作用である。「薬が原因ではないと思うけどな~」は副作用と見なされる。有害事象は完全に何でもありである。風邪、癌、統合失調症など目を疑うようなものが並ぶ。誰でも風邪をひくだろうし、薬で癌が起きるなら画期的だし、統合失調症の人に使う薬なのに統合失調症になったって・・・などと突っ込みどころ満載なことが多い。

さらに困ったことに、一般的に薬の副作用として紹介されるものは、医学用語としての副作用ではなく有害事象であることが多く、薬が原因であろうとなかろうと関係がない。


プラセボ(偽物の薬)でこれだけの副作用が出る理由はいくつか考えられる。

1.副作用と症状は区別が難しい

の、副作用と症状の区別が難しいということが大きく影響していると考えられる。

もの忘れ、便秘、口渇、そわそわ、いらいら、めまい、過食など、これらは薬で起きるときもあれば、症状で起きるときもよくある。また薬が無かった時代から、回復過程での体重増加や長期経過でのジスキネジア(体が勝手に動く)は良くあった。薬で起きた副作用なのか、症状なのか区別がつかないまま、多くの症状が副作用として報告され、添付文書に記載されていく。

 

2.副作用は説明すれば説明するほど 起こりやすくなる

臨床研究では事前に十分な副作用の説明が行われる。細かく説明を受けることでちょっとした変化でも敏感に気付き、早めに対処できるようになるというメリットは大きい。しかし精神科で使う薬は、副作用は開始1~2週間後が1番強くその後減少していき、効果は開始1~2週間後から出てくることが多い。

知らなければ、あまり気にしない内に副作用が軽減し消えることは良くある。知っていて意識しすぎることで、知らなければ気が付かなかったことが気になり、副作用に苦しむことが増える。また本当は症状なのに副作用と思い薬を飲むことが怖くなり、飲めずに薬の恩恵を受けれなくなることもある。

事前に十分な副作用の説明することのデメリットも大きい。そして副作用は知れば知るほど怖くなる。


ある薬の副作用

発疹(皮膚にぶつぶつができる)、発赤、かゆみ、悪心、嘔吐、食欲不振、めまい、興奮、けいれん、排尿困難

まれに下記の重篤な症状
ショック:服用後すぐに、じんましん、胸苦しさ、冷や汗、息苦しさ
スティーブンス・ジョンソン症候群:高熱、発疹・発赤、火傷様の水ぶくれ
肝機能障害
間質性肺炎:空咳、息切れ、呼吸困難、発熱
喘息
呼吸抑制

これを読んで、この薬を飲もうと思う人はいるだろうか?

この薬は新ルルAゴールドDX。市販の風邪薬である。他の市販薬も病院で出される薬も様々な副作用がある。副作用がないと主張している民間療法の「薬」は、実質的に何も入っていないか、データーを取っていないかどちらかであって、副作用は当然ある。

 

適切な薬の説明

こういったこともあり、個人的には薬の副作用の説明は以下のようにしている。

1.初めて処方するとき
起こる頻度が極めて高い副作用と対処方法と、可能性は極めて低いもののすぐ対処する必要のある副作用と対処方法だけ説明して、後は薬の説明書を読んでもらうだけにする。

 2.二回目以降
飲んだ感じはどうか?、副作用かもしれないと本人や家族が感じることはないか? を聞き、本人や家族には気付きずらい副作用を確認していく。

 もっと薬の副作用を知りたいという方は薬の説明書を読む、薬剤師に聞く、インターネットで検索すると簡単に調べることができる。しかし、副作用の説明は知れば知るほど怖くなり、添付文書には有害事象ー薬を飲んでいるときに起きたありとあらゆることーが記載されているため、あまり深く調べすぎるのはおすすめしない。


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