統合失調症の維持期での減量方法
「統合失調症治療ガイドラインを読む」の中で紹介したように統合失調症治療ガイドラインでは、
CQ1-4 (初発において)抗精神病薬をいつまで続けるか?
少なくとも1年は続ける
CQ3-1 (維持期において)薬は中止しても良いか?
継続するべき
とされており、基本的に長期間継続するべきである。
維持期の使用量
しかし統合失調症の人が安定した後、いつまで、どの程度の量を使うかはデータがあまりない。
上記ガイドラインでは、
CQ3-4 維持期に減量はどうか?
様々な結果でなんとも言えない。
CQ3-5 2-3日に1回の服用や調子が悪い時だけ服用するのはどうか?
毎日服用が良い。調子が悪い時だけ服用する方法は再発と再入院が高くなる。2-3日に1回 服用する方法は、十分なデータがない。
と微妙な結論である。
統合失調症という同じ病名でもその後の経過は個人差が大きい。ほんの少し減らしただけで再発する人から、早い段階で薬を中止しても一生再発しない人までいる。
統合失調症と一括りされている疾患の中に違う疾患が混ざっているためなのか、脳の回復力・再発防止力に個人差があるためなのか、それ以外の要素が大きいのか分からない。
維持期において
・副作用がなければ同じ量をずっと続ける
・半分くらいまで減らす
・ごく少量まで減らす
・数日に1回服用する
などいろいろな選択肢がある。
臨床的な経験では維持期においては、そんなに多い量は必要なさそうではある。
ただ再発した場合に失うものは大きいので、薬をどこまで減らすか(止めるか)は、最終的には本人と家族の価値観に影響されるしそれを可能な限り尊重するしかない。
減量したときのデータ
抗精神病薬を中止し症状が悪化した際に再開する方法は、予後を悪化させるという報告が多く、再発・再燃させないということは極めて重要である。
リスペリドンやオランザピンの1日1回投与と隔日投与で再発率や精神症状の変化において優位な差はない(Remington G et al. J Clin Psychiatry 72:1042-1048, 2011)ことから、作用時間が長い薬は2日に1回の服用にするという方法は有力である。
一方減量によるリスクは研究がまだ少ない。3/4程度の減量は同じ量の継続と再発率・再燃率で差がない一方で、1/2程度の減量は同じ量の継続と差があるという結果と差がないという結果の両方がある。
当面の考え方
減量や間欠的投与についてはデータが不十分であるものの、以下の方法は有力である。
・2-3年以上安定した後に、ゆっくりと2/3まで減らす。1/2までの減量は極めて慎重にしたほうが良い
・それでも安定していれば、リスペリドン・オランザピン・アリピプラゾールなどの半減期の長い薬は2日に1回の服用にする
しかしこの方法で再発する人は確実に存在することは重要であり、それ以上の減量や中止はやめておいた方が良い。
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