毎日薬を飲むということ 自分の場合


「薬を飲み忘れない方法」の中で、薬を飲むということは精神科治療、特に外来治療において最も重要なことである。私がLAIを強く勧める最大の理由は、私自身が薬を定期的に飲むことができないからである、と書いた。

自分の服用率60%

現在 私自身が生活習慣病のため毎日 夕食後に薬を飲んでいる。規則正しく飲むということはかなり難しい。

普段の診察で「毎日飲んでください」「ちゃんと飲んでます?」と聞くことは多いものの、いざ自分がするのは予想していた以上に難しい。30日分の薬をもらい、薬が無くなるのが50日後。服用率60%で、大体3日に1回の割合で忘れている。これでも比較的良い方で、服用率が40-50%になることも良くあり血液検査前になると服用率が上がっていく。病院受診1週間前になるとしっかり服用するようになる自分の担当患者と同じである。

飲んだと思っている

一番 驚いたのが、自分の印象では飲み忘れたのは10回程度と思っていても、実際は20回飲み忘れていることが良くあるということである。

時々「毎日 しっかり飲んでいます。薬が無くなったので来ました」と、4週間分の処方しかしていないのに、5週間後に来る人がいる。

「毎日飲んでいる」「大体飲んでいる」という発言は、嘘を言っているのではなく、自分としては「毎日飲んでいる」と思っているものの、実際は飲み忘れることが時々あり、飲み忘れたことを自覚していないという可能性がある。

毎日確実に飲めるというのは、極めて難しいことであり、逆に言えば時々は薬を飲み忘れても安定し続けられるということを考えて治療をしていくことが必要なのだと思う。

時々薬を飲み忘れていることが多いということで怒る医師がいるものの、私は怒ることは決してしない。もちろん、飲みたくないという気持ちから飲まなくなっている人には怒る(正確には叱る)。十分に病気を理解し、覚悟を決めたうえで薬を飲まないという選択をしたのであれば、怒ることはしないが、「ただ飲みたくない」「自分は病気じゃない」という気持ちから飲まなくなっている人には怒る、叱る、注意する、説得するなどで何とかして飲んでもらうようにする。

うっかりミスで飲み忘れてしまう人は、少なくとも自分には毎日薬を飲むということはできないため怒る気がしない。自分にできないことを人に要求することはしない主義である。

しかし、飲めないことが多いからとすぐLAIを勧める医師(私)と、「ちゃんと飲まなきゃダメじゃないか!」と活を入れてくれる医師、どちらが良いと思うかは個人差が大きいと思う。


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