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安定剤は安全という神話

「今 飲んでいる薬は睡眠薬じゃなくて、安定剤ですよね?」と確認してくる人が時々いる。一般の人だけでなく、精神科以外の医師も安定剤という言葉をよく使う。

一般で使われる言葉と、医療用語が微妙に異なるのはよくあることながら、
安定剤=安全な薬
睡眠薬=怖い薬
というイメージはなんとかならないかと思っている。


安定剤という言葉

安定剤は精神安定剤(トランキライザー; Tranquilizser)のことで、広い意味では精神科で使う薬のほとんどを指すものの、大体はマイナートランキライザー、つまり抗不安薬のことを指す。ちなみにメジャートランキライザーは抗精神病薬のことを指すことが多い。

抗不安薬は、不安や緊張を和らげる薬で、ほとんどはベンゾジアゼピン系に属する薬である。エチゾラム(デパス)、ロラゼパム(ワイパックス)、ブロマゼパム(レキソタン)などが代表的である。

一方 睡眠薬は、寝付きを良くしたり、長く眠れるようにする薬で、これまたほとんどはベンゾジアゼピン系に属する薬である。ブロチゾラム(レンドルミン)、フルニトラゼパム(ロヒプノール)、ニトラゼパム(ベンザリン)などが代表的である。

最近は睡眠薬でベンゾジアゼピン系より安全と言われる薬もでている。ゾルピデム(マイスリー)、ラメルテオン(ロゼレム)、スボレキサント(ベルソムラ)など。


安定剤と睡眠薬はほぼ同じ

安定剤=抗不安薬≒ベンゾジアゼピン系

睡眠薬=ベンゾジアゼピン系 一部は より安全と言われる薬 である。

安定剤(抗不安薬)と睡眠薬の多くは、ベンゾジアゼピン系の薬を指し、あまり差が無い。ちょっと違うのは同じベンゾジアゼピン系でも、安定剤は不安や緊張を和らげる作用が強く、睡眠薬は眠気を起こす作用が強い。

ということで、安定剤=安全な薬 ではなく、睡眠薬=怖い薬 でもない。


安定剤=作用時間が短いベンゾジアゼピン系のとき

一般で使われる言葉と医療用語が微妙に異なるのはよくあることで、一般の人や一部の医師は、安定剤=マイナートランキライザーではなく、作用時間(効いている時間)が短く効果が比較的弱いベンゾジアゼピン系という意味で使っていることがある。

その定義だと、安定剤はエチゾラム(デパス)、ゾルピデム(マイスリー)、ブロチゾラム(レンドルミン)などを指すこととなる。厳密にはゾルピデムはベンゾジアゼピン系ではないものの含まれてしまうことが多い。

そして 睡眠薬=長く眠らせる作用のある薬 という意味で使っていることがある。その定義だと、睡眠薬はロヒプノール、ニトラゼパム、クアゼパム(ドラール)などを指すこととなる。

この定義の場合、眠気やふらつきが残る可能性は「睡眠薬」の方が高くなる。しかし記憶が飛ぶ可能性は「安定剤」の方が高くなる。

医学用語が、一般的にも使われる場合には、意味のズレが起きることが多いので、意味の確認をする必要が出てくるのでちょっと面倒なことがある。


薬ですべて解決しようとしなければ安全

安定剤も睡眠薬も、薬で全て解決しようと思わず、使い方をしっかり守って正しく使用すれば安全である。

しかし副作用が出やすい人もいるため、実際に使って副作用が出ているときには速やかに対応する必要がある。この薬は安全か危険かと不安になるのではなく、薬はある程度の危険があるので慎重に注意しながら使っていくというのが適切な薬との付き合い方である。

  

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