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主治医が自分の言うことを聞いてくれないとき

精神科医はひねくれ者と言われることが多い。

本人が「退院したい」と言えば、「この人は退院できないのではないか?」と考え、すぐに退院はさせず「本当に退院できるのか?」という視点で評価・検討する。

一方、本人が「退院したくない」と言えば、「この人は退院できるのではないか?」と考え「どうやったら退院させられるか?」という視点で評価・検討する。

「「退院したい」と言わなくなったら退院」という、半ば冗談 半ば本気の判断基準もあったりする。

もちろんこれには理由がある。

退院できる状態の人が一日でも早く退院して問題なく生活するということは重要なことである。

しかし退院を多少早めたため、再燃し、再入院になったり、レベル低下したり、自殺や他人を傷つけてしまったり、大切な人との関係が壊れてしまうことが、10人中1人でも起きてはいけない。

都合の良い情報ばかり集めない

本人と家族が「退院したい」というときに、退院しても大丈夫と思われる情報ばかり集めていてはいけない。

精神科医は本人に寄り添いながらも、本人と同じ方向ばかり見ていてはいけない。反対の方向も見ていろいろな可能性を考えなくてはいけない。

本人と家族が「退院して大丈夫」というけれど本当なのか?

だめになる可能性はないか?

その可能性があるとすれば、その可能性を極力避けるためにはどうしたらいいか?

もしダメになったとき被害を最小限にするにはどうしたら良いか?

それらをたとえ本人に嫌われることになろうとも考える。それが主治医の仕事であり、プロとしての責任である。

主治医は言うことを聞いてくれない

結果的に「主治医は自分の言うことを聞いてくれない」「すぐに否定的な言い方をする」「相性が合わない」などの、主治医に対する不信感を抱いてしまうことが良くある。

これは主治医が性格が悪いからではなく、プロとして様々なことを考えて治療しているからであることが多い。

主治医が自分の言うことを聞いてくれないからといって主治医変更を希望するのは、非常に慎重になった方が良い。

もちろん性格が悪かったり変わり者である精神科医がいることは事実であるため、理由をまともに説明できない主治医であれば、主治医変更を考えても良いと思う。

ただし「まだ表情が硬い」などの、自分としては納得いかない理由を言われることがあるかもしれないが、これらの理由は精神科においては重要な判断材料であり、退院を待たせる正当な理由である。


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