大企業の働き方改革はAAAFが肝だと思っている

大企業の強みは何と言っても社員数。何千、何万、あるいはそれ以上の社員がいるのだから、もはや一つの国とさえ言える。

この単位を改革するのは簡単ではない。現在でもある程度の成果は出ているが、正直まだまだだと思っている。特に社員数という数を力を生かしきれていないのが歯がゆい。

しかし、本当に無理なのだろうか。やりようはある――そんな気がする。というわけで、もやもやしている持論を固めてみることにした。

キーワードはAAAFだ。

AAAFとは

Anyone, Anytime, Anything, Flatの略であり、全社員いつでも誰でも自由に読み書きできることを指す。

・誰でも読み書きできる(Anyone)

・いつでも読み書きできる(Anytime)

・何でも読み書きできる(Anything)

・承認や検閲などは無く、誰でも直接読み書きできる(Flat)

インターネットはAAAFの一種だろう。このnoteもそうだ。誰もが自由にアカウントをつくり、他人のnoteを読み、コメントや反応を残し、また自分のnoteを書くこともできる。

なぜ働き方を改革できないか

それは社員全員が参画できるようになっていないからだ。現状は以下のようになっている。

・無知なトップ層または改善組織が頭をひねっている

・現場の意見を聞かず、あるいは軽く聞いただけの当てずっぽうで策を講じている

・社員のアウトプットがなく、あるいはあっても貯まらない、あるいは貯めても共有・利活用できない(仕組みがない)

つまり何を改革すればいいかがわからないし、どうやって改革すればいいかからないし、改革内容がちゃんと効いているもわからない。社員全員を活用できればすべてわかるにもかかわらず

それでも昔は単純だったからある程度は何とかなっていたが、今は時代が違う。多様性を尊重しなければならない上、VUCAな時代だ。従来の非効率的な当てずっぽうではまず当たらない。新規事業と同じだ。

AAAFでどのように改革するのか

これは単純で、AAAFな何らかのシステムを運用することだ。以下に例を挙げる。

・社員全員が自由に読み書きできるQ&Aシステム

・社員全員が自由に使えるコードリポジトリ

・社員全員が自由に読み書きできるIssues(課題や要望を提起するシステム)

・社員全員が自由に読み書きできるブログシステム

・……

重要なのはAAAFであること――社員全員が誰でもいつでも何でも直接読み書きできること。承認フローを入れたり、事業部ごとに公開範囲を絞ったりしてはいけない。あくまでも社員全員が社員全員のコンテンツや意見に直に繋がれる状態を維持する。

なぜAAAFなシステムで働き方を改革できるのか

いくつか理由を挙げる。

1:社員全員のアウトプットが蓄積されるから

たとえば社員全員が読み書きできるコードリポジトリがあれば、社員が書いたコードやツールを社員全員が使える。エンジニアやプログラマーでなければピンと来ないかもしれないが、同じ社員の誰かがつくったプログラムを利活用できるのは非常に助かる。

実際、ワールドワイドにこれが行われているのがOSS(オープンソースソフトウェア)だ。今や世の中のアプリケーションの大半は、OSSに依存している。もしOSSというAAAFが無かったとしたら、テクノロジーはここまで発展していない。noteもTwitterも存在しなかっただろう。

2:社員全員の反応がわかるから

たとえば社員全員が自由に読み書きできるIssues(課題や要望を提起するシステム)があれば、全社的な改善を「全社員参加型の透明性の高い民主主義」で推進できる。Issueには反応とコメントを残すことができるから、以下のようなことができる。

・「最もいいねの多い改善案」がわかる(需要なのだからこれに取り組めばよい)

・トップ層や改善部門が改善案に関する進捗や成否、その理由を記入できる(というより社員全員に見えているので "記入しなければならない" 風土になる)

3:優秀な社員が見つかりやすくなるから。

資質を発揮できていない社員は多いように思う。たとえば社員全員が自由に読み書きできるブログがあれば、そのような社員を発見できる。くすぶっている者はアウトプットしたがるからだ(こんな記事を書いている私もそうです)。

インターネットの世界でも、そうやって誰かに見出されるというサクセスストーリーは珍しくない。

4:社員のエンゲージメントが向上するから

自分の反応やコメントが届く、自分の書いた意見が届く、自分のアウトプットが誰かの役に立つ――そうだとわかればやる気も出てくるし、会社のためにもっとやってやろうという気にもなれる。

AAAFなシステムを運用するために必要なこと

1:投資する

たとえばIssueシステムを使うために、社員全員にGitHubアカウントを与える(月額400円~2000円)くらいのことはしなきゃいけない(実際はエンタープライズプランがあるため割安になるはずだが)。

こういうと「まずは100人の部門で試す」などスモールスタートが提案されるが、それでは意味がない。複雑系ではないが、何千何万という社員規模だからこそ生じる「本質的な複雑性」があり、これは何千何万という社員規模の中でやらない限り直面しないからだ。

早い話、スモールスタートに成功して、少しずつ規模を拡大していても、いずれ「本質的な複雑性」にぶつかる。同じことだ。だったら最初から腹をくくってしまった方がてっとり早い。

2:優秀なメンバーを集め、相応の裁量・権限を与える

当然ながら「AAAFなシステム」の提唱、導入、運用などを考えることのできるレベルの優秀なメンバーが必要となる。日頃からOSSに触れているソフトウェアエンジニアや、自ら新しい仕事術を考案できる知的生産者であれば可能だろう。必要ならスモールスタートで実践的に勘所を掴んでも良い。

大企業であればそういう人材も結構いると思っている。たとえば私もそうだ。

いずれにせよ、肝心なのはメンバーに相応の裁量と権限を与えることだ。たとえば無知なトップに懇切丁寧に説明しなければならないとか、彼らの都合や能力に振り回されるとかいったことがあってはならない。

「~~の期間で、~~の予算で、~~まで結果を出す」

この程度の合意で十分だ。あとはメンバーに任せる。トップはメンバーがアウトプットしている成果や進捗を読むくらいで良い。

3:活動のすべてをオープンにする

優秀なメンバーに一任することの危うさもある。たとえばモラルハザードやコンプライアンスの違反といった問題が生じるかもしれない。

これらを防ぐのは難しくない。メンバーの活動(ソースコードや議事メモから備忘録やチャット内容まで)をフルオープンにすれば済む。

つまりは透明性の確保である。おかしい点があれば誰かが突っ込んでくれるし、オープンなのでおかしいこともできない。

理想はAAAFシステムに関する活動そのものもAAAFにすることだ。

おわりに

大企業の働き方改革を推進する――特に社員数の数の力を生かすために、AAAFという考え方を紹介してみた。


p.s.

私は平社員であるが、エンジニアであり知的生産者でもあるからか、「もっと上手くやれるだろう」とよく考える。無論、通じるはずもない。私が経営幹部だとしてもそうするだろう。見ず知らずの平社員に任せることなどできない。わかっている。

ただ、それでも、采配を振るってみたいと思うのだ。あるいは私が甘いのだということを痛感したい。

この記事は、そんな思いから生まれたものだ。原石か、悪あがきか、それとも絵空事か。私は原石だと思っているが、真実はわからない。



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