チャットにおけるメンションのスタンスを決める
Slack や Microsoft Teams などビジネスチャットの利用が増えてきた。
チャットにはメンション(Mention)という機能がある。メッセージ中に @stakiran と書くことで、ユーザーstakiranに通知を飛ばすことができる、というものだ。
これは相手に確実に気付かせるための仕組みであり、たとえるなら肩をたたいて「ねえちょっと」と声をかけるようなもの。目的もなく乱用されるとストレスフルだ。
このストレスを減らすためにはどうすればいいかを述べる。一言で言えば、
メンションをどう使うのかという「スタンス」を意識し、チーム内で統一する。
メンションのスタンスは二つある
以下の二つ。
・割り込みメンション……メンションを「あなた宛です、かつ緊急度も高いのでなるはやで対応してください」として用いる
・読者指定メンション……メンションを「あなた宛です」として用いる
続いて各スタンスのメリットデメリットを挙げた後、どちらのスタンスを使うべきかを考える。
割り込みメンションのメリデメ
メリットは「ねぇ、ちょっといい」という割り込みを実現できることだ。特に普段はチャットしか使っていないようなリモートワークにおいてでも実現できる。
デメリットは、メンバーの教育が難しいことだろう。これを実現するためには、少なくともメンバーが以下を備える必要がある。
・割り込み以外ではメンションを使わないようにする
・自分が関わるチャンネルのすべてのメッセージをこまめに読み、必要なものはすべて適切に対応する(自律的に動く)
特に二つ目が厄介で、「そんなことやってられるか」「対応が必要なことだけ通知してほしい」という人も多い。
読者指定メンションのメリデメ
メリットは「わかりやすい」ことだ。
各自は通知されたこと(メンションされたメッセージ)だけ読めばいい。自分が関わるチャンネルすべてを定期的に読んで、必要な分については対応する――みたいな自律性が無くても済む。基本的にチャットを導入すると、ほぼこのスタンスになるはずだ。
デメリットは二つある。
・割り込みを実現できないこと
・通知されたメッセージ以外を読まなくなること
まず一つ目は、単純に「メンション=あなた宛です」の意味でしかないから、緊急かどうかがわからない。
そうなると受け手は「常に緊急を想定してなるはやでチェックする」か「自分のペースでチェックすればいいと割り切る」かの二択になるが、前者はしんどいし、後者もたまに緊急性の高いメンションが混ざった時に「なんで応答してくれないの?」となってこじれる。つまりストレスフルだ。
二つ目については、雑談や脱線が発展しないと言い換えることもできる。たとえば新規事業や改善のアイデアを出しても、自分とは関係がないからと誰も読まない。
VUCAで多様性な今の時代、各自が意見を出し合って議論を深めていくことや、雑談によりコミュニケーションの心理的ハードルを下げることは重要である。「通知されたことにしか反応しません」では、このようなことはできない。
どちらのスタンスを使うべきか
理想を言えば割り込みメンションが良い。
メンバー全員が自律的にチャンネルを読み、必要なことに対応することを前提として、本当に緊急性が高い場合のみメンションを使う――ストレスフリーな働き方である。
ただし、割り込みメンションには相応のリテラシーと訓練を必要とする。周知が難しいか、不可能なことも少なくない。よくあるのは「そんな面倒くさいことできるか」というずぼらな多数派の反発か、ろくにチャットを使いこなせていない上位層の反発である。
できそうにない場合は、仕方なく読者指定メンションにする。このとき肝心なのが、メンションは緊急性を要することを意味しない、という点で合意を取ることだ。
緊急性を要するのはDM(ダイレクトメッセージ)を使えば良い。たとえばプロジェクトAのstakiranさんに緊急の頼み事がしたいなら、
・プロジェクトAのチャンネルで、@stakiran とメンションしてメッセージを投稿する
・DMで stakiran さんに「チャンネルに投げた兼、支給なのでよろしく」と投げておく
こうする。これなら、受け手の stakiran さんは「あ、DMに来ているから緊急性が高いんだな」とわかる。チャットアプリ側で「DMだけポップアップ通知する」などの設定をすれば、ただのメンションに振り回されることなく DM という緊急性だけ把握できる。
おわりに
・チャットで使われるメンションはストレスを生んでいる
・ストレスを軽減するために、メンションのスタンスを意識すると良い
・スタンスには「割り込みメンション」と「読者指定メンション」がある
・割り込みメンションが理想だが、自律性の要求などハードルが高い
・読者指定メンションにする場合、「メンション≠緊急性が高い」を担保するとストレスが減る