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2020年〜2021年の楽器業界の動向と最新データ

勤倹尚武(きんけんしょうぶ)
→ 生活を質素にして、武芸に励むこと。

一芸が欲しいと思っていた若かりし頃の自分がいる。

いつか書いたかもしれないが、高校生のときにバンド活動をしていた時期がある。

ドラムとサックスに打ち込んでいたのも、振り返るともう25年以上前ということは、四半世紀経ったということだ。

そんなとき、ふと話題になったのが、我々の学生の頃は比較的よく見ていた光景を見なくなったというものだ。

その光景とは、ギターやベースを背負って自転車に乗ったり歩いている若者の姿だ。

ということで、実際の楽器の売れ行きなどどうなっているのか、気になるところだ。

楽器業界の過去の業界規模の推移をはじめ、楽器販売額の推移と2020年のコロナの影響と売上高ランキング、楽器メーカー各社の海外展開の動向を紹介しよう。

2020年〜2021年の楽器業界

  • 業界市場規模:3,000億円

  • 前年比伸び率:-2.8%

  • 前年比利益率:+4.5%

  • 平均年収:610万円

詳細を書いていくと、2020年〜2021年の楽器業界の業界規模、ここでは主要対象企業4社の売上高の合計としているが、3,583億円となっている。

また、楽器業界の過去の業界規模の推移を見ると、2015年〜2018年まではほぼ横ばいで推移していましたが、2019年〜2020年は減少傾向にある。

2021年6月2日に公表された経済産業省の生産動態統計年報によると、2020年の楽器の販売金額は、前年比16.1%減の573億円となっている。

2012年〜2014年までは右肩上がりでしたが、2014年をピークに減少傾向に転じている。

そして、2020年は前年から大幅に下落し、600億円を割り込んだ。

ちなみに、いくつかの年の楽器の販売金額を列挙してみる。

  • 2010年:722億円

  • 2014年:808億円(ピーク)

  • 2019年:683億円

  • 2020年:573億円

2019年と2020年を比べると、100億円近くの販売金額の減少ということで、16%近く減少していることになる。

2014年のピークと比べると、150億円近くの販売金額の減少なので、約21%の減少だ。

ということは、直近10年で20%以上の減少ということなので、確実に市場が小さくなっていることがわかる。

また、2020年の楽器業界は、新型コロナウイルスによる感染拡大により、厳しい事業環境となっている。

工場の操業停止による楽器の供給不足や、楽器販売店および音楽教室の休業により楽器の販売数が伸びず業績に大きく響いた。

一方で、ポジティブな面もあった。

世界各地で感染防止策による、巣ごもり需要を背景に楽器の需要が増加しており、なかでもECに適した電子ピアノなどの電子楽器は堅調だった。

ちなみに楽器には、鍵盤楽器、弦楽器、管楽器、打楽器、電子楽器に加え、シンセサイザーなど音楽制作機器などが含まれている。

そして、ここ数年は安価で手軽に演奏ができる、電子ピアノ、電子ドラム、電子サックスなどの電子楽器や自動演奏楽器の需要が高まっているという傾向がある。

楽器業界のポジショニングマップ

2020年の楽器業界の売上高ランキングは下記のとおりだ。

  1. ヤマハ:2,389億円

  2. ローランド:640億円

  3. 河合楽器製作所:551億円

改めて書くと、首位はヤマハ、2位がローランド、3位が河合楽器製作所という結果だった。

ヤマハは楽器の世界的メーカーで電子ピアノのシェアは世界首位だ。

一般向けからプロ用と幅広く手がけており、2位のローランドを大きく引き離し、国内の楽器業界を牽引している。

とはいえ、2020年のヤマハの売上高は、前年比11.3%減の2,389億円ということにも注目しておきたい。

世界の楽器業界動向

結論からいうと、日本国内の楽器業界の動向と世界の楽器業界の動向に乖離があることを書いておく。

世界の楽器市場は2027年までに179億ドルに達し、2021年〜2027年の予測期間には約1.6%の成長が予測されている。

つまり、2014年をピークにずっと減少している日本のマーケットとは異なり、成長予測されているのである。

また、こちらも先述したが、近年では電子楽器の需要が急増しており、その中でも電子ピアノが最も大きな市場となっている。

楽器市場は海外の需要が高いことを受け、楽器大手各社は海外市場に力を入れているというのが現状だ。

ちなみに、世界の楽器市場でシェアNo.1を誇るヤマハは、売上比率の約8割が海外市場だ。

セグメント別に見ると、電子楽器が41.7%を占めており、ピアノの売上高を1.6倍も上回っていることもあり、電子ピアノが世界首位を獲得している要因にもなっている。

楽器業界各社の戦略

上述した日本国内3社の戦略を簡単にまとめると下記のとおりとなる。

ヤマハ

中国、ASEANを中心とした新興国の中間所得層の取り込みを掲げており、付加価値向上で収益力の強化を図っている。

ここ数年はインド市場での販売が加速しており、民族楽器の音色を内蔵したポータブルキーボードなど、インドモデルの投入も行っている。

ローランド

電子楽器に特化したローランドは、北米、欧州、中国など中心に販売し、全売上高の85%が海外市場となっている。

売上の構成比率は鍵盤楽器が最も大きく、その中でもポータブルタイプの電子ピアノがECで伸長している。

その傾向から、新興国を含めた世界各国での販売を進め、ECのルート強化を行っている。

河合楽器製作所

鍵盤楽器を中心とする河合楽器製作所は、売上比率の41%が海外で、そのうち約4割を中国が占めている。

コロナ禍ではデジタルやハイブリッド、消音ピアノが好調だったこともあり、好調なデジタルピアノを中心に拡販し、販売網では北米やヨーロッパを強化している。

今後は東南アジアでの拡販や、中南米、中近東、アフリカなどの市場開拓に取り組むことを掲げている。

まとめ

日本国内の楽器業界は粛々と減少傾向にあるが、世界規模で見ると成長傾向にあることがわかった。

これは、単純に人口によるものだと個人的には思っている。

もちろん、大人になってから楽器に興味を持って買うという人もいるだろうが、大半は子どもの頃や若者が中心となる。

日本では少子高齢化の流れは変えられそうにないが、世界人口は爆発的に増えている。

2020年の楽器業界は新型コロナが影響し、業界規模は前年から縮小したことは何度も書いたが、一方で巣ごもり需要により電子楽器の需要は高まるといったポジティブな面も書いた。

楽器業界をトータルして見たときには、世界での電子楽器や自動演奏楽器の需要の高まりもあるため、楽器業界には追い風だといってもいいだろう。

ただ、その内情は大きく変わっていることも忘れてはいけない。

やはり、企業というのはその時々に起きる変化に柔軟に対応していかなければ勝ち残ることはできないということだ。


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植田 振一郎 Twitter

株式会社stakは機能拡張・モジュール型IoTデバイス「stak(すたっく)」の企画開発・販売・運営をしている会社。 そのCEOである植田 振一郎のハッタリと嘘の狭間にある本音を届けます。