集合の濃度にまつわる話

いや、note巡ってたらこんな記事見かけたんで。

ちなみになんとなくcardinalityを「濃度」と訳すことにピンとこない。もう定番になっちゃったし、逆らわないけどさ。

いや、なんの話かというと苦労したなーという話です。元をただすと、ベイジアンゲーム界隈でそれなりに知られている、Aumann, Katznelson, Radner, Rosenthal, and Weissっていう、5人が共著した論文があってね? たしか出版年は1983年だったと思うけど、この論文で「ポーランド空間に原子のない確率測度を入れた空間は測度空間として[0,1]単位区間+ルベーグ測度と同型」っていう結果を証明にフルに使ってるのよ。どうもこの分野ではこれ常識っぽいけど、でも証明がわかんないんだよね。

で、必死で資料を漁った結果、英語版の「Polish Space」の記事の参考文献にあったSrivastavaとかいう、たぶんインド人? の、A Course on Borel Setsというクッソマイナーな本に定理として載ってることを確認した。え、証明? 見てない。その時間的余裕がないよ!

とはいえ、このときに思ったんですよね。ああ、連続体仮説(CH)……欲しいなあ……って。なんでって、だってとりあえず非可算であることが証明できれば[0,1]区間のコピーくらいは含みそうでしょ? 僕みたいにわかんなかったら証明すっかっていうタイプの研究者からすれば、簡単に証明できないくせに常識みたいに転がってる結果って苦手なんだよね。

一応解説しておく。まず、現在の数学が基礎としている集合論の体系は、ツェルメロとフランケルが作ったZFか、ゲーデルとベルナイスが作ってノイマンが補足したGBNのどちらかが使われてる。ZFで考えると、まず問題となるのは選択公理(C)を入れたZFCを使うかどうかなんだけど、これについてはZF+Cは、ZFの無矛盾性の下に無矛盾だという結果を1930年代にゲーデルが出してる。ところが一方で、1960年代にコーエンがZF+(Cの否定)についてのモデルを提出して、結果としてCはZFと独立な公理であることがわかった、というのはまあ有名な話。わからないひとはサイモン・シンの本とか見るといいよ。

ところで、自然数の濃度と[0,1]区間の濃度の間に濃度はない、というのが有名なCH。さらに一般化したGCHというのもあって……まあ解説は面倒なのでウィキペディア見よう。ゲーデルが1940年くらいにZFからCHの否定命題を証明できないことを示している。ところが一方でまたコーエンがZFC+(CHの否定)を許すモデルを提示しているのでCHもまたZFCと独立である。GCHも同じ……というか、CHはGCHから出てくるので、CHが証明できない時点でGCHは証明できない。否定が証明できないことの証明を誰がやったのかまでは知らぬ。コーエンではなかったような気がする。

このへん、本当に面倒なので僕はもうだいぶ忘れちゃってる。けどこれを考えると最初に紹介した定理はけっこう不思議で、連続体仮説が成り立たないモデルでも、原子のないポーランド空間は全部連続濃度なんだよな……あれ実は連続体仮説の下でとかこっそり書いてたりしないかな。不安だ。でもチェックする時間はないのだ……

というわけで、まとめると僕はこのへんホントさわりしか知らないよ! ってことだった。勉強したいなー。時間がないんだけど。

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