学者になんてなるものじゃないって話

 なんか参考になる記事ないかなってwebを探したらこんな記事があった。

 まあ言ってることはだいたい正しくて(へんなところはたぶん記者が理解してない)、非常勤講師はそもそもアルバイターなんでクッソ給料低いし研究費が出ないので自腹で年収はヘトヘトになるまで働いてようやく150万くらい。首尾良く就職できてそこそこの大学の専任講師やら准教授になったとしても30代だとだいたい600~700万くらいかなってところ。早稲田の1500万は高いって言われるかもしれないけど、後で言うようにこれは高くないです。それと「教授」って書いてあって、年齢でも変動するんでたぶん50歳くらいの教授の年収じゃねえかなこれ……
 まあそんなことはどうでもよくて。この種の年収話をするときに、学者以外の人間が一点、ほぼ確実に見落としてることがあると思うんで、それについて書こうかなと思った次第。
 なにかというと、

「学者の大半は、『早慶以上の学校』出身で、さらに大学生時代の成績上位層である」

ってことを、みんな忘れてるんじゃないかね。

 僕自身は慶應出身で、成績もまあまあってところだったけど、大学院の同期のかなりの部分が首席級だったよ。そしてこのレベルの人間の友達はほぼ確実に成績優秀者で、成績優秀者はたいていすごくよい企業に就職してバリバリ働いてる。
 なにが言いたいかって? つまり大学院行って学者目指す人間の大学時代の友達は、そのほとんどが30歳くらいまでに年収1000万突破してんだよ。
 で、学者? まあ分野にもよるけど、経済学分野だと就職できるのって30過ぎとかザラだし、もっと上もあり得るし、それまではむしろ「学費を払う側」だよ。で、それが終わったらようやく年収600万くらい。この時点で30代中盤。
 ちなみに、これは成功した例な? 才能に限界があってどう努力しても学者になれなかったケースとかだと、30までがんばってから仕方なく民間企業へってケースもある。その場合、22歳から雇われていた人間とは8年間の勤続年数ブランクがあるので、日本型給与だととんでもねーマイナスになる。そして成功するか失敗するかは完全なギャンブルで、誰も保証できない。
 もう一度最初に戻るけど、早稲田の教授って日本の大学人だとかなりのエリートだと思うけど、50歳で年収1500万って高いですか。30代の頃の苦労を挽回できるほど高いですかね。国公立の平均900万って高いですかね。もう一度言うけどこれギャンブルに勝ったときの相場だよ? 学者にならなかったら30歳で年収1000万だと思ってこの給与見て、それでも高いって思う?
 研究したくて学者になったんだから我慢しろって言われる場合も多いが、これは主客が逆転してる。ぶっちゃけ、これだけ割に合わんのだから、才能がある連中の大半は学者になる道を途中で抜けていくんだよ。残ったのは、学者くらいしかできない食いつめ者だけだ。「研究したいから学者になった」とかじゃなくて、「研究しかできないようなのしか学者に残らないほど環境が劣悪」だってことは、きちんと押さえておいてもらいたい。
 だからタイトルの話に戻るわけで、ぶっちゃけ僕は、どんなに才能がある学生に対しても、「学者になれ」とは言わない。相談されたら「絶対になるな。人生を棒に振るぞ」って言って追い返す。そうすることは教える者としての義務だと思ってる。
 それが日本の研究開発ランキングを落とす? 知るか。金出さねー連中が文句を言うな。以上。

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