新しい論文と未解決問題

というわけで、J.Math.Econの論文が校正も終わって、webでの正式公開状態になりました。

https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0304406821001464?via%3Dihub

この論文を簡単に述べると、X^2上の弱順序に対して、それを引き算の大小で表現する関数についてのあれこれで、いわゆる基数的効用の理論の一部になります。

で、未解決問題がいくつかあって、簡単なのから難しいのまでいろいろ取りそろえてるので、若い経済学研究者はぜひ読んで挑戦してみて欲しい。今回は僕が気づいてる未解決問題のコレクションを書いておきます。

1)concatenation axiomとWakker (1988)の結果について

上の論文で書いているように、Wakker (1988)はcontinuity, reversal property, concatenation axiomの3公理の下で、連結集合上での表現関数の存在を示した。ということになってる。

実はこれ僕は怪しいと思ってて、Wakker自身は「KLST(という本)の6章の結果の証明を使うと、4章の結果の公理のいくつかが他の公理から証明できる」としか書いてないんよ。でもKLSTの6章って3変数以上の加法的効用関数の存在問題なわけで、そんなもんこの文脈に応用できるとはあまり思えないんだよね。

で、弧状連結にすると、continuityとreversal propertyから僕が使ったcrossover axiomとconsistencyが言えるんで、concatenation axiomなしでWakkerの結果をreproduceできる、ということがわかってる。このあたり、実はまとめるだけで結果になるんじゃないかな。

2)凹じゃない関数の微分可能性についてと、二階微分可能性について

僕はこの論文で、アルトの効用の微分可能性についての結果を、凹関数に限定して示した。凹じゃない場合には、僕の技術は不完全でうまく行かない。リプシッツだったり局所リプシッツだったりすればうまく行くかもしれないけど、そのための条件がわからない。

これに関連して、凹関数の偏導関数は凹関数とは限らないので、二階微分可能性を示すために僕の議論は使えない。ということは、二階微分可能性も未解決問題だ。おそらくこの二つは、解決できるとすれば同じ方法でだろうと思っている。

3)弧状連結……

ドブリューの効用関数の存在定理では、連結かつ可分な位相空間での議論がされていた。アルトの効用も同じようにやりたい。やりたいんだけど……補題7が、どうやっても出ない!

これ、ホントなんでなのかわからなくて途方に暮れてる。位相数学の最も恐ろしいところのような気がする。これ解決できたらたぶんいいとこ載るよ。少なくとも僕がレフェリーならめっちゃ高評価する。どの雑誌でも。

以上3つが主な未解決問題かな。どれでもたぶんどっかには載るので、みんなどしどし読んでどしどし挑戦しようね! オープンアクセスだから読むだけならただだよ! 以上。

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