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【公差①】精確なモノをつくるため?

※キャッチの写真はオーディオケーブルで、ケーブルのコネクタは公差をうまく使っています。

ものつくりと関わるうえで、一番目に話題にした方がいいものとは・・・と考えて出てきた話題が、「公差」でした。今回は公差に関する記事第一弾として綴っていきます。

製造業に従事してすぐに図面と向き合い、理解が不足していたなぁと感じたのが、この「公差」でした。一言に「公差」と言えども、深い話題になってしまいます。なぜならば、公差は現場知識と密接な考え方だからです。

■公差ってなに?

こちらのページに詳しく説明されています。下記に示すのは引用です。

「公差」は、英語では tolerance と記載します。公差とは、簡単に言うと、工学において「許容される差」のことを言います。
具体的には、できあがった製品・部品についての「許容される、誤差を含んだ寸法幅」を意味します。

詳しい説明は他の方々に任せます。ここでは、もっと現場寄りに「公差」について考えていこうと思います。

※因みに、英語表記は英英辞典で意味を参照するとよいでしょう。なんて言ったって語感がわかりますから。
私的に直訳すると、「何にも文句を言わず、許すことのできる部分や範囲」ですか?許容できる部分や範囲ってところだと思います。英語圏の人に訳してもらいたいです・・・

■図面指示寸法と現実の品物の測定寸法の関係

製造業に従事する方々が公差と聞けば、一般的なイメージは図面に指定した寸法で精確なモノを作るために指示するものではないでしょうか。
しかし、このイメージは私の考える公差とは異なります

実際のところ、指示寸法通りにモノを作ることは大変難しいことで、指定された寸法から1/10mmずれたり、1/100mmずれていたり、顕微鏡の世界で見れば、1/1000mmや1/10000mmずれていたりします。

例えば、指定された寸法が10mmでしたら、実際の出来上がり寸法は10.05mmや9.97mmや1/100mmの単位で外れています。
一方で、指定された寸法が1000mmの時、実際の寸法は1000.11mmや999.85mmとなっていたり、やはり指定された寸法から1/100mm単位で外れています。実際には指定寸法から0.15mmも外れることはなかなかないとは思います。とりあえずたとえ話なのでお許しください。
※ノギス等の測定器具で実際に測定してみると確認できます

■机上の寸法と実測寸法をつなぐ架け橋

では、この実測寸法をどのように理解すべきか。これを理解する方法が公差という概念です。

公差とは簡単に言うと、
どのくらいの範囲で指定の寸法から外れてもよいかということを
図面の中で指示すること
です。


例)図面指示が10mmで、公差が±0.1mmと指定されている場合

〇実測寸法が10.07mm(図面指示から0.07mm外れている)だった
⇒たとえ実測寸法が指定寸法を0.07mm超えていても公差が±0.1mmと図面上に指定されているため、図面の指示通りに加工されている、という判断が可能

例で考えたように、公差の範囲内で柔軟な判断が可能になるのです。

だだし、公差を0.01mm超えていたからといって、大きな問題が起こるわけではありません。あくまでも判断の基準として、数値が示されているものです。

検査ではこの図面指示公差内に寸法が納まっているかどうかをノギスなどの測定器を使って実測して、合格かどうかを判断するわけですが、実は公差内に寸法が納まっていてもうまくいかない時もあります。

こういったことが多く起こるのが組み立て部品になります。4つの部品を組み合わせて・・・などという組み立て部品があった場合はうまく組み立つか実際に組んで判断するのが合理的で、部品ごとに寸法検査しても無意味な場合があります。

そういった事態を嫌って、厳しい公差を指定すると時として想定以上のコストになることも考えられます。

したがって、公差を指定するときはどのように加工するかを想像しながら指定するのが理想的な方法です。目指すコストと目指す精度にギャップがあると、製造業者に設計者がなにもわかっていないと図面を通じて伝えることになり大恥をかくことになります。

■公差は現実と図面をつなぐ架け橋だが・・・・

公差は実測寸法と図面上の指定寸法をつなげる架け橋でありますが、それは設計者が合理的な加工方法を知っていて指定している場合だけであり、設計段階で加工方法を想定せず、この公差は最低限必要だなという感覚的な判断で指定した公差の場合、現実的で合理的でない場合があるということを心に留めていかなければなりません。

公差だけでも書きたいことがたくさんあって、書ききれませんので他の記事で、公差に関わるエピソードを詳しく綴っていこうかと思います。

長文お読みいただきありがとうございました。

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