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香港の家事労働者

皆さんは家事労働者という人々の存在を知っていますか?
あまりイメージができないという人もいるかもしれません。
家事労働者とはその名前の通り「家事を職業としている人」なので、お手伝いさん・ヘルパーさん・メイド・家政婦などをイメージしていただけたらと思います。
今回は香港の家事労働者について紹介させていただきます!



香港の家事労働者の特徴①数
香港にいる家事労働者は、香港の人口約700万人の約5%を占めています。[1]
ちなみに日本の外国人の割合が多い都道府県ランキング2位である愛知県の人口は約700万人で、外国人住民数はそのうち約3%だそうです。[2]このように比較してみると香港には家事労働者が多くいることが分かります。
なぜこれほど多くの家事労働者を香港では受け入れているのでしょうか。
その理由は、香港のほとんどの世帯が共働きであるからです。
1960年代以降、女性の社会進出が促進されるようになり共働き世帯が増加し、それに伴って香港の政府は、1973年から家事労働をするための外国人労働者の正式な受け入れを開始しました。[3]

香港の家事労働者の特徴②出身国
家事労働者のほとんどが女性で、彼女たちの出身国は東南アジアが大多数を占めています。


🔵インドネシア
🔴フィリピン
🟡その他(タイ、スリランカ、ベトナム、ネパール)


この背景にあるのが東南アジアの経済状況です。
東南アジアでは、経済水準の高い国に仕事を求めて移動するというのは一般的であり、特に女性は、家事労働者として母国を離れて暮らす人も多いと言われています。[4]


香港の家事労働者の特徴③仕事内容、労働環境
家事はもちろん、育児、介護、買い物、子供の送り迎えなど、家に関わるすべてのことを家事労働者に任せている家庭が多いです。
家事労働者は雇用主の家に住み込んで働いています。そのため、香港のアパートやマンションには家事労働者用の小さな部屋があります。一般的に、広さとしては畳二畳くらいが多いです。

香港の家事労働者の特徴④他の国と比べたときの処遇の良さ
香港は、家事労働者を受け入れている他の国、例えばシンガポールや台湾よりも処遇が良いとされています。以下の二つが主な理由です。
・法律で雇用の制度がしっかりと定められている
日曜日は休み、2年に1度の里帰り、産休・病気での休暇取得可、食事手当など、具体的なことが法律によって定められています。[5]
・外国人労働者による組織化の自由が保障されている
組織化の自由が保障されているため労働者が雇用主や斡旋業者などに対して常に受け身ではありません。実際に1980年〜1990年代にかけて家事労働者自身の組織化が進みました。雇用者からの虐待や賃金未払いなどの問題が起きた際に、そのような組織や支援団体から、国家や政府に直接訴えるという手法をとっているそうです。[6]

香港の家事労働者が抱える課題
特徴④で他国と比べ処遇が良いということを述べましたが、やはり家庭内で起こってしまう問題というのは顕在化しにくいという問題点があります。そのため、データ化されていない虐待や賃金未払いなどの問題はたくさんあります。
また、コロナの影響で多くの家事労働者が母国になかなか帰れないことや、逆に働きにこれないこと、休校中の子供の世話や衛生管理の徹底などを求められ、負担が増えているそうです。[7]

香港の家事労働者の実態から考えられること
私は香港の家事労働者の受け入れを知ることで、日本における外国人受け入れのあり方について参考になる部分があるのではないかと考えています。例えば、コミュニティの形成などです。特徴④で日曜日が休みであるというのを上げましたが、彼女たちは日曜日に公園や歩道橋の下などで同郷の友人と集まってコミュニティを形成しています。屋外で一日中過ごしているという状況が彼女たちにとってどのように感じているものなのか分かりませんが、唯一の休日を同郷の友人と共に過ごす時間は彼女たちの「心の支え」になっていると思います。その「心の支え」というのが参考にできる部分であると考えていて、同郷の友人でなくても、
・外国人の文化や価値観を理解し尊重する
・外国人に孤独を感じさせない
・情報共有ができるようなコミュニティの形成
など、「心の支え」につながるような取り組みはできるのではないでしょうか。
また、これらは日本が外国人を受け入れる際に必要なことであるとも思います。

STAGEはさまざまな活動を通し、上記のように外国人に寄り添っていけるような存在になれたらと思っています!
ここまで読んでくださりありがとうございました!



投稿者:大久保真彩(18)
香港で5年間過ごし、東南アジア出身の家事労働者の生活などに興味をもつ。現在大学で移民に関する勉強をしている。実際に香港で日常生活を送る中で目にした家事労働者のことについてシェアできたらと思いこの記事を書いた。


[1] クーリエジャポン『香港を支える過酷な労働環境の家事労働者たち-山道走って「自由と平等」を訴える』https://courrier.jp/news/archives/166382/
[2]47都道府県別ランキング『都道府県別の在留外国人ランキングと人口に占める割合』https://47todofuken-ranking.com/zairyugaikokujin/
[3] 合田美穂 (2014)『外国人家事労働者が香港に与える影響-社会、家庭、国際関係への影響を中心に-』静岡産業大学経営学会
[4] 岩崎育夫 (2017) 『入門東南アジア近現代史』講談社
[5] 合田美穂 (2008)「在香港フィリピン人家事労働者の現況-香港が就労先として選択される理由」甲南女子大学
[6] 安里和晃 (2006)「東アジアにおける家事労働の国際商品化とインドネシア人労働者の位置づけ」神田語学大学
[7] ILO (2020) “Impact of the COViD-19 crisis on loss of jobs and hours among domestic workers”

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