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猟師の松田さんの鹿角キーホルダー

 私の働くトヨタ白川郷自然學校は世界遺産白川郷合掌集落にほど近い山の中にあります。訪れるお客様に白川郷や白山周辺で活動されている作家さんたちの作品をぜひご紹介したいと思い、自然學校のショップで販売させてもらっています。
 作家の皆さんそれぞれにものづくりに込められた思いや物語があって、とても店頭のPOPだけではお伝えしきれないので記事にしてご紹介させてもらうことにしました。

 今回ご紹介するのは世界遺産集落にお住まいの猟師の松田さんが鹿の角を加工して作っていらっしゃるキーホルダーです。カラフルなパラコードを編み込んだストラップに鹿角をあしらった熊避けの鈴は自然學校のショップでとても人気のある作品です。鹿角のキーホルダーは角の形や大きさが一つずつ異なり個性があるので、お客様は皆さん真剣に色や形も見比べて、お気に入りの一品を選んで行かれます。
 松田さんのご家族が営んでいらっしゃる合掌造りの民宿「一茶」さんにお邪魔して、狩猟のことや、白川郷での暮らしについてお話しを伺いました。

猟師の松田直樹さん

「民宿一茶」へ

 一茶さんの合掌造りは築200年以上の歴史がある建物です。磨き上げられた梁や柱が黒光りしています。囲炉裏や縁側があり、お庭の池には鯉がたくさん泳いでいて、落ち着いてくつろげる癒しの空間です。こちらの民宿は奥様のご実家で、お義父さんとお義母さんと奥様が営んでいらっしゃり、松田さんは普段は会社勤めをされています。

民宿一茶さんは重厚な造りで歴史を感じます
合掌造りの囲炉裏

狩猟の魅力とは

 可児市ご出身の松田さんは12年前、ご結婚を機に奥様のふるさとである白川郷へ移住。最初は村での暮らしに驚きも多かったそうですが、もともと猟師をされていたお義父さんに憧れて、移住されてすぐに、お義父さんに教わりながらご自身も猟師になりました。白川郷ではニホンジカやイノシシ、ヤマドリ等が獲れ、春先には猟師のお仲間とツキノワグマを追うこともあります。
 狩猟の魅力を尋ねると「野生動物との駆け引きが面白い。罠を仕掛けて、思い通り掛かることもあれば掛からない時もある。冬は雪の上の足跡を追って獲るけれど、一日歩いて一頭も獲れんこともあれば、谷に入って数分で鹿の群れを見つけることもある。」と教えていただきました。ニホンジカは年間30頭ほど獲れますが、イノシシは鼻が利くので、けもの道に見えないように仕掛けた罠も、イノシシによってきれいに掃いたように罠が掘り出されてしまうことも。捕らえるのが難しく、知恵比べが必要なのだそうです。

 獲れた鹿肉やシシ肉はご自宅で料理されます。子供たちが喜んで食べてくれるのも大きな楽しみだそうです。息子さんは大人になったら一緒に狩猟をしたいと言っていると嬉しそうにおっしゃっていました。

合掌造りの縁側で

鹿角の加工について

 鹿角の加工は、民宿にお泊りの皆さんに見てもらえたらと始めたのがきっかけです。最初は鹿角の形をそのまま使う大きなランタンハンガーを作っていましたが、小さなキーホルダーにすると特に海外からのお客様にお土産として喜んでもらえました。キーホルダーにワンポイントで付いている「白川郷」の焼き印は奥様の文字デザインです。奥様には自然學校のためにも手書きのすてきなPOPを描いていただいたのですが、ひとつひとつの作品にも奥様のセンスが加わっていたとは!パラコードの色の組み合わせもお二人で相談して決めるそうです。

座布団の毛皮もご自身で加工したもの

狩猟にまつわる世界は広くて深い

 鹿角を加工する作業場も見せていただきました。魚釣りや登山、バイク等アウトドアが趣味ということで、趣味の道具が並んでいます。毛皮もご自身で加工されます。柔らかく仕上げるのは難しいということでしたが、手触りは柔らかくて座り心地も良さそうでした。

 白川村の猟師さんは現在十数名と減ってきているそうです。山に囲まれた白川村は野生動物が身近な存在です。野生動物と人の暮らしが適度な距離を保っていられるのは猟師の皆さんの存在が大きいと思います。お世話になっております。間接的に村の暮らしを守る役割を果たしながら、角、鹿肉、毛皮という狩猟による恵みを最大限に活用され、いただいた命を大切にされてらっしゃるということを感じました。そして何より狩猟にまつわる様々な事、どの工程も深掘り探究されているのが印象的でした。松田さんは狩猟のある白川村での暮らしを楽しんでいます。

鹿角キーホルダー
自然學校のショップで販売中

今度、鹿角キーホルダーの前で、どれにしようかと迷われている方を見つけたら、どんな方が作られているのかや、お伺いした狩猟のことなど、いろいろとお伝えしたいと思います。

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