感情は曖昧でめんどくさくて愛おしい「愛なのに」
人を好きになるって難しい。
愛って難しい。
言葉にしないと相手には気持ちは伝わらない。
しかし、伝えたからといって上手く行くとも限らない。数学みたいに明確な正解なんてない。
厄介なことにフラれたからって、簡単に諦められるものでもない。でも、あきらめずに挑めば必ず叶うものでもない。
「愛なのに」を見て、人を好きになるという難しさをちょっと思い出だした。
※ネタバレあります。
今泉力哉監督と城定秀夫監督がお互い脚本を書き、相手が書いた脚本を撮る企画「L/R15」
「愛なのに」は脚本が今泉力哉さん、監督が城定秀夫監督ととなっている。
キャストには瀬戸康史、河合優実、さとうほなみ、中島歩などが出演している。
恋愛物語のラブコメというよりも、R15のセックスコメディで、瀬戸康史、さとうほなみなど身体を張った演技も凄かった。
さとうほなみはゲスの極み乙女のドラマーとしても活躍しており、2017年より俳優活動も始めたららしいけど、うまかったな。
城定秀夫監督曰く、特に濡れ場で負けたら終わりだという気持ちで頑張って撮ったというシーンは見事な濡れ場はエロスに溢れていた。
さすが城定秀夫監督というべきか、そこらのAVよりもエロい。
映画の内容としては、14歳も歳下の女子高生(岬)から急に結婚したいと告白される古本屋の店主(多田)。何回も告白してくる岬の想いを感じながらも、多田には振られても諦めきれない相手のいた。そんな時に多田の好きな人が結婚する噂を耳にする。
多田と岬はそれぞれ、振り向いてくれない好きな人が存在しながらも、興味のない異性から求められる。
「愛なのに」の劇中に飛び交うセリフには、自分にとってどこか胸に響くものがあり、共感させられることが多かった。
特に無関心な相手、どうでもいい人に関しては振った後でも気まずくないという言葉。
自分も過去同じ経験をしたことがあった。
好意を抱いた相手がいて、想いを伝えるものの振られしまう。その後、数回会い諦められない気持ちを伝えたけどダメだった。
それでも相手の女性はこれからも、今までみたいな友達でいたいって。
結局どうでもよかったのかもしれない。
相手にはとっては勝手に好意を抱いてくれる都合の良い存在ってだけで。
しかし、後半の多田の言動によってその虚しくなる気持ちを変えられた気がする。
岬の親が押しかけてきた時、岬から先に告白されていることは決して言わなかった。
その後、警察に徴収された際もプライバシーと曖昧にさせた。
これはどちらも、多田にとって岬の事を想ったうえでの言動だと思う。
どうでもいいような相手だった岬が多田の中でどうでも良くない存在へ変わってきている気がした。
人の感情なんて曖昧で、何かをきっかけに想いが変わったりする。それがめんどくさくて、しんどくて、他人には一切わからないけど、愛おしい、人の愛を簡単に否定してはならないことを教えてくれた作品だと思う。
あと、セックスコメディ感のあるシーンも面白かったけど、人によっては笑えないかもしれない。
セックス下手っていう言葉は、男としては女性に言われたくない言葉ぶっちぎりの一位だと思う。
また、一番好きなシーンは冒頭の古本屋から岬が万引きして逃げていたのに、途中で飲み物買って追いかけてきた多田には渡すシーンが最高だった。セリフがなくても、岬の気持ちが表した素敵なシーンだった。
L/R15の2作目の城定秀夫さんが脚本、今泉力哉さんが監督の「猫は逃げた」も楽しみ。