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デート向きのおしゃれな映画、笑える映画、見惚れる映画、感動的な映画を求める人は見なくよい。ただ凄い映画を見たい人こそ「バビロン」を見てほしい。

セッションやラ・ラ・ランドなどを制作したデイミアン・チャゼル監督の最新作。
1920年代映画業界はサイレントからトーキーに時代が変わるハリウッド黄金期の中で、業界の頂点にたつ男性(ジャック)と夢を追い全力でのしあがろうとする女性(ネリー)、そして俯瞰した立場で業界に挑む男性(マニー)、それぞれが人生をかけて夢を追う物語。

音楽はデイミアン・チャゼル監督とデビュー時代からタッグを組んでるという「ジャスティン・ハーウィッツ」。今回はミュージカル映画ではないのに、ラ・ラ・ランドよりも1時間ほど多く曲を作ったらしい。鑑賞した億実も脳内からバビロンのサントラが消えないくらい残っている。
特にオープニングのパーティーシーンVoodoo Mamaのシンクロはヤバい。
コロナ前のハロウィン時期の渋谷のクラブのようなカオスな状況で、トップレスの女性だけではなく、セックスするほど乱れたものも多く存在する中、最も魅力にあふれていたのはマーゴット・ロビー演じるネリーの踊る姿。
美しすぎるくらいのシーンで完全に心を抜くかれた。

そんなバビロンの物語は大きくサイレント時代とトーキー時代に分かれる。
サイレント時代、カメラを壊しながら撮影に挑む光景や音声を使わないためかいろんなセットがまとめて用意されており、ちょっとしたテーマパークのようなセットで複数の撮影が行われる描写は興味深かった。
また3人はそれぞれの立場で黄金期の勢いに乗るように活躍してい姿も気持ちよかった。
しかし、トーキー映へと時代が変わると、表情だけでなく、声やセリフの演技も必要となる。サイレント映画で活躍していた俳優たちも慣れないトーキーに苦戦し、次第に人気も落ちぶれていく。
再ブレイクなど起きる現代と比べ、当時は一度人気がなくなると時代の終わりとしてあきらめるが普通だったのかもしれない。それに合わせて自由かつ不安定な時代、それぞれがたどり着くラストにはオープニングからはまったく想像できない感情を抱かせられた、
まさにデイミアン・チャゼル監督の言葉通り「最高の高みと最悪の闇」を表現した作品である。

実は「バビロン」のそれぞれのキャストには実在したモデルが存在する。
マーゴット・ロビー演じるネリーは「クララ・ボウ」がモデル。家族の悩みを抱えつつもそれさえも演技に活かした。ブラジャーをつけない姿や、パーティーに明け暮れる姿、自由すぎる私生活などは彼女のイメージらしい。
また、ブラッドビット演じるジャックのモデルはジョン・ギルバート、サイレント時代に一世を風靡し、4度の結婚をするほどモテ男であるが、トーキ映画から次第に人気がなくなった。

バビロンを見るうえで欠かせない条件がある。
それは必ず「雨に唄えば」を事前に見ることである。
本作同様にサイレントからトーキーに代わる時代を描いた超有名ミュージカル映画なんやけども、それだけでは無い。
映画の歴史をたどる大きな1ピースなので、見ているのと見ていないので、楽しめるか楽しめないかくらい大きな違いが生まれると思う。

大きく二つ大好きなシーンがある。
一つは予告編でも流れるオープニングのパーティーシーン。
そしてもう一つはラストの映画館に訪れるシーン。
あれは、あの登場人物の視点を描くとともに、映画を見ている観客自身を描き、この映画は120年の歴史の一部であることを強く示していると自分は感じた。
サイレントからトーキーの変わった時代がある。
そして、カラー、アニメーション、CGから3Dと時代とともに進化していること、映画への愛を感じさせる素晴らしいシーンだった。

もちろん、想像以上に下品なシーンがあったりする。
上映時間が3時間半と短くもないし、まとまっているとも思っていない。
でも、恐ろしいほどの愛を感じた気がするし、ものすごい映画をみた気になった。

賛否は多いみたいやけど、自分はこういう映画が好きだから仕方ない。



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