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保育園での絵カードの使用は効果があるの?

視覚支援の一環で、保育園で絵カードを使っている場合がありますが、効果が出ている園/出ていない園に差がある気がします。その差は何なのでしょうか?

※この記事は、発達障がいのお子さんの保育園や学校での視覚支援という切り口で、書いています。

発達障害の子は、往々にして視覚的な情報の方が分かりやすい場合が多いです。発達障がいをもつ子は、全体指示を聞き逃すことが多いので、本人のペースで何回も確認することが出来る視覚物は、とても良い理解の手掛かりになります。

視覚支援の1つとして、「絵カード」を使うという方法がありますが、この方法は必ずしも効果が出るわけではなく、効果を出すためには、押さえた方がよいポイントがあると思います。

絵カードを使った視覚支援で効果を出すためには

ポイントの1つ目は
対象のお子さんが、紙の上に書いているものに、注目できることです。

どんなお子さんでも、0歳、1歳の時に絵カードを渡しても、絵を見ずにぐちゃぐちゃにする時期があります。それと同じで、発達障害のお子さんも、発達段階によっては、同じようなことが起こる可能性があります。

ポイントの2つ目は
カードに描かれているものと、実際に示したいものが同一であるか、理解できることです。

カードに描かれる題材として、写真や絵があります。写真は実物そのものなので絵よりも写真の方が分かりやすいと思います。絵は、現実にある物を抽象的に表現されたものなので、実物と少し見た目が違うことがあります。ですから、子どもにとっては、実物と絵カードがイコールにならない場合があるのです。

また、絵や写真にすると、どうしても実物よりもコンパクトになり、サイズ感が違ってきます。また、写真は、色合いが光によって微妙に写り方が違うこともあります。凄く厳密な子だと、こういった微妙な違いにより「カードと実物は違うものだ」という解釈になる場合もあるのです。

さらに、発達障がいの子の中には、全体を見ているのではなく、ものの1部に注目する子もいます。例えば、洋服の絵を示せば、全体の絵ではなく、ギャザーのような細かいところを見ていることがあるのです。

ですから、カードを使って、子どもの理解を促進したいと思うのであれば、その子が絵カードに注目できる力があるかどうか、またどのような描写であれば理解できるのかを探った方が良いと思います。

カード以外の視覚支援

絵カードや写真カード以外にも、実物を示すことや、指差しやジェスチャーという視覚支援もあります。実物を示すことは、言わずもがな、理解にずれが生じにくく、最も理解しやすい方法になります。

一方で、指さしは、対象物と指が離れていることで、何を示しているかが分かりにくい場合があります。分かってもらうためには、対象物を近くに持ってきて指差しをした上で、段々と距離を遠ざけていく方法がおすすめです。凄く丁寧に理解できるかどうか確認する必要があります。

また、発達障害の子は、恐ろしく視野が狭い場合があります。大人が本人の視野に入っていると思って視覚物を提示していても、本人の視野には入っていないことがあるので、注意が必要です。

さらに、時計を使った視覚支援もあります。「長い針が○を指したら終わり」のような形です。発達障がいのなかでも、数字にとてつもなく親和性がある人たちは、割とこのルールを理解しやすい場合があります。数字が、行動切り替えの手掛かりになる形です。

ただし、時間が読めることと、あらかじめ時間を予測して行動がとれることとは別の力であることは、大人が理解しておく必要があります。時々、時間が読める子の中に、時間が気になりすぎてしまって、ずーっと時計の動きを気にしてるので、遊びに没頭できない子がいます。そういうタイプのお子さんには、時計での視覚支援を慎重に進めていく必要があると思います。

絵カードの使用がうまくいっている例①

ここまでは、カードの使用はハードルが高いと感じる内容だったかもしれませんが、カードは使い方によっては効果を出すことができます。

例えば、1日のスケジュールの提示にカードを使うという方法です。

発達障がいの子は、目の前で見える情報は分かるものの、見えない情報を頭の中から思い出すことは難しいことはあります。大抵は、目の前のものに影響されることが大きいので、1日の流れも忘れやすいのです。例えば、おもちゃで遊んでいると、「もう給食よ。」という次の流れが分からないことがあります。常日頃から遊んだ後は給食というカードを見ていると、その繋がりが分かりやすくなるのだと思います。

1日の流れをなるべく早く覚えてもらいたいと思ったら、年少さんくらいで、集団で動くことが生活に入ってきた時期に使ってあげると良いと思います。

そして、ポイントは、該当するスケジュールが終わったら、カードを裏側にするか、1つずつ下に落としていくかの方法を取ると良いと思います。1日の流れが、だんだん少なくなっていくことが、目で分かる形です。

該当のスケジュールの横に「●」のような印を付ける方法もありますが、インパクト少ないので、分かりにくい場合があります。もし、その方法で行うなら、「今ここです」という現在地だけ印をつけてくと良いと思います。

絵カードの使用がうまくいっている例②

年長頃だと思いますが、製作の説明を、先生が子ども達の前でやって見せることがあります。もっと年齢が低い頃は、1つ1つ説明しますが、一気にやって見せながら最後まで説明した上で、製作に取り掛かるという流れがあります。そのような時に、手順表を本人に渡す形で援助した方が、上手くいく場合があります。前提として、文字や数字の順番が分かることは必要ですが。

発達障がいの子たちは、先生が長々と説明している時に「自分は何をしてたら良いのだろうか?」が分かりにくくなることが多いです。そのため、立ち上がったり、何かを下に落としたり、お友達とぶつかったりというちょっとしたトラブルが、起こりやすいのです。

マイ手順表もってると、手順表を読むことが1つの役割になるので、不運なトラブルは起きにくくなります。

ただし、枚数が多いと、本人の管理が難しくなり落として順番が分からなくなる可能性があるので、日めくり型の単語帳のような形式が、良いのではないかと思います。本のような冊子にすることも良いでしょう。


うんざりする視覚支援はやめよう

視覚支援は見て分かりやすいのですが、視覚支援ツールにうんざりさせてしまっては、本末転倒だと思います。

誰でもそうですが、例えば、問題を解く時に、「全部やります」と大量の残りを見せられると、見ただけでうんざりします。でも、「あと1問だけやろう」と見せられると、やる気になるものです。

スケジュールに視覚支援を使う場合も同じで、1日の流れを覚えてもらうために、事細かにスケジュールを書き起こして全て列挙されると、「うんざり」になります。だから、書き起こすスケジュールの数を絞ることや、終わったものから下に落としていくことは、「あとこれだけ頑張ったらいい」が分かりやすいと思います。

どの形でも言えることですが、大人側がやらせたいことのために、どの視覚支援も使うことが多いと思います。確かに、発達障がいの子たちは、1番分かりやすいやり方なので、気持ち的にも乗りやすいという面はあると思います。でも、本人の考え方が出てきたときに、視覚支援は自分を誘導するための道具だなと気が付く子もいます。そうすると、視覚支援自体が物凄く嫌いになる場合があります。

だから、視覚支援のスタートは、本人がとても楽しみにしていることと関連づけて使うことだと思います。具体的には、子どもが好きなことで視覚支援がなくても活動を予期できていることであっても、次はこれだよ!とカードを出していきます。子供としては、「知ってたけど、やっぱりそれだったのね」という安心感を得られると同時に、カードが良いお知らせをしてくれるツールになっていきます。

過去に、視覚支援の導入のやり方がきっとまずかったんだろうな、というお子さんに会ったことがあります。その子は、学校で視覚支援を導入していたのですが、絵カードをとても嫌がって破ってしまっていたのです。

絵カードを見せられると意味は分かるけど、一方で「やらなきゃいけない」という気持ちになるようだったんです。絵カードの使われ方としても、「〇〇はしません」というお約束だらけが貼られていました。それは、嫌になりますよね。

幼児期の頃は、子どもも嬉しくて協力的にやってくれると思いますが、使い方を途中で見直していく慎重さが必要だと思います。

要求カードの使い道

本人の要求行動の時に、カードを使う方法もありますが、これも慎重に進める必要があると思います。少なくとも、要求していい時と要求していけない時の場面理解に達していないお子さんには、要求カードを玩具感覚で導入しすぎると、いつ何時も要求カード探しみたいになってしまいます。「何処に隠した?」「どうして出てこないんだ?」みたいな感じです。

だから、最初は、車に乗る時だけとか、療育の場面だけとか、場面を限定してカードを使うと良いのではないかと思います。カードがない時は、自分がしたいことも我慢しなきゃいけないことが分かると良いと思います。

要求表現というか、要求する意欲や機会自体がとても少ない子の場合は、簡単に伝えられ方法があるよと知らせていく意味で、カードの導入が効果的な場合があります。ただし、カードが示すものが分かってる子ならという前提ですが。


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