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▽イマーシブシアターをマーケティングに活用したら大きな体験価値が得られるんじゃない? の巻


こんにちは。いやこんばんはなのでしょうか?
トライバルメディアハウス新卒のハルカです。
4月からマーケターの卵をしております。

 

今回は、学生時代に必死で制作・演出の助手をしていた「イマーシブシアター」を活用したマーケティングについて考察してみました。

いまーしぶ?なにそれ?と思われる方も多いかと思います。
でもこの概念、すっごく面白くて無限の活用可能性があるものなので、ぜひ知っていただきたいです。

それでは早速本題に入ります!


■はじめに

体験消費の時代。
ご存じの通り、そこに重きを置くマーケティングにはイベントやポップアップストアをはじめ、様々な手法があります。


その中でも「イマーシブシアター」というコンテンツは、うまく使えれば体験価値を高め、確実にブランドへの熱量アップにつながるものであると感じています。

そこで、「ぜひ活用してみたい!」と思っていただきたく、この記事を書くことにしました。

より体験価値が重視される現代において、イマーシブシアターは

・なぜ現代のマーケティングと相性がいいのか?
・具体的にどのように活用されているのか?

という2点に着目し、記していこうと思います。


  <目次>
■イマーシブシアターとは
■なぜ今大事なのか?
■イマーシブコンテンツを成功させる秘訣
■具体例① 「喰種レストラン」(エクスターナルマーケティング)
■具体例② 「REVERSE」(インターナルマーケティング)
■まとめ


■イマーシブシアターとは

簡潔に述べると、
イマーシブ=没入型体験”
イマーシブシアター=没入型演劇”
です。


イマーシブの概念は、近年エンタメやアートの世界でトレンドとなっており、最近ではモネやルノワールの世界観を体感できる「イマーシブミュージアム」の開催が話題になりました。(残念ながらコロナで延期になってしまいましたが)


ですが、イマーシブシアターは新しい概念であり、まだまだ知られていないのが現状です。
細かい定義も厳密には決まっていないのですが、大きな特徴として挙げられるのは以下の2点です。

①客席とステージとの境界がないこと
②観客側に役割が与えられていること


分かりやすい例は「リアル脱出ゲーム」です。(シアターではありませんが。)
お客側が「探偵」ないしは「調査団」などの役割を与えられ、部屋を調べまわってみたり、時には外に出てみたりしますよね。


これを演劇に当てはめ、”客席に座り傍観者として観る演劇”という当たり前から、革新的な脱却を遂げたものがイマーシブシアターなのです。


もっとよく知りたい!という方は、「泊まれる演劇」を手掛けるHOTEL SHE,KYOTOの花岡氏のnoteをご覧ください。



■なぜ今大事なのか?

あり余るほどモノが溢れている現代において、消費者のニーズは“モノの豊かさ”から“心の豊かさ”に変わってきています

商品やサービスの作り手の仕事が、”購入してもらうまで”だった時代は終わりました。


モノよりコトを重視する消費者の心を掴むには、買った後に始まるストーリー(=ブランドの体験価値)を重視した付き合い方が必要になります。Action(購買)の先に何があるのか? Shareをしてもらうためには何をすべきか? そのためには、ブランド側は企業主語から消費者主語に頭を切り替えることが欠かせません。
(AdverTimes,https://www.advertimes.com/20180406/article266418/2/,2018.04.06)

イマーシブシアターは、顧客(=観客)側がコンテンツに没入し、積極的に参加してこそ成り立つものです。
つまり、消費者主語の性格が強いのです。

だから、これをうまくマーケティングに活かせれば、その商品やサービスを消費者にとって“圧倒的に自分ゴト化”させることにつながるはずです。



■成功の秘訣

イマーシブを活用する際には注意すべき点があります。

それは、”高度なストーリー性の作り込み”が必要不可欠となることです。


イマーシブコンテンツの不可欠な要素として挙げられるのは「独自の世界観にオーディエンスを引き込んでいく高度なストーリー性」だ。また、そうした世界観・ストーリー性があるからこそ、オーディエンスはそのイマーシブコンテンツに「没入」し、通常のコンテンツよりはるかに長い時間滞留し、よりストーリーに引き込まれていくといえる。したがって、独自の世界観や高度なストーリー性のなかで、自社のブランドや商品をうまく訴求することができれば、マーケティング的に大きな効果が期待できる。
(Insight for D,https://d-marketing.yahoo.co.jp/entry/20160622414090.html,2016.06.22)


つまり、うまく世界観に引き込めるかどうかが、没入させるための重要なポイントになるのです。


では、具体的にイマーシブシアターにはどのような活用方法があるのでしょうか。

エクスターナルマーケティング
(企業⇔消費者のマーケティング)
インターナルマーケティング
(企業⇔従業員のマーケティング)

2つの視点からご紹介します。


■具体例① 「喰種(グール)レストラン」(エクスターナルマーケティング)


まずは、私がインターンで演出助手として携わった、エクスターナルマーケティングにおける「喰種(グール)レストラン」のプロモーション事例です。


これは、「東京喰種(トーキョーグール)」というアニメの実写版映画のプロモーションで行われた、イマーシブシアター×レストランの企画でした。

人間を捕食する「喰種」の世界のレストランを現実世界に再現し、実際に体験することが出来る、というものです。

役者は「喰種」として、レストランのコンシェルジュを務めます。



(こちらの映像を見ておくと、よりイメージが掴めるかと思います。)


まず、参加者はドレスコードにならった服で着飾り、参加者にのみ知らされる「秘密の集合場所」に集まります。

そこへ役者が来て、秘密のレストランに案内されるところから物語が始まります。


ビルの搬入口にたどり着き、不安と期待でいっぱいになったところで、ようやく案内されたレストランの中は「東京喰種」らしさが散りばめられた一面のバラの世界。

そこで「血と薔薇」をコンセプトにしたコース料理が提供されます。


役者たちは15分に一度ほど、トークショー形式の演劇的な場面を展開します。その他の時間は一人一人の参加者と直接会話をしたり、一緒に写真を撮っています。

その中で参加者同士も感想を共有したくなり、次第に仲良くなっていきます。


最終局面、参加者の中から一人が選ばれ、役者に連れ去られてしまいます。

そして、いち観客だったはずの参加者が、血まみれになり捕食されているショッキングなシーンが展開され、物語は幕を閉じるのです。


実は、この殺されてしまう参加者は、最初から仕込まれていた役者でした。

現場でスタッフをしていると、このツイートのような声を多く聞きました。

演劇では役者と観客の間には壁があるのが当然ですから、「隣の席で仲良くしていた彼女が、まさか・・・」と、衝撃を与えられたようです。



この「喰種レストラン」、開催期間内は結末のネタバレは厳禁でした。

さらに、参加者にはカードが配られており、「開催場所は『病院』だった」「『学校』だった」など、**一人一人異なる場所をシェアするよう指示されます。 **

つまり、参加者はただの「レストランで食事をした人」ではなく、「共犯者」となるのです。

https://twitter.com/hiroyayuki/status/1164886707897901056

※写真転載許可済

内容は以上です。
みなさんはどう感じられたでしょうか?


ここからは、私なりに考察していきます。


この事例では、参加と役者の間、さらに参加者同士の間にも垣根はなく、双方向のコミュニケーションがとられていました。

また、秘密を共有する「共犯者」という役割を与えられた観客たちは、このコンテンツに没入し自分ゴト化しました。


結果として、喰種レストランは大反響で幕を閉じ、SNSには多くのポジティブな感想が投稿されました。


そもそも「東京喰種」のコンテンツパワーや、作り込まれた内装自体が“このレストランのことをSNSにアップしたい!”と思わせられるものでした。

しかしそれだけでなく、“共犯者としての役割を果たしたい”という参加者らの能動的な意思が、シェアへの意欲をより一層深めたのだと考えます。

驚くべきことに、その証拠として数多くのつぶやきがあったにも関わらず誰一人として秘密を破った者はいなかったのです。



購買のその先を考える。消費者を主語に、大きな体験価値を与える。
この事例は、そんなプロモーションの究極系であると考えます。


■具体例② 「REVERSE」(インターナルマーケティング)

ここからはインターナルマーケティングでの事例を紹介します。

株式会社ソフィアにて行われた「REVERSE」です。

「REVERSE」は、職場に潜む“アンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)”について、参加型の演劇を通して気付きを与えるワークショップです。

実際のオフィスを舞台に、「一社員」として参加者も物語に組み込まれます。


ストーリーの中には“お茶を入れるのは女性社員の仕事”などの、“無意識の偏見”が蔓延る日常が描かれました。

その世界に没入することで、参加者らは多くの気づきを得られたといいます。


以下、先程の記事から引用した参加者のコメントです。


イマーシブ演劇によって、記憶に残る体験になった
「最初の演劇での入り込みは緊張したが、自然と入り込んで、一気に世界に入った感じがあった」
自分自身や自分の組織を見直すきっかけになった(楽しみながら!)
「日常生活の中で、ふと『あれ、これは本当に当たり前のことなのか?』と、自分に疑問を投げかけてみようと思う」


アンコンシャス・バイアスとは・・・とただ淡々と説明されるよりも、実際に体験した方が記憶に残りますよね。
百聞は一体験に如かずなのです。

記憶に残り、社員が一体となって意識を高めることで、社内環境の改善に繋がります。よって、ES(従業員満足)アップが期待できそうです。


プロモーションとはまた違った意味で、これも大きな体験価値を与えた事例であると言えるでしょう。



■まとめ

国内でイマーシブシアターがマーケティングに活かされた事例は、まだそんなに多くはありません。


しかし、海外ではH&Mがイマーシブシアターと融合したファッションショーを行うなど、今回紹介しきれなかった事例もあります。

演劇自体、様々なコンテンツとの親和性が高いので、イマーシブシアターの活用の幅は広いと言えるでしょう。


この記事を見て、イマーシブシアターの面白さを感じていただけたり、何かに活かしたい、と思っていただければ幸いです。

ひいては、この新しい形の演劇への認知や興味が広がっていくなかで、演劇文化の発展にも寄与する事となったら、そんな未来は最高だなと思います。




※Special Thanks:コンテンツプロデューサー/マーケター 菅波和也

このnoteを書く上で相談に乗っていただきました。ありがとうございました!

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