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小説

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文章の練習のために小説を執筆しています。主に空想ですが、ところどころ実体験も混ざっています。
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#エッセイ

夫は当たり前の日常を粗末にしない人

湯上がりの温かさが残った身体のまま、和室にある寝室に向かう。 つい20分前まで一緒に入浴していた夫が、畳の上にひいた布団に仰向けになり、喉のあたりまで掛け布団がきていた。布団からちょこんと頭だけ出ていた姿がふすまから見えて、夫に気がつかれない大きさでフフッと笑った。 夫は「女ってものは時間がかかる」と言いたげな表情をしながら、目をつぶっていた。私がお風呂場から出てからというもの、化粧水を塗ったり、薔薇の精油入りのお気に入りのボディオイルで身体を手入れしたり、髪を乾かしてい

もしあの時、母をねだらなければ父は生きていたかもしれない

義理の母から虐待をうけていた日々から、19年が経った。 私はひとりで3LDKのマンションをローンを組んで買えるほど、特定のパートナーを持たなくてもいいと考えるほど、1人で生きていく覚悟を持った大人になった。 人生の歯車を狂わせた彼女に負けないくらい。その記憶に苦しむことがないくらい、強く。もう思い出すことなく、人生を歩んでいけると考えていたのに。 ある日曜日の夕方、自宅で過ごしていると携帯に親族から電話がかかってきた。たわいもない要件ならメールがくる。電話はなのは、何か

危険な背中

女はBARの中央にある木製のテーブルの前にひとりで座り、こちらに背を向けていた。 周囲には客はおらず、女だけがポツンと太平洋にうかぶ小島のように、いた。その様子を店の1番奥の席から眺めていた。 肩まである黒い艶のある髪。細身の身体に、分厚く品質のよい生地で作られた黒いワンピース。黒いパンティストッキングから肌が透けている。女が座るには苦労しそうな、背の高いイスに腰掛け、組んでいる足先が浮いている。足首の細さを際立てる、ハイヒールの赤い裏地がみえた。 女はテーブルに広げて

人生とは「時間の波」に流されるということ

子供のころに思い描いていた”大人像”よりも、幼い部分を残した”外側だけの大人”になった。 1年、半年、1ヶ月、1週間、1日があっという間に過ぎる。そうしているうちに、もう30過ぎになった。 推薦入試ができる、いわゆるFラン大学に入学。周りが進学するから、という理由で。とくに勉強に励むことなく学生生活をすごし、楽な事務仕事ならいいだろうと、大学卒業後は大手の事務作業を請けおう派遣社員になった。 実際には楽な事務仕事とはかけはなれていて、頭を悩ませる人間関係を横目に静かに仕

女は真夜中に”あの男”を思う

深夜2時、私は明かりをつけずにリビングのソファーにひざを抱えて座っていた。 窓の向こうに見える静まりかえった街。漆黒の暗闇に包まれて、いっそのこと、このまま黒い渦に飲み込まれて消えてしまいたかった。 レースカーテンの間を縫うように、月明かりだけが部屋を照らしていた。 “あの男”から贈られた背の高い、名前もわからない観葉植物の表面が、ぬめるようにイヤらしく光沢を放っていた。 ソファーの背もたれに深く身体を沈ませながら、遠い過去の記憶にふける。 幸せな恋愛でもないにも関